Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-11 にげだしたしゃりん(リメイク)

f:id:zeluigi_k:20190523235615j:plain

  ソドー島に冬がやってきた。雪が積もれば、カレドニア出身の双子の機関車ドナルドとダグラスの出番だ。

しかし、雪はそれほど積もらなかったので、機関車たちは安心した。だが、別の問題が起きていた。あまりの寒さにより線路が凍りついており、車輪がつるつる滑る。その為機関車たちはいつもより気を付けて走る必要があったのだった。

 

f:id:zeluigi_k:20190524180422j:plain

ディーゼル機関車たちにとって、冬は天敵だった。エンジンがかかりにくくなるのだ。特に寒波となれば正常に作動するかどうかもわからない。

ディーゼル整備工場では機関車の部品が不足していた。製鉄所で働くハリーとバートが出発できないので、部品が届かなくてデンとダートは困っていた。

「あっしが 取りに行ってくるでやんす」

痺れを切らしたダートが言った。

「いいや。俺が 何か代わりに使えそうなものを 捜しに行くよ」

と、小柄で短気なダートを落ち着かせるようにデンが止めると、渋々工場を後にした。

ダートは心配そうに彼を見送るほかなかった。

 

f:id:zeluigi_k:20190524175146j:plain

 ソドー整備工場でも、ケビンが同じ問題を抱えていた。

工場の中はポカポカ暖かかったが、今朝、営業開始時に扉から入ってきた凍えそうな風でエンジンがかかりにくくなっていた。彼のオペレーターや整備士が、機関車たちの修理をしつつも、ケビンの面倒を見ているのだった。

 

f:id:zeluigi_k:20190704203437j:plain

そんな中、トーマスは修理をしてもらっていた。車輪が壊れたので、クレーンで吊り上げられながら、新しい車輪が届くのを待っている。とても退屈そうだった。

シドニーの気持ちが、なんとなく 分かるような気がするよ。でも ここから 2年なんて、とても考えられないね」

彼がこういうと、ビクターは笑った。

「安心してくれ。私達が居る限り、そんなことは させないさ」

そこへ、パクストンが貨車を牽いて、息を切らしながら整備工場へ滑り込んだ。

「トーマスの車輪を、持って…きましたよ!」

「ご苦労だったな パクストン。修理は出来ないが、暫く ここで 休んでいくといい」

「ありがとうございます ビクターさん。ちょうど、さ、寒くて、ハッブション!! くしゃみが 止まらないんですよ」

 

f:id:zeluigi_k:20190704203859j:plain

ケビンが正常に動くようになり、間もなく、貨車から部品や車輪を降ろし始めた。

新しい車輪をトーマスの車体にセットする為に転車台へ一旦降ろす。また別の車輪を吊り上げようとしたその時、ケビンのフックが誤って転車台の上の車輪にぶつけてしまった。車輪は線路の上を転がり始めた。更には、

「ハッブション!!」 

と、パクストンが体を震わせて大きなくしゃみをした。すると、車輪がその風圧で吹き飛び、そのまま工場から外へ出て、凍てついた線路の上を転がって行った。

それを見ていたビクターが叫んだ。

「まずいぞ。車輪の在庫は あれだけなんだ!」

「僕が 取ってきます!」

ケビンがすかさずこう言うと、ビクターが何か言おうとする前に、整備工場を飛び出していった。

 

f:id:zeluigi_k:20190524190833j:plain

ケビンは工場から逃げていくトーマスの車輪を追いかけた。線路が凍っている為、まだ制輪子の付いていない車輪はつるつる滑り、どんどん加速していく。ケビンは必死だったが、他の機関車達はその異様な光景を不思議そうに見つめていた。

「待ってー、トーマスの車輪さん! トーマスが困ってますよう」

だが車輪は待たない。その様子を見て、やんちゃですばしっこいトーマスそっくりだと彼は思った。  

 

f:id:zeluigi_k:20190704201538j:plain

 その頃、ソドー整備工場では機関車の修理がストップしていた。

ビクターは、寒空の中ケビンが飛び出していったことが心配だし、ケビンが居ないと仕事がはかどらなかった。

「あのう、さっきは すみませんでした。僕が クレーン車を 持ってきますよ」

パクストンが申し訳なさそうにビクターに言った。

「いや、外は危険だ。ケビンも じきに諦めて 帰ってくるさ」 

 

f:id:zeluigi_k:20190524204533j:plain

 ケビンはとにかく夢中で、逃げる車輪を追いかけ続けていた。

すると、前方に脱線事故の後片付けをしている機関車たちが現れた。車輪は線路に戻されるのを待つシドニー目掛けて転がっていく。

シドニー、その車輪を止めてください!」

だが、ポイントが切り替わっていて、車輪は別の線路へと入ってしまった。

「今の 何だったんだろう…」

シドニーには何が起こったのかわからず、きょとんと、車輪を追いかけるケビンを見送った。

 

f:id:zeluigi_k:20190524194657j:plain

ケビンが支線を滑っていく車輪を追いかけていると、今度は交差点が現れた。

しかも、急行列車を牽くゴードンが交差点を横断しようとしているではないか。

「ゴードン、危ない、止まって!」

ケビンは叫んだ。だがゴードンの視界に車輪が入ってきたとき、ブレーキをかけるには遅すぎて、思いっきり車輪にぶつかってしまった。

 

f:id:zeluigi_k:20190527171144j:plain

車輪は空高く舞い上がると、前にネビルが落ちそうになった壊れた陸橋の近くへ、まさに奇跡のように着地した。

幸い、車輪は動きを止めてそこから走り出さなくなった。ケビンは回り道をしながら急いで丘を登った。車輪にはヘコミが出来ていたが、ちょっと叩けばすぐ直りそうだった。

「やったあ。早く持って帰って、トーマスに渡そう」 

 

f:id:zeluigi_k:20190527171538j:plain

ところが、ケビンが車輪に近づこうとした時、自分のタイヤが積もった雪に取られて動けなくなった。彼は力の限りを振り絞って雪から抜け出そうとした。

そして次の瞬間、再びフックが車輪に激突した。 

「あ、待って、ダメ!」

トーマスの車輪は途切れた線路目掛けて転がり始め、雪の壁を突き破って崖の底へと落ちて行った。

更に悪い事に、寒さでケビンのバッテリーがあがって動けなくなってしまった。彼はひどい気分だった。追跡が全て無駄になったのだ。

これではトーマスやビクターに合わせる顔が無いと彼は思った。

その時、向こう岸から隣の線路を誰かが走ってきた。

 

f:id:zeluigi_k:20190702214235j:plain

 それはエミリーだった。彼女はこんなところにケビンが居るのを見て驚いて立ち停まった。彼の悲観的な顔を見て察したエミリーは、ちょうど牽いていた平台の貨車に載せてソドー整備工場へと運んであげたのだった。

その道中で、エミリーはケビンから事情を聴いた。

「気にしないで ケビン。誰にでも 失敗は あるわ。ビクターなら きっと 許してくれるわよ」

 

f:id:zeluigi_k:20190704191324j:plain

 整備工場では、ビクターたちがケビンの帰りを待っていた。

「ケビン、一体どこまで 行ってたんだ。物凄く心配したんだぞ」

「本当に ごめんなさい、ボス。僕…」

「言わなくても 判ってるよ。車輪は また明日届く。とにかく、お前さんは 今すぐに暖まりなさい」 

その時、工場の外から、大きくて高い音の警笛を響かせてデンが入ってきた。

「やっぱり そうか。やっと見つけたぜ」

 

f:id:zeluigi_k:20190704192535j:plain

デンが牽いてきた貨車には、べこべこにへこんで傷が入っているも、とても見慣れた車輪が積まれていた。

「そんな、まさか、信じられない!」

と、ケビンが叫んだ。

デンはにっこり微笑み、吊り上げられているトーマスの方を見た。

 

f:id:zeluigi_k:20190527173717j:plain

「これ、トーマスの車輪だろう? さっき、そこの崖から 落ちてきてな。エミリーとケビンの会話が 聞こえたんだ」

「うわあ、持ってきてくれて ありがとう」

トーマスがお礼を言った。 

「いいってことよ。故障したやつは 放っておけないんだ。えーっと つまり…」

「つまり、こう 言いたいんだな。整備士としての プライドってな! 私からも礼を言うよ」

と、ビクターがデンの言葉を代弁して言った。

「どういたしまして。なあ、お願いが あるんだが、少し 暖を取らせてくれないか。その代わり、俺の整備士が 車輪の修理を 手伝うってよ」

こうして共同作業が始まった。パクストンも工場内の貨車の入換え作業を手伝った。

 

f:id:zeluigi_k:20190704195528j:plain

 デンの整備士が手伝ってくれたおかげで、予定よりも早く車輪の修理が終わった。ピカピカに輝いていて新品同様だった。元通り走れるようになったトーマスはとてもうれしそうだ。

「ありがとう、ビクター、デン。それにパクストンと ケビンも! これで元気に走ることが出来るよ」

「ケビンが 追いかけなかったら、俺が 車輪に 会う事も 無かっただろうな。もう失くすんじゃないぞ」

と、言い残して、デンは手伝ったお礼に工場長から幾つか貰った予備の共有部品を運びながら、ディーゼル整備工場に必要な部品を受け取りに出発した。

パクストンも、ほっと一安心だ。

「本当に良かったです。これからは 僕も もっと用心しますね… ハッブション!! おっと」

 

 

おしまい

 

 

 

 【物語の出演者】

●トーマス

●エミリー

●デン

●ダート

●パクストン

シドニー

●ビクター

●ケビン

●ゴードン(not speak)

●ドナルドとダグラス(not speak)

●パーシー(cameo)

ディーゼル(cameo)

●ノーマン(cameo)

●ダンカン(cameo)

●ロッキー(cameo)

●ネビル(mentioned)

●ハリーとバート(mentioned)

 

 

【あとがき】

 お待たせしました。リメイク第11弾は2014年1月18日投稿のPToS S12 E26より『トーマスの車輪が逃げ出した』です。オリジナル版はパクストンが主人公で、ビクターとケビン、エミリー、ダート、シドニーは一切出演しませんでした。主役を変更した理由は個人的にケビンのドタバタ劇を書きたかったからです。PToSではケビンの代役が居たために不十分でした。

過去の作品に大きく手を加えることは本当はやってはいけないのだろうと書いていて思ったので、パクストンの方が良かったよと言う人の為に、一応同時期にパクストンver.も撮影したので機会があればそちらも投稿します。

あと、PToSとリメイク作品は別次元の出来事と思っていただければ嬉しいです*1。次回のお話も主人公を変更しています。

*1:また、どちらの次元にもTLRCDの物語が存在し、どちらとも繋がります。