Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E10 ノーマンとデニス (再投稿版)

※この記事は、2018年6月4日に以前のブログで投稿したものを再編集したものです。

 


 操車場で働くデニスとノーマンは、双子の機械式ディーゼル機関車だ。

姿かたちはよく似ているが、何といっても、顔も性格もボディの色もまるで違うのが特徴的だろう。

灰色のボディのデニスは怠け者で、気分によっては時々仕事をほったらかしにすることがある。

対して、赤いノーマンは素直で働き者だが、よく故障する。彼にとって、それが悩みの種だった。

 


 ある忙しい日、ディーゼル整備工場が改修で使えなくなったので、修理が必要なディーゼル機関車はソドー整備工場で受けることになった。

ノーマンもその中の一台だった。2階から落ちて身体全体が壊れてしまっていたのだ。

ヘンリーによって貨車で運ばれた後、転車台で方向転換をしてもらっていると、双子のデニスがノーマンに会いに滑り込んできた。

「ノーマン、頼みがあるんだ。クロヴァンズ・ゲートから 粘板岩の貨車を本土まで運ぶ仕事を 代わりにやってくれないか。僕、頭が 痛いんだよう」

彼の言葉にノーマンは呆れてこう言った。

「君は 盲目か。君には 今、僕が完璧な状態に 見えるんだな」

「デニス。あなたが 任されたのでしょう。なら、たまには 自分で頑張ってみなさいよ」

と、メイビスも注意すると、デニスは言い訳を残してきまり悪そうに工場を去って行った。

「ちょっと 冗談を 言ってみただけだってば…」

 


「―ノーマンが壊れなければ 上手く行くと 思ったんだけどなあ」

クロヴァンズ・ゲート駅にやってきたデニスは貨車に連結しながらぶつくさ呟いた。

すると、隣のホームでお客を待っているサー・ハンデルが、呆れて冷やかに笑った。

「キミって ちっとも 進歩しないよね」

「お前が そんなだから、俺達 ディーゼル機関車が なめられるんだ」

と、そばを通りかかったディーゼルも怒ってデニスに言い放つ。

彼はバートと一緒に石炭の悪口をばらまきながら去って行った。

「あばよ、役立たずの怠け者」

「君たちも、さぼってるじゃないか」

デニスは2台の同僚に向かって言った。

 


 それから数日後の事、ノーマン達が修理を終えてディーゼル整備工場の機関庫へ帰ってきた。

ノーマンが働きたくてウズウズしながら朝の支度をしていると、トップハム・ハット卿が機関庫を訪れた。

「デニスにノーマン、君たちは 今日から一周間、ティッドマスで 入換え作業をしてくれたまえ」

「おまかせください」

「僕も一緒にですか…」

ノーマンは張り切って命令に従ったが、デニスは嫌そうに答えた。

その日も長距離を走りたくない気分だったのだ。

 


ヴィカーズタウンからティッドマスへは、文字通り島を横断しなければならないほど、かなりの距離がある。

そこで、デニスはいつもの仮病を使うことにした。

分岐点の前を特急列車が通り過ぎ、信号が青になってもデニスは動こうとしなかった。

「どうしよう、お腹が 痛くなっちゃった。これ以上 動けそうにないよう」

彼は淡々とした喋りでノーマンに言った。もちろん、ノーマンにはそれが嘘だということはわかっていた。

だが、デニスを押していかない事には先へ進めない。それにトップハム・ハット卿は彼にも仕事を頼んでいる。

「じゃあ、僕がティッドマスまで 押していこう。そのうち ハライタも 治るさ。絶対にね」

 


 ところが、ティッドマスに到着して早々、入換え作業を任されたデニスは、再び「おなかが痛いよう」と言い出すのだ。

機関士は近くにいた整備士を呼び出して点検をしたが「何も問題は無い」と判断されるや否や

デニスは焦ってこう口走った。

「そんな。このままじゃ ウソがばれ…、ば、ばれ…」

その言葉は、トーマスがはっきりと耳にしていた。

彼は入換え作業に励むノーマンに微笑みかけた後で、デニスの方を睨み付けた。

 


「これで 何度目かね。私にだって 考えがあるぞ。もし、その 見上げた根性を 明日も 貫き通すつもりなら、来週のうちに 送り返してしまうぞ」

翌朝の機関庫で、トップハム・ハット卿の言葉に、みんなはギョッと目を丸くした。

デニスが本土へ送り返されるとどうなるか、みんな知っていたからだ。

けれども、その場に居た全員が彼の身から出た錆だと思い、かける言葉もなく仕事に出て行った。

 


 デニス本人も焦りと危機感がないわけではなかった。

自分だって役に立つ機関車でいたい。でも、どうしても仕事をしたい気分になれないのだ。

操車場では、相変わらず動かす必要のある貨車が操車場に散りばめられているので、あちこち

線路がふさがれている。それをノーマンが一人で何とかしないといけないので、彼はとてもイライラしていた。

ノーマンがあくせく働いているそばで、デニスが機関庫でふて寝していると、始発列車から戻ってきたトーマスが心配そうに声をかけた。

「仕事しなくていいの。このままじゃ 送り返されるんだよ」

「放っておいてよ。どうせ 僕は 役立たずの機関車なんだ」

「そんなことないよ。君はやる気さえあればほかのどんな機関車よりも役に立つじゃないか」

そこへ、貨物の配達へ行く途中のシドニーも陽気に声をかけた。

「歌を 歌ったり、楽しい事を考えれば、あっという間に 仕事を 終わらせられるよ」

 


 しばらく経って、デニスは、ノーマンと一緒に貨物列車を波止場まで運ぶことになった。ところが、途中でまたしてもノーマンが故障して立ち往生してしまった。

「大変だ。僕一人じゃ この列車を 運べないよう。そうだ、誰かに 手伝ってもらおう」

デニスは重くて長い列車を這う這うの体で牽きながら辺りを見渡した。すると、隣の線路をジェームスが走ってくるのに気が付いた。

彼はジェームスと並んで走りながら声をかけた。

「お願い。貨物列車の仕事を 手伝ってくれないか」

しかし、彼はぷいと鼻を鳴らしてこう答えたのだった。

「お断りだね。僕は客車しか牽かないのさ」

 


次に、洗車場でハリーとバートに会った。彼らは暇そうだ。

「やあ、お二人とも。僕の列車を 手伝ってくれない」

「また お前か」

「もう その手には のらないぞ」

しかし、ハリーとバートは信じてくれなかった。いつものデニスの言い逃れだと思ったのだ。

「今度は 本当だよう。あ、ねえ、ゲイター…」

その後でも幾度か他の仲間たちとすれ違ったが、みんな忙しくて誰もデニスに手を貸してくれなかった。

デニスはすぐにでも諦めたかったが本当に苦しそうな兄弟を放っておくわけにはいかない。

そこで、ノーマンはある考えを閃いた。

「次の信号所まで 走って、僕を 置いて、先に 列車を届けるんだ」

「だめだよ、君が 先だ。だって君は、怠け者の僕を、最優先で 運んでくれただろう」

 


こうして、デニスは待避線に貨車を置くと、ノーマンだけを牽いてディーゼル整備工場へ向かった。

「怠け者のデニスが 来たぞ。また ノーマンに 押してもらってるな」

と、ヘンリーや他の機関車たちが駅を通り過ぎていくデニスをからかう。

でも隣のホームにいたサー・ハンデルだけは、デニスとノーマンのバッファーが重なり合っていないことをしっかりと確認していた。

「へーえ、やればできるじゃない」

彼は小さな声でそう呟いて駅を後にした。

 

 ノーマンをディーゼル整備工場まで送り終え、デニスはすぐに信号所の方へ引き返した。

彼はまだ働きたい気分になれず、本線を塞ぐ長蛇の列を改めて見て諦めそうになった。でも、友達のパクストンが快く協力してくれた。

その時、シドニーの言葉を思い出した。

「楽しい事、楽しい事。この貨車を運び終わったら、トップハム・ハット卿は 僕を 褒めてくれるかなあ…」

 


 シドニーの云った通りだった。歌を歌ったり、楽しい事を考えながら走っていたら、あっという間に目的地へ到達したのだ。

だが、当然、到着予定時刻を大幅に過ぎていた。

彼がティッドマスに戻ってきたときには、転車台でトップハム・ハット卿が腕を組んで待っていた。

「あーあ、これで 僕も スクラップ行きか」

でもトップハム・ハット卿は、デニスが停車すると、いつものように自分のスーツの襟をつかんで嬉しそうに微笑んだ。

「今日半日、骨の折れる仕事をよくぞやり遂げたな。ご褒美にペンキを塗り替えてやろう」

「じゃあ、僕は 送り返されないんですか」

「勿論だとも。明日からも、その調子で頑張ってくれるならな」

デニスは鼻高々に微笑んだ。

 

 あれからデニスは、本当に助けが必要なとき以外は誰かにすがることなく自分の仕事は自分でやり遂げるようになった。

相変わらず怠け癖は健在だが、ときどき、彼は壊れやすい兄弟を手伝う事もある。

だって、仲間やトップハム・ハット卿に褒められるのは、どんな休み時間より嬉しいもんね。

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ヘンリー

●ジェームス

ディーゼル

●メイビス

●ハリー

●バート

●デニス

●ノーマン

シドニー

●サー・ハンデル

●トップハム・ハット卿

●整備士

●ゲイター(not speak)

●パクストン(not speak)

●デリック(cameo)

●ビクター(cameo)

●ケイトリン(cameo)

●ダンカン(cameo)

●ケビン(cameo)

 

 

【あとがき】

 言うまでもなく、過去デニス主役回の焼き直しです。彼の性格を最大限に引き立たせるためには双子の兄弟ノーマンの存在が必要でした。反対にノーマンの個性を立たせるのにもデニスが必要です。

MR&Rのデニスを塗装でノーマンにしたのが3年前。お話を考えたのは4年くらい前だったと思います。(※2018年当時の話です)。

そんな月日が流れても未だに公式でノーマンの動きが無いのも意外です。(デニスが不人気の所為かも)。

いつか公式のデニスとノーマンのお話が観たいなーと思っているんですが、リブートの影響で余計にやらなそう。

 


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MR&R: モーター・ロード・アンド・レールの略。トラックマスターシリーズの前身で1992年から2008年まで販売されていた海外の(アジア市場を除く)プラレールトーマスシリーズ。製造及び販売元はプラレールと同じTOMY。

 

きかんしゃトーマス』に関する著作権はすべてマテルに帰属します。