Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S13 スタフォードのだいかつやく


 スタフォードは、島で唯一の蓄電池機関車だ。
燃料は内蔵された電池を充電すること。電気機関車なので、石炭も水も、ディーゼルオイルも必要ない。一度の充電で最大6時間も走行することができる。
とても静かに走るので、島中の農夫たちのお気に入りだった。



 ある朝、スタフォードは平台貨車を受け取る為ブレンダムの港に来ていた。そこでジェームスに会った。彼は警笛を鳴らして挨拶をする。
「やあ、ジェームス。おはよう!」
「うわあ! もう、スタフォード。君は 静かだから いきなり声を かけられたら びっくりするよ」
「ごめん ごめん。走ってきたのに 気付かなかった?」
「ああ、そうとも。大体 君は トビーみたいに 薄汚いくせに チヤホヤされすぎだ。のろまで 人を 待たせてばかりいるのに、どうして そう トップハム・ハット卿に信用されてるのか 理解できないよ」
彼はつんと下唇を持ち上げながら走り去っていった。
それを見ていたポーターは浮かなそうなスタフォードを慰めた。
「気にすることないさ。ジェームスは ただ やきもちを やいてるのさ」
「わかってるよ ポーター。僕は 全然気にしてなんか いないよ」
だけども、自分の欠点ばかり貶されたのは少しショックだった。



ジェームスが駅構内に到着すると、ちょうどトップハム・ハット卿がやってきた。
彼は嫌な予感を察知した。
「もしかして、また 貨車を 牽かせるんじゃないでしょうね?」
「その通りだ、ジェームス。ノーマンが故障で動けなくなった。すまないが 代わりに 君が 炭鉱に行って、石炭の積んだ貨車を 10両ほど 運んでくれたまえ」
「でも、それじゃあ 僕の 真っ赤なボディが もっと 汚れちゃいます。客車の仕事なら、喜んで やりますよ」
「選り好みを するんじゃない。仕事が終わったら ボディを洗ってあげるから 安心しなさい」



 一方、スタフォードは、まだ港にいた。空きの貨車が手配されるまで、入れ替え作業を手伝っていたのだ。ポーターが再び気さくに声をかけた。
「まだ ジェームスのことが 気になる?」
「え。いや、そんなことは ないよ。でも、ちょっと ショックだったね」
「ジェームスは 他を 見る目が ないのさ。君は 環境に 優しい機関車だ。石炭も オイルも 架線なんかも いらないし、僕らと違って 匂いや 排出物も 出さないんだから。それって、すごく 重要なことだよ」
「そうかな?」
「そうさ。架線が無いところも、僕らが 長く入ることのできない海底トンネルだって、君なら 楽に進めるだろう? さあ、行っておいで」
こう言われて、スタフォードは少し元気が出た。平台貨車を何台か受け取ると、レスキューセンターを目指して出発した。



レスキューセンターに着くと、彼は一旦操車場に入った。とても深い海底トンネルを長時間くぐるので、電池をフル回復させるため充電するのだ。
作業員がプラグを差し込む。充電している間スタフォードは、ポーターの言ったことをずっと思い返していた。



 その頃、ジェームスは本土の炭鉱にたどり着いたところだった。
双子のディーゼル機関車スプラッターとドッヂもそこにいたので、ジェームスはさらに機嫌が悪くなった。双子もジェームスを見て機嫌を悪くした。
「とっとと 石炭の貨車を集めて 用意しろ。僕は すぐにでも こんなところから おさらばしたいんだ」
「言われる前から やっとりますよ」と、スプラッター



 しばらくして、石炭の貨車の準備が整った。
「よーし、これで ここも 見納めだ」
ところが、炭鉱夫は出発しようとするジェームスを止めた。
「この貨車は スプラッターとドッヂが 運ぶための物だ。君は 残って 次の貨車を 待ってくれ」
「なんですって」
スプラッターとドッヂがにやにやしながら石炭の貨車を牽いて出ていくと、炭鉱はジェームスとたくさん並んだ空の貨車だけになってしまった。
残ったジェームスは苛立ちを隠せない。一刻も早くここから出たくてしょうがないのだ。
彼はドスンと貨車に当たり散らした。すると貨車達はジェームスに突き飛ばされ、炭鉱の奥へ奥へと入り込んでしまった。
「大変だ」



幸い、脱線することはなかったものの、貨車たちはジェームスの手の届かない場所まで追いやられている。
ジェームスはすぐに貨車を追いかけようとしたがまたしても炭鉱夫達に止められた。
蒸気機関車なんかが入ったら 引火する危険性がある。手押し車か 何かは ないか?」
「だめです、炭鉱の手押し車は 先日 サムソンが 誤って 処分してしまったようで…」



 トップハム・ハット卿がナップフォード駅のオフィスでくつろいでいると、電話がかかってきた。炭鉱の親方からだ。
「―わかりました。すぐに スタフォードに 向かわせます」
彼は車に乗り込むと、急いで海底トンネルへ向かった。
スタフォードがトンネルへ入ろうとした時、線路に赤旗があるのが見え、彼は停車した。
「炭鉱の中に貨車が 立ち往生した。すぐに 救出に 向かってくれたまえ」



スタフォードを待っている間、炭鉱夫たちはせっせと奥で立ち往生している貨車に石炭を詰め込んでいた。
ジェームスは後悔もしていたが、同時にイライラしていた。
充電を終えてスタフォードが炭鉱に到着した頃にはすっかり夕暮れ時だった。



そんなジェームスを横目に置いて、スタフォードは炭鉱の中へはいっていく。
2つのランプを点灯させ、奥で立ち往生している貨車たちを見つけ出した。
「あったぞ!」



貨車に石炭がいっぱいに積み込まれると、スタフォードが石炭の貨車と共に立坑から出てきた。ポーターの言った通り、蒸気機関車や他の電気機関車にはできないことを彼は成し遂げたのだ。
ついでに彼は、ぱぱっと入換えをして、ジェームスが運ぶ貨車の列につないだ。



ジェームスは、面目丸つぶれだった。
彼は恥ずかしくなり、スタフォードだけに聞こえるよう小声で謝ると、石炭の入った大量の貨車を牽いて走って行った。
スタフォードは蒸気も出さなければ架線も必要ない、島中で他にはない特別な役に立つ蓄電池機関車であることを改めて証明したのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ジェームス

●ポーター

スプラッター

●トップハム・ハット卿

●親方

●鉱夫 

●ドッヂ(not speak)

●パーシー(cameo)

●ダック(cameo)

●ネビル(cameo)

●スタンリー(cameo)

●チャーリー(cameo)

ディーゼル(cameo)

●パクストン(cameo)

●ロッキー(cameo)

●クランキー(cameo)

●トビー(mentioned)

●サムソン(mentioned)

●ノーマン(mentioned)

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2014年に投稿した記事を再編集した物です。