Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E06 やっかいなディーゼルきかんしゃたち (再投稿版)

※この記事は、2017年8月22日に以前のブログに投稿したものを再編集したものです。

 


 デンとダートは、島の最東端、ヴィカーズタウンのディーゼル整備工場で働く2台のディーゼル機関車だ。

大きな車体のデンは努力家で工場のリーダーを務めている。

ダートは不器用で粗っぽいが彼の立派なアシスタント役だ。

2台は息ぴったりのコンビで、いつも一緒に仕事をしているが、時折離れて働くこともある。

そんな時は決まって互いに寂しがって心配したものだが、今では安定して出かけられる。

一日の終わりになればいつものように一緒に過ごせるとわかっているからだ。

 


 ある日の事、ディーゼル整備工場はいつもよりとても忙しかった。

工場内は修理が必要なディーゼル機関車に貨車、ありとあらゆる機械などでごった返している。デンは整備工場で見張りをし、ダートは部品積まれた貨車を操車場奥の倉庫や転炉から一生懸命運んでいる。

そこへ、また誰かが修理を求めてやってきた。デンは暖かく出迎えた。

「メイビスじゃないか、よく来たな」

だが、どの修理台も空いてるスペースは殆どなかった。

「すまないが、ノーマン、ハリー、シドニー、もう少し詰めてくれるか」

デンが指示を出すと、整備士が最語尾のノーマンの運転台を操作して後退させた。

「気を付けて。僕はブレーキの利きが悪いんだ」

事故が起きたのはノーマンが忠告した直後だった。彼はそのまま止まれず車止めに突っ込み、大きな音を立てて2階から転落したのだ。

「大丈夫でやんすか!」

ダートが慌てて駆け寄ろうとした。すると今度は転車台が動かなくなり、工場内は真っ暗になった。

ブレーカーが落ちたのだ。

 


 さっそくディーゼル整備工場で大幅な改修工事が始まった。

工場内での修理は出来ないのでデンとダートはノーマン達をビクターの所まで運んだ。

2台が戻ってきたときには既に工事は始まっていた。構内は機関車や貨車、機械でいっぱいだ。

分岐点の真上で漠然と立ちつくしていると隣からイライラした声が聞こえてきた。

「そこにおられたら通れませんよ」

「こりゃあ すまない、ドナルド」

デンは慌てて前進して線路を譲った。ダートも彼に合わせて前進する。

ところが、ダートは線路の先をよく確認せずに動き出したので、前方に置いてあった平台の貨車には気づかなかった。

彼は不注意に『ドスン』と貨車に体当たりした。直線上に隣り合う貨車が次々にぶつかり、終いはロッキーにぶつかった。まるで玉突きのように。

驚いたロッキーは持ち上げていた鉄骨を、ディーゼルのすぐ横に落っことしてしまった。

怪我人は無かったが危うく大事故になるところだ。ディーゼルはカンカンに怒った。

「お前たちがいると 仕事の妨げになるんだ。とっとと 失せろ、この役立たず」

 


先輩のディーゼルに追い払われたデンとダートは途方に暮れてただひたすら本線を走っていた。

あまりにもぼんやり走り続けていたので、いつの間にか島の反対側の操車場まで来ていた。

操車場ではトップハム・ハット卿がトーマスと話をしている。

「今日は トビーが工場で修理中なんだ。お客を運び終えたら 採石場へ 石を受け取ってくれたまえ。警官と監督にも 話をつけてある。安心して トビーの路線を 通りなさい」

「わかりました」

「あ、あの、ちょっと 待ってください!」

話を終えて立ち去ろうとするハット卿をデンが呼び止めた。

その言葉にトップハム・ハット卿が「なにかね」と優しく振り向いたが、デンは何から話し始めればいいかわからず、どもってしまった。

そんな相棒をダートがフォローする。

「あっしらに、何か仕事を与えてほしいんでやんす。工場は人手が充分で、あっしらは暇で暇で…」

するとトップハム・ハット卿は笑顔になってそれぞれに仕事を与えた。

「それは助かるよ」

 

2台に与えられた仕事は別々の内容だった。

デンはゴードンのために急行客屋を用意すること、ダートは牛乳の貨車を港まで運搬するのだ。

新しい仕事に備えて燃料を補給する最中、ダートは少し心配そうにささやいた。

「本当に大丈夫なんで?  こんな仕事、正直 役立たずのあっしらに 出来ると思えないでやんす」

「問題ないさ。ディーゼルにはそう云われたが、案外どうにかできるかもしれないぞ。それに、入換えのやり方はもうマスター済みだ。よーし、行くぞ」

補給が完了したデンは脇目も振らずに、きっぱりとした態度で客車に体当たりした。

客車達の悲鳴も聞かず威勢よく操車場を飛び出していくデンをダートは目を丸くして見送った。

 


 ティッドマス駅ではゴードンがイライラしながら待っていた。

客車を持ってきたのがデンとわかると同時に内心では驚いたがすぐにいつものように威張り散らした。

「いつまでモタモタするつもりだ。早く 連結してくれ」

「心配するな。時間通りに繋げてやるさ」

 


デンの仕事ぶりにゴードンは満足そうに微笑んだ。

ところが、旅の最中でトラブルが発生した。

突然客車のブレーキがかかって途中の駅のプラットホームを塞いでしまった。

「またか。なんてこった」

 


 一方、ダートは牛乳の配達に悪戦苦闘していた。

普段から敷地内の製鋼所と工場を貨車を牽いて行き来しているのだが、貨車を牽いて長距離を走るのは初めてだ。港まではそう遠くはないものの、ダートにとっては長い道のりなのだ。

せっかちな彼は不慣れな路線をあくせく走っては信号を見落としたり、何かとぶつかりそうになったり。

最もヒヤッとしたのは、トップハム・ハット卿を乗せたウィンストンが線路に割り込んできたときだ。

ブレーキをかけるのが遅れたが、幸いにも相手がすぐに後退しておかげで事故にはならなかった。

「気を付けるでやんす!」

 

なんとか無事に港に辿り着いたダートは安堵した。

だが、瓶のふたを開けた依頼人はぷんぷん怒っている。

「私は ミルクを頼んだはずなのですがね、バターではなくて」

「そんな。いつのまに、ミルクとバターが入れ替わったでやんす!?」

ショックを受けたダートに、ポーターとソルティーが話した。

「ミルクは、揺すると バターになるんだよ」

「そうならないためにも、まずは 安全運転を心がけようぜ、ご同輩」

 


 その頃、デンは駅でスタンリーと一緒に貨車の入換えをやっていた。

スタンリーがやり方を丁寧に教えてくれたので前よりも上手くなっている。

そこへ、整備工場から戻ってきたトビーが、デンに優しく声をかけた。

「やあ。こんなところで 何をしているの」

「工場は休みだから 入換えの仕事を 手伝っているのさ」

「ゴードンの客車も 君が入換えたのかい」

きょとんとした表情のデンに、トビーは一部始終を話した。

「客車の入換えは、貨車と違うんだ。コツは、優しく 丁寧に、だよ」

 


友達の教示を基に、デンは早速普通客車の入換え作業を行った。

「客車は 優しく 丁寧に…っと。入換え作業ってのは、随分と 奥が深いんだな」

アドバイスのおかげで最初の頃よりもずっと上手く入換えが出来たので、デンだけでなく作業員も客車も嬉しそうだ。

だけども、彼は少し工場が恋しくなり始めた。

 


 サドリーの操車場では、ダートがまた新たに運ぶ貨車を準備をしているところだった。

今度は揺れても大丈夫なように、ミルクではなく小麦粉の貨車を運ぶのだ。

ヒロが彼の面倒を見ていた。彼は貨車に詳しい。

だが、せっかちなダートは少し煙たがった。

「いたずら貨車には 礼儀正しく、優しくするんだ。そうすれば 気持ちよく運べるだろう」

「わかってるでやんすよ。ブレーキは外した、準備もばっちり、さあ 出発だ」

ところが、彼があまりにも早くスタートしたため、信号手はまだ準備が整っていない。ダートも、足元の線路を見落としていたので行く先をよく確認していなかった。

そして事故が起きた。

 


ドッシャーン! ガラガラ…

それは一瞬の出来事だった。脱線したダートは自分に何が起きたのかわからず、ただただ唖然としていた。

支線に出るはずが、車止めに直進して、目前にあった石の貨車に突っ込んだのだった。

いたずら貨車たちはそれをとてもおかしがった。

「「おばかで まぬけな チビディーゼル、慌てて 貨車に 突っ込んだ♪」」

ふざけて大声で歌う貨車たちにヒロが喝を入れた。

そして救助するために急いで操車場を飛び出していった。

「待っていなさい、すぐに ジュディとジェロームを呼んでくる」

 


 その日の午後、ダートはまた別の貨車を牽いて本線を走っていた。

すると隣の線路に客車を牽くデンが現れた。

「そっちは どうでやんすか」

「客車が 扱えるようになるまで、移動作業だとよ」

「あっしは ゴミの貨車を 集積所まで運ぶよう 命じられたでやんす」

2台は揃って深いため息をついた。

「この仕事が終わったら、えっと、その…」

「工場へ 戻りたいんでやんしょ。きっと、あっしらには 向いてないんでやんす」

 


 こうして一日だけの新しい仕事を終えた2台は、ディーゼル整備工場へと戻って行った。

ディーゼル達に会ったら謝るつもりでいたが、彼の姿はどこへやら。

居るのはカレドニア出身の双子の機関車のみ、せかせか働いているだけだった。

「ドナルド。ディーゼルは どうしたでやんす」

ダートが訊くと、ドナルドは口をとがらせてこう言った。

「『革命だー』とか なんだとか言って、出て行きましたよ。仕事をサボるなんて、本当に役立たずなディーゼルなのです」

「そうか。今朝は 邪魔をして すまなかった。それで、その、つまりだな…」

ディーゼルの代わりに、あっしらが 一緒に 働いてもいいでやんすか」

デンの言葉にダートが付け加えた。

するとドナルドは喜んで彼らを歓迎した。

「気にしていません。君たちが戻ってくれてよかったです。工場の事は、君たちが よく知ってますからね」

それを聞いたデンとダートは笑顔になった。

彼らは一日の終わりにようやく役に立つことが出来てとても嬉しかった。

 


おしまい

 


【物語の出演者】

●トーマス

●ゴードン

●トビー

●ドナルド

●スタンリー

●ヒロ

●ポーター

ディーゼル

ソルティー

●デン

●ダート

●ノーマン

●ウィンストン

●いたずら貨車

●ロッキー

●トップハム・ハット卿

○依頼主

●メイビス(not speak)

●ハリー(not speak)

シドニー(not speak)

エドワード(cameo)

●ゲイター(cameo)

●パクストン(cameo)

●フリン(cameo)

●クランキー(cameo)

●ビクター(mentioned)

●ジュディ(mentioned)

●ジェローム(mentioned)

 

【あとがき】

 デンとダート主役回でした。これも公式の第19シリーズが放送される前の2014年に考案したエピソードですが、『デンとダートはいいコンビ』の放送を受けて、その後日談としてシナリオを一部合わせて変えました。まあ2021年に再編集版を投稿する頃には言い訳でしかないんですけどね。

 E06〜10では「Troublesome Diesels」をテーマに、要は問題ばかりのディーゼル機関車(一部例外あり)を主軸に巻き起こるエピソードでまとめています。シーズン14で最も特徴的なのは、今回からE10『ノーマンとデニス』冒頭まで同じ時間軸の間に展開することです。そこも同時にお楽しみください。

 


 

※『きかんしゃトーマス』に関する著作権はすべてヒット・エンターテインメント及びマテルに帰属します。