Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E20 まいごになったマーリン

 役割が決まって間もない頃、マーリンが正式にブリドリントンへ配達に出ることになった。

マーリンはとてもウキウキしていた。彼は冒険が大好きだった。でも、マーリンはまだ本島の反対側にあるブリドリントンへの行き先を知らない。

そこで、ハリケーンが先陣を切って鉄の貨車を運びながら、マーリンを案内することになった。そうすれば、マーリンは迷子にならなくて済むからだ。

フランキーは自分が配達に行けないことを悲しんだ。でも、忙しい製鋼所の中で、ここはリーダーとしてセオとレキシーの面倒を見ながら、きっちりとけじめを付けなければならない。

「心配ないさ。俺が すぐに マーリンに道を覚えさせるから」

「ああ。私が自立するのも そう遠くないだろう」

フランキーを慰めるハリケーンに続いて、マーリンが自信たっぷりに言った。

「幸運を祈るぜぇ、友よ!」

「迷子にならないでね。いつだってキミは 目移りするんだから」

と、レキシーがいつもと違った口調で応援し、セオが心配そうに忠告した。

「大丈夫さ。すぐに"ブリリデントン"までの道を覚えてみせるさ。私達は なんでも出来る!」

マーリンは自信たっぷりにハリケーンの貨車の後ろに着いていった。彼に景色を覚えてもらうため、連結はしなかった。

 

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間もなく、ハリケーン達は運河を通りかかった。

そこではヘンリーがいた。積荷を下ろす最中、ベレスフォードと愉快におしゃべりをしていた。

「おはよう、ハリケーン。それに マーリンも。配達 ご苦労様」

「やあ、なんだか 元気そうだな」

「ソドー島に 特別ゲストが やってくるんだ。その後 お客さんを 僕が運ぶ事になったのさ」

「それで、その特別ゲストって どんな奴なんだ」

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P&TI S14 E19 セオのだいしっぱい

 セオは、いくつもの歯車を回して走る、恥ずかしがり屋の小さなタンク機関車だ。

彼はレキシーやマーリンと一緒に実験場で実験用に造られたのだが、走る時に歯車が詰まって苦労するなど、実験は失敗として終わったがために、自信を持てずにいる。

セオはいつでも、自分は役立たずで何も出来ないのだと、固く心を閉ざしている。だけど、同時に仲間が静かに安全で暮らせることを願う、優しい機関車でもあった。

 

 ある日、トップハム・ハット卿の鉄道から製鋼所に連絡が入った。セメント工場では今、高炉スラグが大量に必要だというのだ。

スラグとは、鋼鉄を作るための鉄鉱石を溶かす過程で、不要になる物質だ。それはちょうど、製鋼所の外に山のように積み重なっていた。まさにうってつけの仕事だった。

機関車たちは、誰がソドー島に行くかで話し合っていた。列車を牽く機関車と入換え用の機関車が必要との注文だ。

「ちょうどいい機会だ。セオとレキシーもソナー島に 行くべきだ。トーマスに会える」

マーリンが先だって言った。

「ソドー島でしょ。でも、入換え作業は だだだ、誰がやるの」

「私とハリケーンが担おう」

みんなもそれに賛成した。

「そうと決まれば! セオ、貴方が先頭に立って出発よ! 私が貴方を押すから。さあさあ、全速前進だぜ!」

自身が無さそうなセオに、陽気なレキシーが彼の背中をコツンと押した。 

「その考えは良くないかも。牛よけが壊れちゃうよ」

「確かに、そーね」

 

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 そういうわけで、レキシーが先頭に、続いてセオが連なってスラグの積まれた貨車を引っ張ることになった。鉄が軋む音を響かせて、奇妙な列車が出発した。

彼らは製鋼所や実験場のそばから離れたことがないので、ソドー島どころか本線のルートを知らなかったが、主任とトップハム・ハット卿の連絡を聞きつけて、行く先々の信号手がポイントを切り替えてくれていた。

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P&TI S14 E18 マーリンのだいぼうけん

 ヘンリーは製鋼所の機関車たちとすっかり仲良しになっていた。特にセオとマーリンだ。

初めはその奇妙な姿に度胆を抜かされたが、すぐにセオたちの事を理解して打ち解けた。

「僕も最初は、思いもよらない形で 造られたんだ。それがまた ひどい出来でね。事故の後、トップハム・ハット卿と そのご友人が、クルーで造り直してくれたのさ」

と、ヘンリーが思い出話を彼らに話した。

「いいなあ。僕も造り直してもらいたい…かも」

「君は ちゃんと走れているじゃないか。僕は 高価な石炭じゃなきゃ、まともに走れないぐらい、困り者だったんだ。君が認めてもらえてる この環境が羨ましいよ」

「それにセオは親切だ。ソナー島でも 十分に活躍できるはずさ」

「そ、そうかな」

「きっとね。ソドー島に帰ったら、君たちのことをトップハム・ハット卿に紹介するよ」

彼らが話しているうちに貨物列車の準備が整い、ヘンリーはマーリンと一緒に嵐の後の製鋼所を出発したのだった。

「ソナー島に行けるだなんてワクワクするよ。ずっと昔から行ってみたかったんだ」

「そうなの。気に入ってくれるといいな」

 

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 旅の途中で、彼らはソドー島に一番近い、バロー駅に停車した。

ヘンリーはマーリンから離れて、一旦隣の待避線に入ると、彼にこう言った。

「この先がソドー島だよ。君は そのまま ブレンダムっていう港に行くんだ」

「でも、キミは どうするんだい」

「僕は ベレスフォードを助けに戻る。彼のことは任せて。それじゃ、ソドー島を楽しんで」

マーリンは「ポッポッポー!」と、ソドー島への思いを馳せて意気揚々とバロー駅を出発した。

独りになったヘンリーは、側線のクレーン車を押して、運河の方へ引き返して行った。

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P&TI S14 E17 やくたたずのきかんしゃ

 本土のとある製鋼所では、風変わりな機関車が5台働いている。

リーダーを務めるディーゼル機関車のフランキーは、彼女に忠実な大型タンク機関車ハリケーンと一緒に2台で製鋼所を切り盛りしていた。だが、すぐに手が回らなくなり、苦労が絶えないフランキーは陰謀をたて、訪れた機関車を働かせる強硬手段に出た。

ある時、本土に迷い込んだトーマスを連れ戻そうとしたジェームスが、彼らの罠にかかった。

トーマスは彼を救うべく、森の実験場で知り合った実験用の機関車たちとともに製鋼所を走り回り、奮闘の末にフランキーが本音を露わにした。

『ただ 手伝ってほしかっただけ。仕事が多すぎるから、あたしとハリケーンじゃ 手が足りなくて』

そこでトーマスはある提案をした。

働く場所がなくて役に立てない実験用の機関車たちは、彼からエールをもらい、製鋼所に雇ってもらったのだ。

それがセオ、レキシー、マーリンの3台だった。

 

 それは彼らが雇われて間もなくの出来事だ。

あれからフランキーは、気持ちよく配達に行けることを大いに楽しんでいた。

だが、仲間との衝突も絶えなかった。

ある朝、セオは貨車の入れ換えをするために、貨車を後ろ向きに引っ張っていた。

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P&TI S14 E16 さびしがりやのベレスフォード

 強い風が吹く、嵐の兆しが垣間見えるある日のこと、ソドー島は忙しい一日を迎えていた。

機関車達が客車に貨車に入換えとそれぞれ休む暇なく働き、そのために燃料を補給して仲良くおしゃべりしている中で、ヘンリーは駅でポツンと一台、トップハム・ハット卿の指示を待っていた。

何か特別な仕事を任されるのかもしれない。期待を胸に蒸気を吹き出している。

 

隣のホームでドナルドの旅客列車が出発すると、彼の後を追うかのように、トーマスがブレーキ車を牽いてヘンリーの傍で止まった。トップハム・ハット卿を乗せてきたのだ。

「知ってると思うが、メリックの部品が故障した。本土の製鋼所と 連絡をとって 発注しておいたのだが、そこの機関車が 諸事情で来られないそうだ。そこで ヘンリー、キミが 本土に行って 部品を持ってきてくれたまえ」

「わかりました」

と、ヘンリーがにっこりして答えた。トーマスもワクワクしている。

「製鋼所って あそこのことですよね。セオ達に また会いたいなあ。僕も行かせてください!」

でも、トップハム・ハット卿は首を横に振った。

「残念だが、部品の貨車を運ぶのは ヘンリーだけで十分だ。キミは いけないよ」

「なら、しょうがないか。ヘンリー、ベレスフォードっていう門番気取りのクレーンには気を付けてね」

「それから、ハリケーンとフランキーにもね」

と、そばにやってきたジェームスも彼に忠告した。

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P&TI S14 E15 ロージーのあこがれ

 ロージーは、ライラックのボディが鮮やかな、明るいタンク機関車だ。

車輪の数はトーマスと同じように6つで、トーマスと同じようなサイドタンクを持っていて、3つのドームは同じようにずんぐりしている。

そして何より彼女はトーマスが大好きだった。ロージーはよく好んで手伝ったり、真似をしたりした。

トーマスもロージーと仲良しだったが、真似をされるのはあまりいい気はしていなかった。

 

 ある朝、トーマスは腹を立てて給炭所にやってきた。彼は停止信号の前で止まると、「シューッ」と、勢いよくため息をついた。

「おはよう、トーマス。どうしたの」

フィリップが声をかけた。

「ロージーが しつこく真似するんだ。彼女が頑張ってるのは わかってるけど、毎日ニヤニヤして真似するもんだから、ムカムカしてしょうがないよ」

「ふむ、そういう問題の元とは 離れた方がいいよ」

トーマスはフィリップの助言で気が楽になった。でも、フィリップはロージーのことをよく知らなかったのだった。

 

 次の朝、トーマス達が出発の支度をしていると、ロージーと一緒にトップハム・ハット卿がファークァーの機関庫を訪ねた。トーマスたちに指示をするためだ。

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P&TI S14 E14 ビルとベンのとりかえっこ

 ビルとベンは、エドワードの支線の末端、陶土の採掘場で働く、小さな双子のタンク機関車だ。

2台とも、驚くほどそっくりなので、仲間は汽笛の音色と名札を見なければ見分けがつかない。そこで2台はよくそれを利用したイタズラを仕掛けるのだった。


 ある日、ビルとベンは港に居た。ちょうど陶土の貨車を運んだところだ。

するとそこに見慣れない機関車がいることに気がついた。大型機関車のハンクだ。

「見ろよ、ベン。最近生意気だって評判の機関車がいるぞ」

「ちょっと脅かして懲らしめてやろうか」

そこで双子は目配せをしてニヤリと笑った。

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