Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E04 タンクきかんしゃゴードン (再投稿版)

※この記事は、2017年5月28日に以前のブログに投稿したものを再編集したものです。

 


 蒸気機関車には大きく二つに分けて、本体に炭庫と水槽のあるタンク機関車と、炭水車と呼ばれる石炭と水だけを積んだ車両が接続されたテンダー式機関車の2種類がある。

コンパクトで小回りの利くタンク機関車は客車と貨車の入換えや、列車の補助が得意。
大きな車体のテンダー機関車は個体差はあるものの速く走れたり、長距離を楽に移動することが出来る。

それぞれ得意不得意が諸々あるが、人手が足りない時、トップハム・ハット卿は、どんな機関車にも入換え作業を行わせている。


 黄色いボディが鮮やかなテンダー式蒸気機関車モリーは、給炭所で働いている。

本土で採れた石炭を運んだり、空っぽの貨車を集めてくるのが彼女の仕事だ。

石炭は蒸気機関車にとって大事なものだ。だからこそ彼女は誇りを胸に仕事に取り組んでいるのだった。

 


しかし、モリーは少し問題を抱えていた。

以前まで、本土からやってきた"ローガン"という小型のタンク機関車が入換えを手伝っていたが、契約の期限が切れてローガンが本土へ帰ってしまったため、彼女一台で入換え作業もしなくてはならなかった。

モリーの炭水車は、車高がやや高いので、機関士は後ろがよく見えず、貨車を押してバックする時にしばしば車止めにぶつかってしまうのだった。

ガッシャーン!

「なんて無様なんだ」

その様子を見ていたゴードンが鼻で笑った。

 


 その夜、モリーがティッドマス機関庫で休んでいると、後からやってきたゴードンが、モリーを横目に見ながら彼女の昼の出来事について威張って話し始めた。

「みっともないったら ありゃしないぜ。テンダー機関車としての 心得が なってないね」

かわいそうに、気の小さいモリーはすっかりしょげてしまった。

「それなら、明日は 君が、お手本を見せたら どうです」

「入換え作業のね」

と、カレドニアの機関車ドナルドとダグラスがゴードンをからかうと、機関庫を訪れたトップハム・ハット卿も賛成した。

「それは いい。モリーの気持ちを学ぶ いい機会になるだろう。ゴードン、明日は 給炭所で 彼女と一緒に 働きなさい」

「でも、俺様みたいな 大きなテンダー機関車は 入換え作業なんて…」

「私の鉄道では、大型機関車も 挙って 入換えを行わせる。忘れたかね」

 


 翌朝、ゴードンは命令でしぶしぶモリーの給炭所へ向かった。急行列車はヘンリーが代わりに牽くことになった。

一方で、ナップフォード駅では箱型ディーゼル機関車のフィリップが操車場で元気に入換えを行っていた。すると、そこへパーシーが石の積まれた貨車を運んできた。

「おはよう、パーシー。その貨車 すっごく 重たいでしょ」

「うん、まあね。でも これくらい大したことないよ」

「すごいなー。ねえ、ねえ、その貨車 繋いでもいーい? 僕ちゃん、すっごく 力持ちだからさー、見せてあげるよ」

 


パーシーの機関士は作業員との了解を得て、フィリップに石の貨車を一台繋がせた。

そこへ、フィリップの目の前に、本線で急行列車を牽くヘンリーが現れた。

「あ、ヘンリーだ。おうい、待って。見てよ ホラ、僕ちゃん こ~んなに 力持ちなんだよー」

ナップフォード駅を通過していく彼の姿を見たフィリップは、自分の力強さを見せびらかそうと近寄った。

「待ってよ フィリップ、何処へ行くんだい」

だが、パーシーの声は彼の耳に届かず、そのまま本線をコロコロ走って行ってしまった。

「あーあー、チャーリーが運ぶ 貨車なのに…」

 


 その頃、給炭所ではモリーがゴードンにやるべきことを教えているところだった。

「それじゃあ 私は石炭を受け取りに行ってくるから、あなたは ここにある貨車を 作業員の指示に従って 入換えてちょうだい」

モリーが出ていくと、ゴードンは大きく溜息をつき、ぶつぶつ文句を言いながら仕事を始めた。

暫く作業を続けていると、一台のディーゼル機関車がクレーン車と建築資材の貨車を牽いて給炭所へやってきた。

「ノーマンじゃないか、ちょうどいいところに。俺の代わりに入換えをやってくれないか」

「悪いけど、それどころじゃないんだ。僕には僕の 用事があるからね」

それを聞いたゴードンはがっかりしたと同時に段々と苛立ってきた。

彼はバックしながら貨車に当たり散らし、ドスンと車止めにぶつかった。

幸いにもモリーのような脱線事故を起こすことは無かった。

「落ち着けって。モリーと同じミスを犯したら 示しがつかないだろう」

と、機関士が宥める。

だが、炭水車を繋ぐドローバーが外れかかっている事にゴードンも乗組員も気づかない。

 


ゴードンが不貞腐れているところを、お次はポーターが通り過ぎていく。

彼はゴードンが入換え作業をしているのを見て、クスクス笑った。

「おや、タンク機関車の 真似ごとかい。ふふふ」

ゴードンは今すぐにでも投げ出したい気持ちだった。

すると、今度はフィリップが通りかかった。

彼は気さくに声をかけた。

「やあ、ゴードンじゃないか。ヘンリー 見なかった? ここを通ってったはずなんだけど 見失っちゃって」

「そんなの 知らないね。俺様は 忙しいんだ。とっくに バローまで 行っちまったんじゃないのか」

ふとゴードンは閃いた。フィリップに手伝わせようと思ったのだ。

だが、彼が手伝いを求める間もなくフィリップは、

「そっかぁ。教えてくれてありがとう」

と、言い残してチャーリーの貨車を繋いだまま丘の方へ走って行ってしまった。

 


 あれから数時間経って昼下がり、ゴードンは嫌々と愚痴をこぼしながらも、すべての貨車を丁寧に入換えた。

「どんなもんだい。この 綺麗に並べられた 汚い貨車の列。これも 大型機関車としての嗜みってもんだ」

彼が自惚れていると、ちょうど本土からモリーが帰ってきた。

トップハム・ハット卿も一緒だった。

「よく頑張ったな、ゴードン。次は そこの石炭の貨車を ソドー整備工場まで運んでくれ」

「そんな。全く、なんてこった」

 


モリーには別のやるべき仕事が残されていた。

ゴードンは仕方なく石炭の貨車と連結し、整備工場に向けて出発した。

「こうなりゃ 意地でも 示しを付けてやる。俺様なら どんな仕事も 絶対にヘマはしないってことを モリーに見せつけてやるんだ」

と、周囲を警戒しながら意気込んだまではいいが、丘の頂上に石が転がっていることには気付かなかった。彼がやっと気づいた時にはもう遅い。

スピードを出したまま石に乗り上げたので車体が『ガコン』と大きく揺れた。

ゴードンは内心「しまった」と思ったが、脱線はせず、特に何かが起きたわけでもなかった。
だが、心なしか、お尻のあたりがスースーする。

 


下り坂に差し掛かった時、その原因が何なのかわかった。

ゴードンの目の前に、なんと線路脇を滑り落ちていく一台の炭水車が現れたのだ。

「なんだ、この スリムな炭水車は。まるで 俺様の…」

彼らが後ろを振り返ると、そこには炭庫の姿は無く、ニヤニヤと顔を輝かせる貨車の顔があった。

「炭水車がない!」

ゴードンは悲鳴を上げた。

丘の下り坂から、石炭を積んだいたずら貨車たちがすごい勢いで彼を追いかけてくる。

「「走れ!  走れ!  ぶっつぶせ!」」

今や彼らを制御できるのは誰もいない。最語尾の小さなブレーキ車だけではどうすることもできなかった。

 


機関士はゴードンを暴走する貨車となるべく同じ速度で走らせようとした。しかし、石炭と水を送る炭水車が無いのでどんどんスピードが落ちていく。

とうとう貨車たちはゴードンに追いついた。「ガッシャーン!」という音を立てて最前の貨車がぶつかる。

その衝撃で、貨車に積まれた石炭がいくつか飛び出し、偶然にもゴードンの罐に入った。

今度は助士が逆転機に飛びついた。ギアをバックに入れ、貨車の制御を図るつもりだ。

「よせ、水が無いんだ、このままじゃ ボイラーが爆発するぞ」

と、機関士。

「でも少しでも時間を稼がないと」

彼らは限界まで待った後、安全弁が熱くなる前に急いで蒸気を止めてブレーキをかけた。車掌もブレーキ車から制御を試みる。

「後は頼むぞ、ゴードン」

 


丘の麓の駅ではちょうどフィリップが到着したところだった。

「あーあ、すっかり見失っちゃった。もう 諦めよう。パーシーに この貨車返さないと…」

彼が後退しようとしたその時、後方から悲鳴と轟音が聞こえてきた。
「なんだろう」

と、フィリップが首をかしげる

それはゴードンだった。彼は必死で力みながらこちらへ突進してくるではないか。動輪や従輪からは火花が飛び散り、今にも車輪が平たくなりそうな勢いだ。

信号手は慌ててポイントを切り替えて彼らを3番線の線路に引き込む。

ゴードンはなおもブレーキをかけ続け、ちょうどプラットホームを過ぎる直前でようやく停止した。

機関士と助士が、息も絶え絶えにグッタリしながら機関室から外に出てきた。

「やあ、ゴードン。また会ったね。あれれ、ちょっと小さくなった?」

 


「まるでタンク機関車だね」

後から来たジェームスが、からかった。

彼の客車からトップハム・ハット卿が降りてきてこう言った。

「いったい 何事かね。それに どうしてフィリップが ここにいるんだ」

「すみません。丘の頂上に 石が転がっていたことに 気付かなくて、いつの間にか こんなことに…」

「線路に石だって」

ゴードンの話を聞いたトップハム・ハット卿はフィリップの方を見た。

「えーと、ごめんなさい。たぶん、全部 僕が 自分勝手に走り出したせいです…」

「そうか。君は その やんちゃ癖を 早いところ直さないといかんな。軽はずみな行動をとると どうなるか、しっかり考えてから動くように。ともかく、ゴードンを給炭所まで 運んでくれたまえ。このままでは 仕事にならんからな」

 


操車場でチェーンを受け取った後、方向転換をしたフィリップは、ゴードンに後ろ合わせで繋がれた。

ゴードンの乗組員は彼のブレーキを外し、フィリップの運転台に乗って給炭所へ戻ってきた。

給炭所ではモリーがノーマンの手伝いをしていた。彼女は変わり果てた姿のゴードンを見て心配した。

「まあ、ゴードン。一体何があったの」

「少し油断しちまってな。その、なんだ、お前をからかって悪かったよ」

ゴードンが謝ると、後からやってきたハット卿もゴードンに謝った。

「私も 君に大嫌いな仕事を 押し付けて すまなかった。モリーを 手伝わせる機関車を呼ぶまで、最初は ドナルドに 代理をさせようと思っていた。だが もう その必要は無くなった。今回の騒動で この仕事に相応しい機関車を 見つけられたからな」

そう言うと、トップハム・ハット卿はフィリップの方を見た。

「君は 明日から ここで働きなさい。仮の機関庫も 用意してある」

と、彼はノーマンのいる方を指差して話した。

それを聞いたフィリップは大喜び。

「わー、すごい。見てよ ゴードン、僕ちゃんの機関庫だって」

「わかったから 静かにしてくれ。体が揺れる」

「よし、では 今から ゴードンをソドー整備工場へ運びなさい。彼を困らせた 罰としてな」

と、加えてフィリップに命令した。

こうして工場に運ばれたゴードンは、ハット卿の指示でペンキも新しく塗り替えられたのだった。



ゴードンの炭水車はどうなったのかって?

どうやら丘から滑り落ち、木々をなぎ倒しながら、工事現場に転がって行ったようだ。

それも運よく現場に居合わせたホイールローダーのジャックとその仲間たちに保護されていた。

「誰か ネルソンを 呼んでくれ。トップハム・ハット卿の 元へ 届けなきゃ」

これなら、炭水車を心配する必要は無さそうだね。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ゴードン

●ジェームス

●パーシー

●ドナルドとダグラス

モリー

●ポーター

●ノーマン

●フィリップ

●いたずら貨車たち

●ジャック

●トップハム・ハット卿

●ヘンリー(not speak)

●チャーリー(not speak)

●オリバー(cameo)

●ゲイター(cameo)

●スタフォード(cameo)

●トード(cameo)

●オリバー(cameo)

●マックス(cameo)

●ローガン(mentioned)

●ネルソン(mentioned)

 

 

【あとがき】

 テレビシリーズでフィリップというキャラクターの姿が現れる前までは、「タイニー」という小さな箱型蒸気機関車オリキャラを登場させる予定でした。性格も見た目もフィリップによく似ていたので、S19放送前に発売された大図鑑でフィリップが掲載されていることに気付いた時は「また被った」とショックを受けました。(以前はフレデリックとサムソンの性格と立ち回りがダダ被りし、その前はコーヒー・ポットを重点に置いた長編も被りました(笑) )。しかし、当時からオリキャラを減らすつもりだったので結果としてタイミングは良好でした。
(※なお、その「タイニー」という自分のキャラクターは『P&TI』での出演は致しませんが、新たにPixivで連載中の『The Light Railway Controller's Diary』(TLRCD)で主人公として活躍します)。


ちなみに、モリーがクロスビーの給炭所で働くという設定は非公式です。
「給炭所で働く」という設定は公式ですが、何処の所在地か不明なのが現状です。

 


 


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