Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-13 パーシーのおんみつさくせん(リメイク)

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 ソドー島は特別な日々を迎えようとしていた。

この時期になると、機関車たちの仕事はお休みが増える。何故なら、鉄道員たちもこぞって家族で過ごすからだ。

それまで、彼らはサンタへの手紙を配達したり、パーティや機関庫の飾りつけをするために、子供たちの幸せそうな笑顔を見届けながら、ガーラントやツリーを運ぶのだった。 

 

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その日、パーシーはソドー整備工場で修理を受けてもらっていた。

部品を取り換えてもらう最中、彼は工場の外でディーゼル機関車たちが集まっているのが目に入った。

「何を しているんだろう。ここじゃ ディーゼル機関車の修理は 出来ないのに」

彼らは小声で話し合っていて、なんだか怪しげな雰囲気だ。パーシーは意識を彼らの方へ向け、集中して耳を澄ませた。 

 

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 その午後、 パーシーはナップフォード駅で、先ほどあった出来事を他の仲間たちに話した。

「―それで、『蒸気機関車には バラすな』って 云ってたのが 聞こえたんだよ」

「何かを 探していたのかな」

彼の話を聞いてトーマスが言うと、ジェームスが否定した。

「いや違うね。きっと 僕たちを 島から追い出そうと計画しているんだ」

「でも、それは大袈裟じゃないかしら」

と、エミリーがジェームスに言った。

みんな考えていたが、ここでゴードンが口を開いた。

「暫く 様子を見たほうが よさそうだな。パーシー、お前が 偵察して来い。奴らの動向を 探るのさ」

「なんで僕が行くの」

「まあ、君が 言いだしっぺだからね」

と、ヘンリーもそっぽを向きながら言い、パーシーがディーゼル機関車たちの見張りを務めることになった。彼は不安で不安で仕方なかった。

 

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 翌朝、エドワードの駅で入換え作業をやっていたパーシーは、ちょうど「ゴロゴロゴロ」という唸り声を耳にして、とっさに駅の裏に隠れた。

ディーゼルが仲間を引き連れてやってきたのだ。

「お前たち、何としても今日中に ブツを運ぶんだぞ。いいな」

「おうとも ディーゼル。派手に騒ぐ準備も バッチリだぜ」

駅を通り過ぎ、支線へ入っていくディーゼルと、そのまま本線を進んでいくハリーとバートの姿を見届けたパーシーは、今話していたことを頭の中で纏めた。

「ブツ…? 派手に騒ぐ…? 一体 何をする気なんだろう」 

彼はディーゼルの後を付けてみることにした。

 

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パーシーが再びディーゼルを見たのは、港に入ってからの事だった。彼はまた気づかれないようにこっそりと貨車や建物の陰に隠れて様子を窺った。

ディーゼルはミルクやチョコレートのタンク車を繋いでもらいながら、パクストンとデニスに指示を出しているようだった。パクストン達は貨車いっぱいにつまれた、何か重そうなものを運ぼうとしている。

「デニスさん、手伝って…」

パクストンが苦しそうに言うと、ディーゼルがデニスに厳しく命令を下した。 

「楽したいだけなら、お前は 帰って シドニーの面倒でも 見ていろ」

「それじゃ つまんないんだけど」

デニスは作業員に連結を外され、渋々ディーゼル整備工場へ帰って行った。

 

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「どうして ディーゼルが 皆に 指示を出しているんだろう」

パーシーが呟いた。

ディーゼルがタンク車を牽きつつ、仕方なくパクストンの列車を後押しで出発したのを見て、パーシーは再び彼らの後を追いかけようとしたその時、誰かに声を掛けられた。

「こんなところで 何を やっているんだね」 

「ト、ト、トップハム・ハット卿! ごめんなさい」

パーシーは彼の声にびくっとした。

「おどおどして、どうしたのかね。とにかく、入れ替えが済んだのなら、ソドー整備工場へ 荷物を届けに行ってくれないか」

「はい、わかってます。今すぐ向かいます。えっと、さよなら!」

パーシーはディーゼルに気付かれる前に一目散に港を出て行った。

 

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トップハム・ハット卿の言いつけどおり、整備工場に貨車を運んでくると、今度はノーマンがメイビス、ハリーとバートと何か話しているところを目の当たりにした。

その話し声は工場の中でよく響いていた。

 「ここが明日、僕たちの居場所に なるんだね」

「明日の夜が 待ち遠しいわ」

ソルティーの合図が出たら、ワイワイ騒ごうぜ」

彼らの会話を聞いていたパーシーは、一刻も早く仲間に知らせないとと思い、転車台で向きを変えた後、ケビンのお礼も聞かずに急いで機関庫へ帰って行った。

 

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  ティッドマスの操車場では、既に蒸気機関車たちが集まり、昨今のディーゼルたちの怪しい動向について話し合っていた。

「さっき、レスキューセンターで ソルティーを見たよ。ディーゼルに、『ビクターが 居ない 今のうちに運べ。絶対に 気付かれるなよ』って 命令されてたんだ」

と、ジェームス。

「私も ソルティーを見たわ。シートに くるまれた 細長い物を 楽しげに運んでた」

「それに メイビスも 手ごまに いるみたいだ。何を話してるのかは わからなかったけど、ディーゼルと一緒に、コソコソ荷物を運んでたよ」

と、エミリーとトビーが続けて言った。

そこへ、パーシーが駆け込んで、これまでの隠密行動で得た情報をみんなに伝えた。

「きっと ソドー整備工場を 乗っ取るつもりなんだよ」

 パーシーの考えに、トビーとエミリーはとても驚いた。

「そんな。信じられない…」

「でも、トップハム・ハット卿が 許さないわ。前に ディーゼル10が やった時も、失敗に終わったじゃない」

ディーゼルのことだ、まだ 懲りてないんだよ」

と、トーマス。

「とにかく、奴らが 明日 ソドー整備工場に 現れたら、こうしよう」

皆はゴードンの提案に耳を傾けた。

 

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 翌日、パーシーは整備工場の裏手で待機していた。古い貨車の陰にひっそり隠れて様子をうかがう。ゴードンの想定通り、彼らはソドー整備工場にやってきた。

でも、中には入らず、 裏手の待避線に集まると、ディーゼルが口を開いた。

「よし、みんな いるな。後は 蒸気機関車どもを 驚かせてやろう。ビクターが戻ってきたら… わかってるな?」

他のディーゼル機関車たちは、ディーゼルに目配せをしたり頷いたりしている。あのソルティーとメイビスもだ。

これを聞いたパーシーは、昨日自分が言った通りだと思った。そして、思わず震えて、緩衝器が貨車と「コツン」とぶつかった。

「誰か いるでやんすか!?」

ふいに物音に気付いたダートが言った。

パーシーは慌てた。だが、それと同時にジェームスの汽笛と掛け声が響いた。

「ポッポー! 今だ!」

 

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ソドー整備工場の裏口や石炭ホッパーの下から、ジェームス、トーマス、エミリー、ヘンリーが次々に飛び出してきた。

そしてパーシーもそれに続いて古い貨車を押し出す。だが、突然押された貨車たちは理解も追いつかずポイントに乗り上げて脱線し、古い貨車は壊れて中からパーティグッズが飛び出し、「パーン! パパパーン!」という破裂音が連続して鳴り響いた。 

 

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それに加えてディーゼル機関車たちも驚いて大慌てだ。

この騒ぎにびっくりしたパクストンは、ポイントでソルティーが牽いていた平台貨車とぶつかり、貨車の積荷がディーゼルの居る線路の方へ転がり落ちた。

「ゴードン様の お通りだ!」

さらに、とっさに逃げて行こうとするディーゼルの退路を塞ぐようにゴードンがやってきて、貨車の積荷を不本意に轢きつぶしてしまった。

 

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ディーゼルは怒り心頭だった。 

「なんてことを しやがる!」

「君たちの企んでいることは 判ってるよ」

「僕たちの整備工場を 乗っ取って、騒ぎを 起こすつもりなんでしょ」

「そんなこと させないぞ」

と、トーマスとパーシーとジェームスが言った。

すると、ディーゼル機関車たちはきょとんとした。状況を把握したディーゼルはため息をつき、ソルティーは笑い出した。

「なあ、相棒よ。おいらが そんな くだらない話に 乗ると思うかい」

「違うのかい」

それを聞いて、蒸気機関車たちは目を丸くした。

ソルティーはディーゼルに打ち明ける許可をもらって話を始めた。

「そうとも。今年は ソドー整備工場が開業して 50周年。ディーゼルは、お前さん達を びっくりさせたかったのさ」

「前に 騒ぎを起こした 詫びでも あるでやんす」

と、ダートが付け加える。

これで真実を知った蒸気機関車たちは、安心と同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。特にパーシー。

「君たちは 親切に やってたのに、僕が 早とちりしたばっかりに こんなことにしてしまって、本当に ごめんなさい」

反省した彼の表情を見て、ソルティーは気を許そうと、仲間に目配せをして微笑んだ。

パーシーは落ち着いて辺りを見渡した。貨車につまれていた風船の大半が割れ、クリスマスツリーと思しき木はゴードンの動輪で潰れてしまっている。線路は塞がれていて、走れそうなのは表から出てきたヘンリーだけだった。

彼らはもう、どうすればいいかわかっていた。

「僕らが責任を取ってパーティの準備をするよ。ヘンリーは救援隊を呼んで」

「でも、クリスマスツリーや飾りは どうするんですか?」

パクストンの疑問に、トーマスがアイディアを閃いた。

「僕に いい考えが あるよ」

 

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 間もなく、エドワードがロッキーを運んでやってきた。

めちゃめちゃだった線路が、あっという間に片づけられていく。

細かい部品はクレーン車のケビンが集めて回った。

「安心してください。あなたも すぐに 修理しますよ」

と、壊れて悲しそうな顔をしていた貨車に、ケビンが優しく言った。 

「ありがとう、ケビン。それからエドワードとロッキーも。よかったら 今夜のパーティに 来てよ」と、パーシー。

 

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線路が片づけられたおかげでゴードンとエミリーも走れるようになった。

片付けが始まる前にミスティアイランドに連絡をしていたので、ブレンダム港に到着していた船から、とっておきのモミの木が降ろされた。これをゴードンが運ぶのだ。

それから、エミリーはティッドマス機関庫に飾る予定だったクリスマス用の飾りと花火の貨車を受け取って、全速力でソドー整備工場へ走って行った。

「私達なら 誰よりも速く走れるわ」

これらはみんなトーマスのアイディアだった。 

 

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トーマスとジェームスとパーシーは、島中を駆け回って、出来るだけ多くの機関車をクリスマス・パーティに招待した。

「トビーも おいで。あれは 誤解だったんだ」

「本当に ほっとしたよ。行こう、ヘンリエッタ」 

 

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 その夜、暖かいソドー整備工場では、機関車達で賑わった。工場の外まで機関車があふれている。

工場の中は綺麗に飾り付けられ、ツリーも立っている。真ん中ではディーゼル整備工場の整備士たちが、ソドー整備工場の人達に、家族分のチョコレートケーキやクリスマス・プディングを渡した。パクストンは運んできた貨車から、大きな備品をプレゼントした。

「お集まりいただいた みなさん、そして機関車と自動車の みんな。ここは 今年で開業50周年を迎えます。私は この素晴らしい設備が整った工場を、この島の機関車と同じくらい 誇らしく思います。ビクターに ケビン、それから従業員の皆さん、これからも 満足のいく修理を よろしく頼むよ」

「お任せください トップハム・ハット卿。どんな修理も 全身全霊で 承ります」

と、ビクターが誇らしげに言った。

 

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「さあ、相棒たちよ。盛り上がっていこうじゃないか!」

ソルティーが声を上げると、外で50周年を記念する花火が打ちあがった。 

「メリークリスマス!!」

機関車たち、それから従業員たちが一斉に声を上げ、楽しくて賑やかなパーティが始まった。「いつも足を引っ張るディーゼルたちも いい事をするな」と、パーシーを含む蒸気機関車たちは思ったのだった。

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ヘンリー

●ゴードン

●ジェームス

●パーシー

●トビー

●エミリー

●ビクター

ディーゼル

●メイビス

●ハリーとバート

●デニス

●ダート

●ノーマン

●パクストン

●有蓋貨車

●ケビン

●トップハム・ハット卿

エドワード(not speak)

ヘンリエッタ(not speak)

●ロッキー(not speak)

●ビリー(cameo)

●チャーリー(cameo)

●デン(cameo)

●スカーロイ(cameo)

●レニアス(cameo)

●サー・ハンデル(cameo)

●ピーター・サム(cameo)

●ラスティー(cameo)

●ダンカン(cameo)

●スクラフィー(cameo)

●ジェローム(cameo)

●フリン(cameo)

●クランキー(cameo)

ディーゼル10(mentioned)

シドニー(mentioned)

 

 

【あとがき】

  第13弾はPToS S10 E24より『パーシーのスパイ大作戦!』でした。詳しい投稿日時は全く覚えていませんが、オリジナル版の写真撮影は2012年6月17日に行ったので恐らくその頃です。パーティーの開催場所を公式のロケーションに変更しましたので、より一層DOTDの後日談っぽさが出たと思います。

 原作におけるクロヴァンズ・ゲートの修理工場と、TVシリーズのクロヴァンズ・ゲートに位置するソドー整備工場が公式で同一の物か定かではありませんが、前者は1915年に設立し、1925年から本土で蒸気機関車が減少するまでの間に必要に応じて拡張され、現在では登山鉄道の機関車などのあらゆる種類の蒸気機関車の大規模改修や再建に必要な機械や凄腕の人材が備わっているそうです。あれだけ「原作を分かってない」と言われ続けてきたHiT時代に、設定が殆ど一致している上に最も鉄道らしい構造のソドー整備工場が出来たんだから凄いなぁと実感すると同時に、モデルメーカー等担当のDavid Evesの考案が採用されて本当に良かったと常々感じます。