Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S13 ジェームスとおおゆき

 ある冬の日、ソドー島は吹雪に見舞われた。一日中降り積もると思われたが、幸いにも、つかの間の晴天により厚く積もった雪も薄くなり、ドナルドとダグラスが懸命に除雪したおかげであっという間に線路から雪が消えた。
しかし油断は禁物だ。午後から明日にかけて吹雪になると予報が出ている。トップハム・ハット卿は蒸気機関車たち全員に雪かきをつけるよう命じた。


 皆が浮かない顔をして雪かきをつける中、ジェームスはずっとウキウキしていた。何故なら久しぶりに急行列車を引っ張ることになったからだ。
彼は出発の準備していたパクストンに自慢した。
「見てくれよ。雪に映える 僕の真っ赤なボディ。素敵だろう」
「ええ、ジェームスさん。真っ白な 雪の上だと、いつもより 輝いて見えますね」
「そうだろう。それに比べて 君のように 地味なディーゼルは、雪の上に いたとしても 目立たなそうだけど」
嫌味を言われ、パクストンは黙り込んでしまった。それを見ていたクランキーは呆れかえった。
「自慢をしに来ただけなら とっとと失せろ ジェームス。ソルティーの邪魔に なってるぞ」



ジェームスは、ぷんぷんしながら港を出ると、操車場で待っている急行客車の元へ向かった。雪かきを無視して客車と連結する。
そこへドナルドとダグラスがやってきた。彼らは雪かきをつけずに走ろうとするジェームスに驚いた。
「どうだい。かっこいいだろう。急行列車の お通りだぞ!」
「雪かきは付けないのですか」
「君たちが すでに 除雪したから 大丈夫さ」
「だけども、そろそろ、雪が降りそうな気配がしますよ。ほら、匂うでしょう。雪の匂いが…」
「雪の匂いだって。とうとう君も やられたね」
ドナルドとダグラスの忠告も聞かず、ジェームスは颯爽と走り出していった。
双子は心配そうな眼差しで港を出ていくジェームスを見送る。



ジェームスは双子の話をあまり信用していなかった。だけど、ダグラスの勘はピシャリと当たった。晴天の空はみるみるうちに暗くなり、大粒の雪が降り始めた。
始めはちらちらと舞い降りてくる程度だったが、次第に吹雪に変化した。
「こんな雪くらい、どうってことないさ」
だが、それは大きな間違いだった。



彼は案の定、降り積もった雪で立ち往生してしまったのだ。
クランクを力いっぱい動かしても、車輪は空回りしてどんどん埋もれていくだけだった。



 間もなく、トーマスが救援列車を牽いて駆けつけた。同乗していたトップハム・ハット卿は不機嫌そうだ。
「ドナルドとダグラスの忠告を 聞かなかったそうだな。君のせいで 混乱と遅れが 生じたぞ」
吹雪がやむと、作業員たちはすぐに線路の雪を片付け、ジェームスを掘り起こした。
客車はドナルドとダグラスが引き受けることになった。



一方、ジェームスは、大きな町の駅まで貨物列車を牽くよう命じられた。
結局、重い雪かきをつけ、不機嫌そうにボッボッと蒸気を噴き上げながら、本線をガタゴトと走っていく。
雪は場所によっては沢山積もっており、とくに山の近くでは自動車が立ち往生するほどだった。バーティーを助けに来たブッチまで動けなくなっている。



 ウェルズワース駅を過ぎると、線路わきに刺さる赤旗が目に入った。パクストンが立ち往生している。
「ジェームスさん。お願いが あるんですけど、この雪の壁から 引っ張り出してくれませんか。村の人たちが、この石炭と 薪を 待っているんです」
機嫌の悪いジェームスは、面倒だったので彼を放っておこうと思った。だけど彼の機関士は、待っている人たちのことを考えると、居ても立っても居られず、「俺たちが 一緒に 引っ張っていこう」と、言った。
ディーゼル機関車と 連結するんですか」と、ジェームスは不満げに唾を吐いた。
「行先は同じ方向だし、ほっとくわけにも いかないだろう。それに、トップハム・ハット卿から ご褒美がもらえるかもしれないぜ」
「しょうがない。わかったよ」
「よろしくお願いしますね」と、パクストン。



 パクストンの列車は雪から引っ張りだされた後、ジェームスと貨車の間に繋がれた。
雲行きが再び怪しくなったと思うと、また雪が降り始めた。
ジェームスは、めげずに除雪しながら走り続ける。
稲妻が光り、雹がコツコツとジェームスとパクストンのボディに激突する。彼らは悲鳴を上げた。
機関士は急がなければならないと思った。



激しい吹雪のおかげで辺り一面、白一色になり視界が悪くなった。
勇ましく進んでいたジェームスの足取りもだんだん遅くなっていく。
「前が 全然見えないよ!」
そして分厚い雪に立ちふさがれ、再び立ち往生してしまった。



 カーク・マッシャン駅では、トップハム・ハット卿とドナルドとダグラスが、彼らを心配していた。
「パクストンの到着が 遅れているな…」
「ジェームスの通過も まだみたいです」
「この吹雪ですからね。やっぱり事故に あったのではないでしょうか」
「彼らが心配です。私たちで様子を見に行きましょう」
「だめだ。今 出歩くのは危険すぎる。君たちは 吹雪が やむまで そこの機関庫で待機していなさい」



 その頃ジェームスは、身動きが取れない状態に陥っていた。
あまりの寒さに給水口のふちが凍ってしまい、元気が出ない。
その時、パクストンは、いいアイディアを思い付いた。
「僕が、ジェームスさんを押します。そうすれば きっと 雪の壁を突っ切れるはずですよ」
「でも、君は動けないんだろう」
「安心してください。雪かきはないけど、燃料は まだ いっぱい残ってますから」
こうしてパクストンの連結が切り離され、彼は貨車と共に一旦後ろに下がった。パクストンは、プスン、プスン。ブルブルブル…と、身体を震わせ唸らせ、出力いっぱいで極寒に立ち向かう。そして警笛で合図すると、助走をつけて、思いっきりジェームスの炭水車に体当たりした。
するとジェームスは勢いよく雪の壁を突き破り、雪を押しのけて進んでいった。
「やった、すごいぞ!」
ジェームスは嬉しくて歓声を上げた。パクストンも誇らしそうに警笛を鳴らす。



再び連結をすると、彼らはそのまま出発した。パクストンがジェームスを押し、ジェームスは雪をかき分けて進んでいくのだ。
スピードは思うように出せなかったが、力強い走りを見せた。
いつの間にか吹雪がやんだおかげで、ゴードンの丘も楽に超えることができた。



マロン駅を通過した頃には、ジェームスの調子も良くなっていた。
協力して走っている彼らを見て、様子を見に来た双子は安心した。
「ご無事で 何よりです。お二方とも、ゴールは すぐ目の前ですよ!」
「ありがとう、ダグラス。よし、頑張るぞ」



 遂に、パクストンの目的地に到着した。待っていたトップハム・ハット卿は安堵の表情と共にとても誇らしそうだった。
「よくやったぞ、ジェームス。パクストンの列車ごと ここまで引っ張ってきて、大変だっただろう」
「とんでもない。途中で 動けなくなった僕を、パクストンが 押して 助けてくれたんです」
「そうか そうか。2台とも よく頑張ったようだな。明日 朝一番に、ソドー整備工場に 行きなさい。君たちの ペンキを 新しく塗り替えてやろう」


後になって、ジェームスは、再びカーク・マッシャン駅に戻ってきた。彼はきまり悪そうにパクストンに礼を言った。
「さっきは ありがとう。酷いこと言って ごめんよ。君の 緑色のボディは、雪の上じゃ 僕と同じくらい 目立って綺麗だよ」
「ああ、あのことは もういいんです。僕、気にしてませんから、ふふ。それに、ジェームスさんには かないませんよ」
それ以降、2台は仲良しになったのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ジェームス

●ドナルドとダグラス

●パクストン

●クランキー

●トップハム・ハット卿

●ジェームスの機関士

●トーマス(not speak)

ソルティー(not speak)

●バーティー(not speak)

●ブッチ(not speak)

モリー(cameo)

●スタンリー(cameo)

●ポーター(cameo)

●デン(cameo)

バイロン(cameo)

●ゴードン(mentioned)

 

 

脚本: ぜるけん

画像編集: NWP

※これは2015年に投稿した記事を再編集したものです。

P&TI S13 スタフォードのだいかつやく


 スタフォードは、島で唯一の蓄電池機関車だ。
燃料は内蔵された電池を充電すること。電気機関車なので、石炭も水も、ディーゼルオイルも必要ない。一度の充電で最大6時間も走行することができる。
とても静かに走るので、島中の農夫たちのお気に入りだった。



 ある朝、スタフォードは平台貨車を受け取る為ブレンダムの港に来ていた。そこでジェームスに会った。彼は警笛を鳴らして挨拶をする。
「やあ、ジェームス。おはよう!」
「うわあ! もう、スタフォード。君は 静かだから いきなり声を かけられたら びっくりするよ」
「ごめん ごめん。走ってきたのに 気付かなかった?」
「ああ、そうとも。大体 君は トビーみたいに 薄汚いくせに チヤホヤされすぎだ。のろまで 人を 待たせてばかりいるのに、どうして そう トップハム・ハット卿に信用されてるのか 理解できないよ」
彼はつんと下唇を持ち上げながら走り去っていった。
それを見ていたポーターは浮かなそうなスタフォードを慰めた。
「気にすることないさ。ジェームスは ただ やきもちを やいてるのさ」
「わかってるよ ポーター。僕は 全然気にしてなんか いないよ」
だけども、自分の欠点ばかり貶されたのは少しショックだった。



ジェームスが駅構内に到着すると、ちょうどトップハム・ハット卿がやってきた。
彼は嫌な予感を察知した。
「もしかして、また 貨車を 牽かせるんじゃないでしょうね?」
「その通りだ、ジェームス。ノーマンが故障で動けなくなった。すまないが 代わりに 君が 炭鉱に行って、石炭の積んだ貨車を 10両ほど 運んでくれたまえ」
「でも、それじゃあ 僕の 真っ赤なボディが もっと 汚れちゃいます。客車の仕事なら、喜んで やりますよ」
「選り好みを するんじゃない。仕事が終わったら ボディを洗ってあげるから 安心しなさい」



 一方、スタフォードは、まだ港にいた。空きの貨車が手配されるまで、入れ替え作業を手伝っていたのだ。ポーターが再び気さくに声をかけた。
「まだ ジェームスのことが 気になる?」
「え。いや、そんなことは ないよ。でも、ちょっと ショックだったね」
「ジェームスは 他を 見る目が ないのさ。君は 環境に 優しい機関車だ。石炭も オイルも 架線なんかも いらないし、僕らと違って 匂いや 排出物も 出さないんだから。それって、すごく 重要なことだよ」
「そうかな?」
「そうさ。架線が無いところも、僕らが 長く入ることのできない海底トンネルだって、君なら 楽に進めるだろう? さあ、行っておいで」
こう言われて、スタフォードは少し元気が出た。平台貨車を何台か受け取ると、レスキューセンターを目指して出発した。



レスキューセンターに着くと、彼は一旦操車場に入った。とても深い海底トンネルを長時間くぐるので、電池をフル回復させるため充電するのだ。
作業員がプラグを差し込む。充電している間スタフォードは、ポーターの言ったことをずっと思い返していた。



 その頃、ジェームスは本土の炭鉱にたどり着いたところだった。
双子のディーゼル機関車スプラッターとドッヂもそこにいたので、ジェームスはさらに機嫌が悪くなった。双子もジェームスを見て機嫌を悪くした。
「とっとと 石炭の貨車を集めて 用意しろ。僕は すぐにでも こんなところから おさらばしたいんだ」
「言われる前から やっとりますよ」と、スプラッター



 しばらくして、石炭の貨車の準備が整った。
「よーし、これで ここも 見納めだ」
ところが、炭鉱夫は出発しようとするジェームスを止めた。
「この貨車は スプラッターとドッヂが 運ぶための物だ。君は 残って 次の貨車を 待ってくれ」
「なんですって」
スプラッターとドッヂがにやにやしながら石炭の貨車を牽いて出ていくと、炭鉱はジェームスとたくさん並んだ空の貨車だけになってしまった。
残ったジェームスは苛立ちを隠せない。一刻も早くここから出たくてしょうがないのだ。
彼はドスンと貨車に当たり散らした。すると貨車達はジェームスに突き飛ばされ、炭鉱の奥へ奥へと入り込んでしまった。
「大変だ」



幸い、脱線することはなかったものの、貨車たちはジェームスの手の届かない場所まで追いやられている。
ジェームスはすぐに貨車を追いかけようとしたがまたしても炭鉱夫達に止められた。
蒸気機関車なんかが入ったら 引火する危険性がある。手押し車か 何かは ないか?」
「だめです、炭鉱の手押し車は 先日 サムソンが 誤って 処分してしまったようで…」



 トップハム・ハット卿がナップフォード駅のオフィスでくつろいでいると、電話がかかってきた。炭鉱の親方からだ。
「―わかりました。すぐに スタフォードに 向かわせます」
彼は車に乗り込むと、急いで海底トンネルへ向かった。
スタフォードがトンネルへ入ろうとした時、線路に赤旗があるのが見え、彼は停車した。
「炭鉱の中に貨車が 立ち往生した。すぐに 救出に 向かってくれたまえ」



スタフォードを待っている間、炭鉱夫たちはせっせと奥で立ち往生している貨車に石炭を詰め込んでいた。
ジェームスは後悔もしていたが、同時にイライラしていた。
充電を終えてスタフォードが炭鉱に到着した頃にはすっかり夕暮れ時だった。



そんなジェームスを横目に置いて、スタフォードは炭鉱の中へはいっていく。
2つのランプを点灯させ、奥で立ち往生している貨車たちを見つけ出した。
「あったぞ!」



貨車に石炭がいっぱいに積み込まれると、スタフォードが石炭の貨車と共に立坑から出てきた。ポーターの言った通り、蒸気機関車や他の電気機関車にはできないことを彼は成し遂げたのだ。
ついでに彼は、ぱぱっと入換えをして、ジェームスが運ぶ貨車の列につないだ。



ジェームスは、面目丸つぶれだった。
彼は恥ずかしくなり、スタフォードだけに聞こえるよう小声で謝ると、石炭の入った大量の貨車を牽いて走って行った。
スタフォードは蒸気も出さなければ架線も必要ない、島中で他にはない特別な役に立つ蓄電池機関車であることを改めて証明したのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ジェームス

●ポーター

スプラッター

●トップハム・ハット卿

●親方

●鉱夫 

●ドッヂ(not speak)

●パーシー(cameo)

●ダック(cameo)

●ネビル(cameo)

●スタンリー(cameo)

●チャーリー(cameo)

ディーゼル(cameo)

●パクストン(cameo)

●ロッキー(cameo)

●クランキー(cameo)

●トビー(mentioned)

●サムソン(mentioned)

●ノーマン(mentioned)

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2014年に投稿した記事を再編集した物です。

P&TI S13 グレート・ウェスタンりゅう


 ある日、ダックが客車を牽いて自分の支線を走っていると、駅でハット卿がいることに気付いた。
ちょうど停車駅だったので、彼と話をすることができた。
「おはようございます、トップハム・ハット卿」
「やあ ダック。待っていたよ。君に とても特別な仕事を 任せようと思っているんだ」
それを聞いて、ダックはワクワクした。
「実は 3日後に、本土から キング・エドワード1世の 特別列車が 訪問することになった。アールズバーグ・ウエストで イベントを開くんだよ。そこで君に、彼が ティッドマスまで来たら、彼の先導をとって 走ってもらいたいんだ」
「わあ、ありがとうございます。グレート・ウエスタン鉄道の仲間を、お出迎えするなんて 感激です!」
彼は嬉しくてたまらなかった。



 その日の午後、オリバーは、ダックと重連で貨物列車を引っ張ることになった。ダックは誰かと喜びを分かち合いたくてウズウズしていた。
「ねえオリバー、僕が トップハム・ハット卿に どれだけ信頼されてるか わかるかい。僕はね―」
「ふーん、そうかい」
彼には、それがただの自慢にしか聞こえなかった。



 次の日、アールズバーグ線の機関車たちは、イベントの準備に取り掛かった。しかし、イベント関連の仕事はダックが全て持って行ってしまい、残ったオリバーは貨車の入れ替えを任された。
「どうして僕だけ いつものように 貨車の入れ替えをしなくちゃならないんだ」
「お気持ちは お察ししますが、貨車の入れ替えも 大切な仕事ですよ。散らかったままでは、キング・エドワード1世に 失礼ですから」
「わかってるさ、トード。でも、僕だって イベント関連の仕事が したいんだよ」
彼が給水して休んでいると、そこへダックがやってきた。
「仕事には 二通りのやり方が あるのは 知ってるね。グレート・ウエスタン流と…」
「僕を ダメダメ流って 言いたいのかい? 水を補給しているだけじゃないか。まったく、もう!」
彼はそんなダックにうんざりし、大きくため息をついた。



 やがて夜になり、オリバーはティッドマス機関庫にやってきた。明日の早朝、ティッドマス駅から列車をスタートさせるため、今夜はここで夜を過ごすのだ。
機関庫にやってくるなり、オリバーは愚痴をこぼした。
「ダックときたら、近頃は実に うるさい。局長さんから 特別な仕事を もらって以来、いつも しつこく自慢ばかりするんだ」
「まったくだよ。すっかり浮かれちゃってさ。何かっていうと すぐグレート・ウエスタン流だの、ダメダメ流だの。奴は 自分が あの鉄道の栄光に縋ってるだけだよ」と、ジェームス。

「そうだそうだ。オリバーの冒険談を何百回も聞くほうがまだいいよ」と、ヘンリー。
「俺は お前の どうでもいい冒険談と 愚痴で 耳にタコができるよりは ましだがな」と、ゴードン。
「なんだと!」
「まあまあ。ダックさんは、そんなつもりはないと思いますよ。彼は ただ、あなた方に喜びを 共有したいだけかと」
「いいや、彼は 僕らより 偉いと思ってるのさ。僕だって あの鉄道で 働いていたし、きちんと仕事を こなすことくらい、わかってるのにさ…」



オリバーの不満は募るばかりだ。次の日もイベント関連の仕事をやらせてはくれなかった。それに、昨夜のゴードンの言葉が忘れられなくて、相変わらず腹を立てているのだった。
旅客列車の仕事を終えると、客車たちを終点の操車場へ置き、今度は貨物列車を牽いてナップフォードの操車場へ向かった。
途中、彼は気になるものが目に入った。なんと、線路わきでタイガー・モスが逆立ちをしているではないか。パイロットが赤旗を振っているのが見えたので、彼は停車した。
「どうされたんですか」

「宣伝中に 不調が出てね。タイガー・モスが 墜落してしまった。イベントの宣伝が できなくて困ってるんだ。悪いんだけど、南の方へ行くなら こいつを格納庫まで 運んでくれないか?」
「僕に 任せてください。全力を 尽くしますよ」
「ありがとう、オリバー。ドライオー駅まで 頼むよ」



 間もなくダックがロッキーを運んでやってきた。
「僕が 後ろに ついて 走ろうか」
「いいよ。トードもいるし、僕だけで 平気さ」
「でも、彼は 前を向いて走れないだろう。昔、ハロルドを 運んだ事が あるんだけど、その時は狭い通路を確認するため、トーマスが後ろに ついて 走ったんだ。だから 誰かが 後方確認に 後ろに ついた方が 安全だよ」
「だけど 2回も失敗しただろ、知ってるよ。 君の 煩い 自慢話を聞きながら走るのは もう ごめんだ。さあ 行こう、トード」
彼はそう言うと、ドライオー駅に向かって出発した。
自分の行いを振り返ってしょんぼりとしたダックは、オリバーの代わりに貨物列車とロッキーを牽いてナップフォードへ向かった。



 分岐点で曲がったオリバーは、間もなく跨線橋を前にした。
そこへ、鉱山へ向かうトビーがやってきた。彼はオリバーの運ぶタイガー・モスを見て息をのんだ。
「危ない! その タイガー・モスは 跨線橋の下を くぐれないよ」
オリバーは跨線橋の前で急ブレーキをかけて止まった。
「ふう。教えてくれて、ありがとう」
「後ろから 確認する機関車は いないの」
と、ヘンリエッタが言ったが、オリバーは構わず別の道を進むために後退した。



彼は分岐点に戻ると、今度はまっすぐ進んだ。
「やっぱり、誰かに 後方確認してもらった方が いいですよ」
「大丈夫。僕を信じてよ トード」
そこへ、反対側の線路からドナルドがやってきた。彼は陽気にハミングしながらスピードを出して走っていた。
「気を付けて、飛行機列車が通るよ!」
でも、ドナルドは直前まで気づかなかった。ガシャンという音を立て、ドナルドの屋根がタイガー・モスの羽に衝突した。貨車から飛び出すことはなかったが、部品が取れて線路に落ちた。
「何か飛びましたよ、オリバーさん」
幸いにも、トードの忠告が耳に入った機関士はオリバーを停車させ、機関助士が落ちた部品をとりに行った。助士が戻ると、再び出発した。



行く先々で人々が、タイガー・モスを運ぶオリバーを珍しそうに見物する。子供たちも歓声を上げると、オリバーは気分がよくなり、つい調子に乗った。
「どうだい、かっこいいだろう。手を振ってくれて、ありがとう」
注目を浴びて自惚れたオリバーは、愉快そうに陸橋をガタゴトと渡る。



だが、その楽しさも長くは続かなかった。
前方にティッド川に架かる狭い鉄橋があることを忘れていた彼は、スピードを上げて走っていた。
鉄橋が見え、急ブレーキをかけた時にはもう遅かった。鉄橋に引っかかったタイガー・モスは、貨車から転げ落ちて、川へ落下してしまった。

 すぐにダックがロッキーを運んで現場へ駆けつけた。
トップハム・ハット卿も、ウィンストンに乗ってやってきた。
「君のせいで、混乱と遅れが生じたぞ。君と 一緒にいた トードだけでなく、ダックや ヘンリエッタの忠告を ちゃんと聞かなかったそうだな」
「ごめんなさい。これからは 仲間の忠告は きちんと 聞くようにします」



 タイガー・モスを貨車に戻すと、ダックが後方確認のため後ろについた。
そのおかげで事故を起こすこともなく、速やかに目的地に到着することができた。
「本当に ごめんなさい。僕のせいで タイガー・モスが もっと ぐしゃぐしゃに…」
タイガー・モスの車体は水で濡れ、歪んでいたが、パイロットは「早いうちに着いてよかった」と喜んでいた。



 その晩、ダックとオリバーは明日に備えてティッドマス機関庫へやってきた。
「ごめんよ。君の忠告を、真面目に 聞けば よかった」
「僕の方こそ、しつこく言って ごめん。君と この喜びを 分かち合いたかっただけなんだ」
「いいんだ、君は 何も悪くない。これからは しっかりと 注意深く仕事をするよ。もちろん グレート・ウエスタン流の やり方でね!」
2台は大笑いし、仲直りをした。イベント関連の仕事をもらえなかったオリバーを気の毒に思ったダックは、お詫びに自分の役割をオリバーに譲ってあげることにした。
これで明日は2台とも笑顔でキング・エドワード1世を出迎えられるだろう。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ヘンリー

●ゴードン

●ジェームス

●トビー

●ダック

●オリバー

ヘンリエッタ

●トード

●トップハム・ハット卿

●オリバーの機関士

●タイガー・モスの操縦士

●ドナルド(not speak)

●ウィンストン(not speak)

●ロッキー(not speak)

●オリバーの機関助士(not speak)

エドワード(cameo)

●パーシー(cameo)

●ダグラス(cameo)

ファーディナンド(cameo)

●キャロライン(cameo)

●ブッチ(cameo)

○キング・エドワード1世(mentioned)

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2014年に投稿した記事を再編集した物です。

P&TI Ex-14 オリバーへのプレゼント(リメイク)

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 アールズバーグにもクリスマス・イブで駅と操車場が賑わっていた。飾り付けはまだだったが、機関車たちは幸せな気分で暖かい機関庫で休んでいる。

でも、たった一台、幸せじゃない機関車が居た。

「ほら、さっさと動けよ」

ガシャンと乱暴に音を立てたのは、オリバーだった。彼は不機嫌そうに貨車の入換え作業をしている。貨車たちは彼に対して悪戯をすることは無かったが、古くて頑固な貨車ばかりで、移動には時間がかかるのだ。

 

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駅の隣にある機関庫では、仲間たちがオリバーを心配そうに見守っていた。

朝から頑張っている彼の姿を見て、ブレーキ車のトードは何かしてあげたいと思ったが、自分一人では何も行動を起こせないので、不甲斐なさを感じていた。

「クリスマスですし、オリバーさんに 何か プレゼントを あげたいのですが…」

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P&TI Ex-13 パーシーのおんみつさくせん(リメイク)

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 ソドー島は特別な日々を迎えようとしていた。

この時期になると、機関車たちの仕事はお休みが増える。何故なら、鉄道員たちもこぞって家族で過ごすからだ。

それまで、彼らはサンタへの手紙を配達したり、パーティや機関庫の飾りつけをするために、子供たちの幸せそうな笑顔を見届けながら、ガーラントやツリーを運ぶのだった。 

 

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その日、パーシーはソドー整備工場で修理を受けてもらっていた。

部品を取り換えてもらう最中、彼は工場の外でディーゼル機関車たちが集まっているのが目に入った。

「何を しているんだろう。ここじゃ ディーゼル機関車の修理は 出来ないのに」

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P&TI Ex-12 ゆきかき(アレンジ)

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「明日は 大雪だよ。準備は 出来てるかい」

駅に戻る途中で、信号待ちの合間にエドワードがトーマスに言った。

「準備って、何の」と、トーマスが訊き返す。

「雪かきだよ。君は 確か 雪かきを付けるのが 嫌いだったよね」

エドワードが不安そうにこう言うと、トーマスは笑い出した。

「ふふふ。確かに嫌いだけど、心配いらないよ」

 

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P&TI Ex-11 にげだしたしゃりん(リメイク)

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  ソドー島に冬がやってきた。雪が積もれば、カレドニア出身の双子の機関車ドナルドとダグラスの出番だ。

しかし、雪はそれほど積もらなかったので、機関車たちは安心した。だが、別の問題が起きていた。あまりの寒さにより線路が凍りついており、車輪がつるつる滑る。その為機関車たちはいつもより気を付けて走る必要があったのだった。

 

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ディーゼル機関車たちにとって、冬は天敵だった。エンジンがかかりにくくなるのだ。特に寒波となれば正常に作動するかどうかもわからない。

ディーゼル整備工場では機関車の部品が不足していた。製鉄所で働くハリーとバートが出発できないので、部品が届かなくてデンとダートは困っていた。

「あっしが 取りに行ってくるでやんす」

痺れを切らしたダートが言った。

「いいや。俺が 何か代わりに使えそうなものを 捜しに行くよ」

と、小柄で短気なダートを落ち着かせるようにデンが止めると、渋々工場を後にした。

ダートは心配そうに彼を見送るほかなかった。

 

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 ソドー整備工場でも、ケビンが同じ問題を抱えていた。

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