Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E08 パーシーとディーゼルとかじ (再投稿版)

※この記事は、2017年12月29日に以前のブログで投稿したものを再編集したものです。

 


 機関車や自動車などを動かすには人の手だけでなく燃料も必要不可欠だ。

蒸気機関車やクレーン車の多くは石炭と水。重油や薪を焚いて動かすものもある。

ディーゼル機関車軽油、そして自動車はガソリンのほかに軽油重油なども使うなど、種類によって様々だ。

他にも電気や電池、蓄えられた蒸気で動く物も存在するが、それ以外の主な車両は体の中でそれらの動力源となるものを燃やして動いているのだ。

 


 ある日、パーシーはファークァー駅の構内で石炭を補給していた。

これから3本の貨物列車を牽かなくてはならない。

そのため、助士はバンカーにいつもより多く石炭を積み込んだ。

それも、石炭置き場の石炭がすべてなくなるほどだ。

 


それから数時間が経ち、パーシーは2つ目の仕事に取り掛かった。

家畜のえさにする干し草を市場まで運ぶのだ。

男たちが線路の脇にある草を刈っては束ねて貨車に積み込んでいく。

間もなく、貨車いっぱいに干し草が積み込まれた。

男たちは草が飛び散らないようにシートを被せる。

「よし、さあ、出発しよう」

と、機関士がパーシーの機関室扉をポンポンと優しく叩いた。

だが、パーシーが走り出そうと蒸気を噴き上げたその時、問題が起きた。

煙突から黒い煙と共に煤や火の粉が飛び散ったのだ。

一つの火の粉が、貨車のシートに転がった。たちまち炎が燃え広がる。

「火事だ、逃げろ!」

ブレーキ車から車掌が叫んだ。パーシーの機関士は蒸気を弱め、貨車の連結器を外してパーシーを安全な側線へ避難させた。

 


幸いにも、近くをパトロールしていたフリンがすぐに火事を消し止めた。

だが、貨車の荷台やブレーキ車、そして近くにあった木々が燃え移った炎で朽ち果ててしまった。

もちろん干し草も、シートもろとも消えたのを見てパーシーはショックだった。

トップハム・ハット卿はパーシーの石炭から原因を見出した。

彼が補給したのは発電機に使う為に取り置きされていた"褐炭"と呼ばれる質の悪い石炭だったのだ。

「次の仕事へ 行く前に クロスビーで 歴青炭に 変えなさい。このままでは 材木を運ぶことも できん」

「わかりました。騒ぎを起こしちゃって、すみません」

ちょうどそこへ、資材を受け取りに来ていたディーゼルが通りかかった。

彼はトップハム・ハット卿に注意を受けたパーシーを見てこう言った。

「どうやら 蒸気機関車は信頼できない事が 証明されたようだな」

ディーゼルの無礼な態度にパーシーは怒った。

「そんなことないよ」

「でも 今、火事を起こしただろう。蒸気機関車も 石炭も 引火する恐れのある 危険な道具なのさ。それに引き換え、俺達 ディーゼル機関車軽油は 煤や 火花を出さないし、安全で信頼できる。これを機に、あの ふとっちょ重役も 学ぶはずさ」

ディーゼルはケタケタ笑い、油の匂いをまき散らしながら出て行った。

反論しようとしたパーシーも、さすがに彼の言葉を聞いて段々と自信を失くしていってしまった。

 


 その後、パーシーは洗車場へ向かった。煤で汚れたボディを洗い流す為だ。

そこではウィフとスクラフも定期検査の為にボディを洗ってもらっていた。

悲しそうなパーシーに、スクラフが陽気に声をかけた。

「どうしたんだい、パーシー」

ディーゼルが、『蒸気機関車も 石炭も 引火させる 危険な道具だ』って言うんだ」

パーシーが今日あった出来事を説明すると、ウィフがこう言った。

「その考えは 極端だね。僕たちも 時々 紙くずや 汚れた衣服のゴミを運ぶことはあるけど、一度だって 引火したことは無いよ」

「たまたま 今日使った 石炭の質が 悪かっただけだよ。キミの所為じゃないさ。蒸気で火事が起こるなら、トビーはどうなるんだい」

と、スクラフも皮肉を交えながらフォローする。

それを聞いたパーシーは少しだけほっとしたのだった。

 


 一方、資材を運びにディーゼル整備工場へ戻ってきたディーゼルはある計画を実行するために仲間を呼び出した。

「パクストン、シドニー、ハリーにバート、出てこい!  革命の時間だ」

でも、そこに居たディーゼル機関車仲間はバートだけだった。

「他のみんなは いないぞ。何の用だ」

「今こそ 臭い蒸気機関車を 追っ払う時が来たのさ。この際 お前だけでもいい、革命を 起こそうぜ」

と、ディーゼルが悪そうに微笑んだ。

彼の頭には今、働くことよりも上に"追い払う"という単語が浮き上がっているようだ。

バートも仕事をほっぽりだして嬉々としてついて行ったので、ダグラスはカンカンだ。

「こら、どこへ行くんです。戻ってくるのです!」

 


 こうして、ディーゼルとバートは蒸気機関と石炭の起こすリスクについて抗議しながら島中を走り回った。

「石炭一個、火事の元。安心安全な軽油に今すぐとっかえろ!」

彼らは材木の貨車を運ぶパーシーの行く手を遮りながら抗議をゆっくりと続ける。

そんなディーゼルたちにベルとフリンが注意した。

「妨害は やめなさい」

「君たちの軽油だって 一歩間違えれば 火事の元だぞ」

しかしその言葉は声明を上げるディーゼルとバートの耳には届かなかった。

 


次にディーゼルたちはブレンダム港へやってきた。

みんなが楽しそうに集まる中を、彼らが抗議で邪魔をする。

「石炭反対! 火災を起こす蒸気機関を廃止しろー!」

「何を言ってるの。石炭が無くなったら 掘れないじゃない」

と、正面からマリオンが文句言い、

「俺だって 救助が出来なくなる」と、ロッキーも反発した。

「それなら 今すぐ 工場に行って、軽油燃焼式になればいいのさ。さあ、どいた どいた。安全性抜群、頼れるディーゼル機関車様御一行の お通りだぞ!」

ディーゼルは自分を見せつけるかのように乱暴にロッキーにぶつかった。

ロッキーが悲鳴を上げたのでビルとベンは仕方なく道を開けると、ディーゼルは勢いよく黒い煙と軽油の匂いをまき散らしながらすっ飛んで行った。

他の機関車やクレーンは彼らの動向にただただ呆気にとられるばかり。

 


各地で働く蒸気機関車や、彼らが好きな住民らがどんなに白い目を向けても、ディーゼルたちは活動をやめない。

しかし、彼らの活動は、必ずしも効果が無いわけではなかった。

中には抗議に賛成する人々も少なからず存在したのだ。

「この調子で 他の仲間も集めて、賛成者を 増やしていこうぜ」

ディーゼルがバートに耳打ちした。

彼らがナップフォード駅の操車場で骨休めしていると、そこへトップハム・ハット卿がやってきた。

ディーゼルは良いチャンスだと思ったが、彼が発言する前にトップハム・ハット卿が人差し指を向けてこう言った。

「こんなところで 何をしている、ディーゼル。資材は届けたのか」

「ええ、もちろんです。でも 工場の人手は 足りてるみたいでして…」

ディーゼルは慌てて嘘をついた。

トップハム・ハット卿は目を細めて彼を睨む。

ディーゼルが滝のように流れる冷や汗をかきだしたその瞬間、トップハム・ハット卿は再び口を開いた。

「そうか。では 次の仕事を頼むとしよう。アールズバーグ・ウェストに 軽油を届けてくれたまえ」

「で、で、でも、俺達にはまだ革命が…」

「馬鹿を言ってないで、早く仕事に戻りなさい」

ディーゼルは何も言えず、軽油運搬車の方へトボトボ歩きだした。

 


 アールズバーグ・ウェストでは、ディーゼル10とちっちゃな機関車たちが脱線した貨車と散らばった砂利を片付けているところだった。

ところが、ディーゼル10の燃料が切れてしまい、動けなくなっていたのだ。

「待機ってのは退屈だぜ」

彼の機関士は外に出て、周りの事など気にも留めず葉巻に着火し始めた。

「なんじゃこりゃあ。ひどい匂いだなあ」

漂う独特な煙に驚いて傍の線路からマイクが文句を言った。

 


それから40分後、ようやくディーゼル軽油運搬車を持ってきた。

だが、そこでまたしても問題が起きた。

彼は後でどんなスピーチをしようか考え込んでいたので、線路の状況をよく見ていなかったのだ。

そのまま走ったディーゼルはポイントからはみ出した鉄骨の貨車に気づかず軽油運搬車を衝突させてしまった。

ぶつかった運搬車は横倒しになり、その衝撃でタンクの蓋が開いて軽油が飛び出した。

更に悪いことに、それはディーゼル10の機関士が葉巻用のライターを着火させた瞬間に起きたのだ。

火が点けっぱなしの葉巻とライターがタンクから溢れる軽油の中へ落ちた。

その数分後に液体からはたちまち炎が立ち上がる。

「助けて」と、誰かが叫んだかと思うと、そこへ、ベルとフリンが勢いよく飛び入った。

ベルは動けなくなったディーゼル10を押し、フリンは駅の人々を誘導した。

「燃え移りやすい物を遠ざけるんだ」

フリンが叫ぶと、オリバーやマイク、レックス達は貨車たちを繋ぎ、避難させた。

ディーゼルも後退する。

 


 完全に消火するまで時間はかかったが、フリンとベルの活躍のおかげで幸い被害は出ず無事に消し止められた。レスキューセンターの消防士たちもこぼれた軽油を回収していく。

息を切らしながら現場を訪れたトップハム・ハット卿は、火事の発端となったディーゼル10の機関士に処分を命じた。

そして、デモを起こした挙句事故も引き起こしたディーゼルにも厳しく注意した。

「機械を動かす燃料には、必ず リスクが付き物だ。今回の事で、よく わかったろう」

重油や灯油、ガス、それから 僕ら自動車が使う ガソリンだって、一歩間違えれば 火事の元だよ」

フリンが言った。

「それから煙草もね」

「その通りだ、バート」

と、バートとレックスも付け加える。

するとディーゼルは反省しながらゴロゴロ唸ってこう言った。

「肝に銘じます。しかし、蒸気機関車は 俺たちと違って 煙突から 煤や火の粉を まき散らします。俺たちのリスクと比べ物になりませんよ」

「十分わかっているよ。だが、あれは石炭の質が悪いからだ。私も 今後、質の悪い石炭が 混ざらないよう、厳重に 手配するつもりだ。それで異論はないな」

 


 その夕方、ディーゼルはハット卿の罰で石炭をあちこちの支線の終点へ届けて回った。

勿論、きれいで質の良い石炭だ。

機関庫で石炭が届くのを待つ間パーシーから話をすべて聞いたトーマスは、ディーゼルを面白がってからかうのだった。

使い方さえ間違わなければ動力源として問題が無いことを知ったディーゼルは、二度と石炭について口出しをしなくなった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●パーシー

●ダグラス

●ウィフ

●スクラフ

●ベル

ディーゼル

●バート

●マリオン

●レックス

●マイク

●バート

●ロッキー

●フリン

●トップハム・ハット卿

●車掌

●パーシーの機関士

ディーゼル10の機関士

●トーマス(not speak)

●ビルとベン(not speak)

●オリバー(not speak)

ディーゼル10(not speak)

●ドナルド(cameo)

●アーサー(cameo)

●チャーリー(cameo)

●ポーター(cameo)

●スタフォード(cameo)

●ウィンストン(cameo)

●アニーとクララベル(cameo)

●スクラフィー(cameo)

●ブッチ(cameo)

●トビー(mentioned)

●ハリー(mentioned)

シドニー(mentioned)

●パクストン(mentioned)

 

【あとがき】
 燃料を焦点に置いた回でした。
蒸気機関車の燃料にもディーゼル機関車の燃料にもそれぞれ欠点があるよってのを書きたかったのですが、機械共々対等ではないのでなかなか納得のいくネタが浮かびませんでした。