Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E03 トーマスとやこうれっしゃ (再投稿版)

※この記事は、2017年5月20日に以前のブログに投稿したものを再編集したものです。

 


 ノース・ウェスタン鉄道での郵便配達は、支線ごとの分担で行われている。まず、ヘンリーやヒロなどの本線の大型機関車が本土からの郵便物を運んでくる。

それをトーマスの支線の終点、ファークァー駅まで配達したり、受け取った郵便物をファークァーから本線の連絡駅まで運ぶのがパーシーの役目だった。



たまに自分の手に負えないほど忙しくなる時期がある。そんな時は、友達のトーマスやヘリコプターのハロルドが手伝ってくれる。

「君達のおかげで助かるよ。郵便配達は 好きだけど、時には 骨が折れるからね」

パーシーがこういうと、

「そりゃあ そうだろうさ。小柄な 君だけじゃ 時間通りに 終わらせられないもの」

と、トーマスがいい気になって言うのだった。

「よく言うよ」

でも、パーシーは、とくに気にしなかった。

しかし、ここ最近トーマスの様子が、とくにおかしい事を密かに危惧していた。



 トーマスも郵便配達は大好きな仕事のうちの一つだった。

とくに夜行列車。何故なら、真夜中から朝方に走っていると特別な気分になれるからだ。

トーマスが担う列車の始発はティッドマス港だった。

港ではロージーが、トーマスがいつでも出発できるように準備をしていた。



トーマスが「ピッピー!」と汽笛を鳴らしながら港へやってくると、ロージーも同じように「ピッピー!」と鳴らして郵便車を持ってきた。

「やあ、ロージー…」

トーマスは彼女の事が少し苦手だった。いつも自分の真似をするからだ。

しかしロージーは彼の事が好きだ。いつも彼のそばで手伝いをしたいと思っていた。

彼の真似をするのは、別にふざけているわけではない。ロージーはただ、彼のような役に立つ機関車に憧れているだけなのだ。

「あなたのために 客車と ブレーキ車を用意したわよ、トーマス」

「よせって、いつも言ってるのに。僕一人で できるんだから」

 


 翌朝のトーマスは、ものすごくイライラしていた。

ロージーにウンザリしているからではない。配達に支障をきたしたわけでもない。ただとにかくイライラしていた。

いつもはサムソンからお小言が来ると、皮肉を言って受け流すというのに、今日は何故だか、うっかり彼に反論してしまうほどだった。

トーマスがモタモタと、ゴードンの急行客車の準備を行っていた時だ。

ポイントで待たされたサムソンが怒ってこう言った。

「早く 進みたまえ。僕は、大事な任務を 任されているのであります」

「うるさいな」

むかっとした彼は思わず「ドン」と急行客車に体当たりした。入換えの最中に。

「「痛いじゃないか!」」

客車達が悲鳴を上げたが、幸いにも事故には至らなかった。

ところが、その十数分後にトラブルが起きた。

 

それは、ゴードンが彼の入換えた客車を牽いて丘を登っているときだった。

突然ブレーキがかかって立ち往生してしまったのだ。

せっかくノンストップで快調に走っていたというのに、不具合が起きたと知るや否やゴードンは不機嫌そうに唸った。

乗組員と乗客も同じ気持ちだった。

機関士と助士と車掌はゴードンと急行客車のボディを見て回った。

すると間もなく原因を突き止めた機関士がこう叫んだのだ。

「客車のブレーキが いかれたんだ。誰だ、こんな いたずらしたのは」

 


 その頃、事故を知らないトーマスは、支線でバーティーとの競争を楽しんでいた。

だが彼の娯楽も長くは続かなかった。

ドライオー駅では線路の点検をしていたトップハム・ハット卿が待っていた。

彼は駅長からゴードンの件の伝言を聞いて、カンカンに怒っている。

「トーマス。君は 全く 厄介なことをしてくれた。客車の入換えも ろくに できないのなら、暫くは エドワードのもとで 働きたまえ。それから、バーティーとの競争も やめるんだ」

叱られたトーマスは、ここでアニー達と切り離された。

彼は何が起きたのかわからないままエドワードの支線へ向かうことになったのだった。

 


 エドワードの支線での最初の仕事は、港に山のように溜まった屑鉄を、自分で入換えた貨車に詰め込み、スクラップ置き場へ運ぶことだった。

仲間達が協力してくれるものの、ぷんぷん怒ったトーマスに大きな機関車達がこぞって馬鹿にするので、彼はますます不機嫌になった。

「こんなの 納得いかないよ。僕は 支線を担う 優秀な機関車なのに、アニーとクララベルを置いて、『屑鉄の貨車を運べ』だなんて」

彼はティモシーとソルティーに当たり散らした。

「確かに 君は優秀かもしれないけど、ちょっと カリカリしすぎじゃない」

「ああ、まるで クランキーみたいだぞ。今のお前さんに必要なのは、睡眠だ。仕事が終わったら 今夜は ゆっくり休むといいさ」

 

しかし、ソルティーの思惑通りにはならなかった。夜の郵便配達をしなくてはならなくなったのだ。

やつれた顔のトーマスと、その機関士を見て、ロージーとパーシーは心配した。

「大丈夫? トーマス。私が代わりに やってあげましょうか」

ロージーが後ろから声をかけると、トーマスは怒ってこう言った。

「代わりにだって、冗談じゃない。これはトップハム・ハット卿が、ぼ・く・に、任せた仕事なんだ。配達まで 真似されるなんて たまったもんじゃないよ」

 


 次の朝、トーマスは支線に戻って始発列車の準備をした。

ところがいつまで経っても列車は駅から出発しないではないか。

乗客がざわつき始める。

「トーマス、起きて。出発の時間よ」

クララベルが慌てて大声で叫ぶも、トーマスは動かなかった。

 


それもそのはず、トーマスと彼の乗組員はすっかり疲れ果てて機関室の中で立ちながら熟睡していたのだ。

彼らが目を覚ますと、客車から切り離されて機関庫に戻っていた。

目の前には車掌車を牽いたスタンリーとトップハム・ハット卿が心配そうに立っている。

「ごめんなさい、ただいま出発します!」

トーマスが慌ててそう言ったが、トップハム・ハット卿は首を横に振って、彼らにこう話した。

「無理をするな。虫のいい話なのは 承知の上だが、君たちの様子を 察してあげられなかった私を どうか許しておくれ。君の仕事は、パーシーに任せてあるから、君たちは 今日から1週間、機関庫と自宅で ゆっくり休みなさい。寝不足になってまで頑張る事はない」

 


 それから数十分後、トップハム・ハット卿は自分のオフィスで代わりに郵便配達する機関車を誰にしようか考えていた。

すると、列車の仕事を終えたパーシーが、こう言った。

「昨日、ロージーが トーマスの代わりを やりたがってましたよ」

「それは本当かね」

早速、トップハム・ハット卿はロージーの元へやってきた。

彼はロージーにトーマスのことと郵便配達の代理が必要なことを話すと、彼女はトーマスの身を案じながら喜んで仕事を引き受けた。

 


 今ではトーマスが復帰した後も、ロージーが彼の分まで働いている。

以前まで我儘で気の短かったトーマスも、トップハム・ハット卿から貰った休暇ですっかり落ち着きを取り戻した。

トーマスは後に彼がロージーに託したことを知り、ちゃんと理解してくれたようだ。

ロージーがわからないことは友達のパーシーが優しく教えてくれる。

一緒に働く仲間は憧れのトーマスではなくパーシーとハロルドだが彼女は気にしない。

トーマスの手伝いができるって事に密かな幸せを感じているみたいだよ。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ヘンリー

●パーシー

●トビー

●ロージー

●ティモシー

●サムソン

ソルティー

●アニーとクララベル

●急行客車

●トップハム・ハット卿

●ゴードンの機関士

●ゴードン(not speak)

●スタンリー(not speak)

●バーティー(not speak)

●ハロルド(not speak)

●クランキー(not speak)

●ダック(cameo)

●メイビス(cameo)

●ウィンストン(cameo)

●バルジー(cameo)

バルストロード(cameo)

エドワード(mentioned)

●ヒロ(mentioned)

 

【あとがき】(※2017年の原文ママ)
 企画を立てた2015年当時は、やや無個性で決まった仕事の無いロージーに合う仕事内容について色々考えていたわけですが、タイミング悪かったですね。少し出が遅かった。
なぜなら今年、英・米・日などなどで間もなく放送されるであろうテレビ版最新作、第21シリーズで、ロージーがオーバーホールを受けて車体のカラーリングを変更し、新らたに仕事と自分の機関庫が与えられるからです。今のところ、Thomas & Friends公式Facebookや、『Journey Beyond Sodor』の予告編でのみ、その姿が確認できます。

 P&TIの時代設定はテレビ版(たぶん現シリーズだと60年代ぐらい)より未来を描いている為、このままでは矛盾が生じてしまいます。こちらとしては原作絵本だけでなくテレビ版にも合わせる方針でいるので、早くてシーズン「15」辺りからその設定を反映し、ボディの色も塗り替えようと思います。



 


※『きかんしゃトーマス』に関する著作権はすべてマテルに帰属します。