Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E05 エドワードのてつどうツアー (再投稿版)

※この記事は、2017年6月29日に以前のブログに投稿したものを再編集したものです。

 


 毎年夏になると、イングランドや世界から集まる、鉄道愛好家の人たちを乗せるツアーが数回開かれる。

ホストはエドワード。自分の支線を走って彼らを案内するのだ。

彼は双子の機関車ビルとベンに、今年も愛好家達を陶土の採掘場にも連れて行くと約束した。

双子はこのイベントが大好きだった。

2台で牽く特別仕立てのブレーキ車にお客を乗せるのも楽しみだし、何より写真を撮ってもらえるからだ。

 


支線の途中には牧師のラクシーが営む牧師館と、トレバーが働くリンゴの果樹園がある。

蒸気トラクターのトレバーも、鉄道を語る上では欠かせない車両だ。

そこで、彼らはツアーの帰りに訪ねようと、ハット卿と機関士、車掌、それからラクシー牧師とで計画を立てた。

「訪れた見学者全員に 私の リンゴを プレゼントしましょう。トレバーも きっと 喜ぶはずです」

この計画にはトレバーも賛成した。

「そりゃあ いい。最高のツアーになること 間違いなしだよ」

 


ところが、港で悪い知らせが入った。

ソルティーが言うには、今夜は嵐が吹き荒れるようだ。

しかも彼の予報はよく当たる。

双子を呼び戻しに港へやってきたティモシーから、機関士が降りて残念そうにこう言った。

「もしも 地滑りが起きたら、しゃれにならない。今夜は、ここに 泊まろう」

「僕は マリオンに知らせてくるよ」

と、ティモシーも云う。

ビルとベンは溜息をついて、がっくりと肩を落とした。

 


エドワードも不安な気持ちでいっぱいだった。

その晩、彼は機関庫で扉の窓から外を眺めていた。

嵐で雨が滝のようにザーザー降り、風はビュービューと吹き荒れている。

時々稲妻が走ることもあった。

「明日のツアーが 心配だなあ」

彼はそう小さく呟いてそっと眠りについた。

 


 だが、明け方になるとその嵐もだんだんと弱まり、朝になるとまるで転寝の夢だったかのように見事に良い天気になった。

小鳥がさえずり、青い空がよく晴れ渡っている。

目覚めたエドワードが機関庫から顔を出すと、ヘンリーが声をかけた。

「おはよう、エドワード。今日は 鉄道ツアーの日だってね」

「あなたが 羨ましいわ。私は 火室の調子が悪くて 動けないの」

と、エミリー。

「僕も 調子が悪いんだ。だけど ソドー整備工場までの 道のりが、ゆうべの嵐のせいで 塞がれてるんだって。今日一日、ここで 過ごすことになりそうだよ」

哀しげな2台を見たエドワードは、彼らを気の毒に思った。

 


 やがて出発の準備を整え、大きな駅へ向かった。

彼は、昔ながらの古い客車と、操車場に残っていた余り物の大型客車を用意して待っていた。客車達はつい最近ペンキを塗り変えられたばかりでピカピカに輝いている。ジェームスさえ嫉妬する程だ。

間もなく、本土からコナーが全速力でやってきた。

自分専用の客車を牽いて大きな駅に滑り込む。客車は観光に来た鉄道愛好家でいっぱいだ。

「君の お客を 連れてきたよ、エドワード」

予定時刻より少し遅れていたが、彼は陽気に目配せをした。

 


不安を胸にしつつ、エドワードが本線をシュッシュッと軽快に走っていると、やがて線路わきに刺さる赤旗が目に入った。

旗の先ではビルとベンが線路に散らばった瓦礫や木を片付けている。トレバーも一緒だ。

エドワードがその場で一旦停車すると、観光客は客車の窓から珍しそうに彼らの作業する様子を写真に収めた始めた。

だがそれとは対照的にビルが浮かない顔で声をかけた。

「ゆうべの雨で、陶土が 脆くなってさ。採掘場へ案内が できないよ」

「今日は ずっと こうして瓦礫を集めることになりそうだよ」と、ベン。

「牧師様の果樹園も 酷い有様さ。取れたてのリンゴは あるけれど、とても お客さんを 降ろせられる状態じゃないね」

と、トレバーも悲しげに言う。

 


『彼らを 元気づける良い方法は 無いかなぁ』

エドワードが頭の中でそう呟く。

間もなく線路から倒木が取り除かれ、エドワードは再び出発した。

だが、支線に入る直前で別の問題が発生した。駅長が彼を呼び止めたのだ。

「この先で 土砂崩れが 発生したんだ。通すわけには いかないよ」

「となると、残念だが ツアーは 中止するしか なさそうだな」

機関士の言葉にエドワードはショックを受けた。

乗客ががっかりするだろうと思ったからだ。せっかく考えた計画も台無しだ。

すると、支線の方からやってきたダックがため息と共に呟いた。

「屋内でも 楽しく過ごせる場所が あると いいんだけどね…」

その時、エドワードはふと思い出した。

機関庫で手当てを待っているヘンリーとエミリーの姿と、その表情を。

「駅長さん、今すぐ トップハム・ハット卿を ここへ 呼んでもらえませんか」

 


連絡を聞いたトップハム・ハット卿は大至急ウェルズワース駅へ駆けつけた。

機関士と助士は事情と、エドワードのある考えを説明した。

土壇場での閃きだったので、エドワードは少し不安そうな表情を浮かべながら横で聞いていた。

彼らが固唾を呑んで見守る中、トップハム・ハット卿は目を輝かせながら口を開いた。

「それは名案だ。さっそく 手配しよう」

 


新たな計画を実行に移すため、エドワードは転車台で方向転換すると、再び客車を繋いで、嬉々として大きな駅の方へ戻って行った。

ダックも貨車にトレバーを、ブレーキ車に彼の運転手とラクシー牧師を乗せてエドワードの列車に続く。勿論新鮮なリンゴも一緒だ。

エドワードは、仕事を一段落終わらせて洗車をしてもらっている双子にも親切に声をかけた。

「君たちも おいで。今から 新しいツアーをやるよ」

双子は顔を見合わせて、ウキウキしながら彼らについて行った。

 


エドワードが客車を牽いて、それも沢山の仲間も引き連れて、ティッドマス機関庫へ帰ってきたのを目の当たりにしたヘンリーとエミリーは、目を丸くした。

彼の新しい計画とは、観光客に、自分たちの機関庫と操車場を見学させることだったのだ。

 


計画は大成功を迎えた。

ツアーは機関車や愛好家にとって素晴らしいサプライズになった。

彼らは胸を躍らせ、普段は立入りが禁じられている操車場や、機関庫の内部、それからトレバーと沢山並んだ蒸気機関車たちの写真を撮ったり、牧師から配られた新鮮なリンゴを食べて、ツアーを大いに楽しんだ。

これにはトップハム・ハット卿も微笑ましそうだ。彼はエドワードを褒め称えた。

「君のアイディアの おかげで、ツアーは かつてないほどの大盛況だ。本当に 賢い機関車だよ」

「とんでもない。ダックの助言のおかげです。それに ヘンリー達も 待っていなかったら、成功することは できなかったでしょう」

「そうか。君たちは 本当に 優秀な 機関車だ。そして ここにいるすべての機関車たち全員が、皆 役に立つのですよ」

トップハム・ハット卿は2台を褒めた後、観光客に各々の凄さを紹介した。

機関車たちはとても誇らしげに最高の笑顔で観光客を歓迎したのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

エドワード

●ヘンリー

●ダック

●ビルとベン

●エミリー

●コナー

●ティモシー

ソルティー

●トレバー

●トップハム・ハット卿

エドワードの機関士

●ティモシーの機関士

●チャールズ・ラクシー牧師

●ジェームス(not speak)

●ウェルズワースの駅長(not speak)

●ハーヴィー(cameo)

●スタンリー(cameo)

●ポーター(cameo)

●パクストン(cameo)

●ブッチ(cameo)

●ローリー1(cameo)

●クランキー(cameo)

●マリオン(mentioned)

 

 

【あとがき】

 以前知人がばんえつ物語号に乗車していた際、トラブルに巻き込まれたことがありました。

その事件を基にしつつ、こんなツアーがあったらいいな、と想像しながら書きました。

しかし、これはあくまで私個人の価値観に過ぎないんですよね。実際の鉄道ファンの方々はどんなツアー内容だったら歓喜するのか、客観的に考えずに書いてしまいました。今思うとやや愚かしいです。

とはいえ、自分は今のところ機関庫以外思いつきません。鉄道に関連した屋根のある施設と云えばウルフステッド城が真っ先に思い浮かびますが、こちらは普段から定期的に観光ツアーを行っている場所なので特別感が無いなと思いました。(そもそもレイアウトすら再現できないし)。

今更聞いても遅いけれど、皆さんは島内のどんなロケーションが、またはどんなイベントが鉄道ファンへのサプライズに最もふさわしいと思いますか?

 

 

 


※『きかんしゃトーマス』に関する著作権はすべてマテルに帰属します。