Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S14 E21 せんろのうえのじゃり

 その日、ハーウィックの支線沿いは、とても忙しかった。

ジャックと建設現場の仲間達が新しい集落を作るために作業をしていた。

線路から海岸にかけて、その土地は砂利で埋め尽くされていたので、地面を整えるために取り除く必要があった。

ホイールローダーのジャック、ショベルカーのアルフィーとオリバーは、ダンプカーのマックスとモンティに砂利を積み込み、彼らはその砂利を土手の上からライアンの貨車に一気に落とす。

そうして貨車の中の砂利を全て工場へ運んで、建設に必要なセメントに変えるのだった。

 

集めた砂利をひとまず資材置き場へ運ぶのがライアンの役目だった。

彼が貨車に囲まれながらマックスが砂利を落とすのを待っている時、突然、ガシャン! と、何かがぶつかったかと思うと、気づいた時にはライアンは砂利に埋もれていた。

「おっと、間抜けな機関車だなあ」

後ろでディーゼル機関車のバートがライアンを小馬鹿にした。双子のハリーも一緒だった。

双子は悪ふざけで、砂利が降るタイミングで、彼を後ろから押したのだ。

「えっと…」

「なんだ、俺たちのせいだって言いたいのかよ。ひでぇ話だぜ」

「どんくさい自分の失敗を 押し付けるなんてな、お前達も そう思うだろ」

と、ハリーがマックス達に言ったが、誰もその様子を見ていなかったので返事はなかった。

双子は清々しそうにゲラゲラ笑いながら、そこを後にした。

ライアンの乗組員とジャック達は散らばった砂利を片付けなくてはならなかった。

 

 その後、ライアンは自分の機関庫でボディを洗ってもらっていた。

「一体何があったの」

と、タンク機関車のオリバーが、驚いて声をかけた。

「ああ、ハリーとバートに 後ろから押されてね。でも、大丈夫。なんてことないよ」

ライアンは穏便にすませたつもりだったが、オリバーは双子に腹を立てた。

 

オリバーはライアンと交代で砂利を集めることになっていた。

翌日、彼が砂利を受け取ろうとしているとき、ちょうど背後からハリーとバートがやってくるのが見えた。

オリバーは今がライアンの仇を討つチャンスだと思った。

モンティのベッセルが傾き、ハリーとバートが勢いをつけてエンジンを動かす音が響く。

その瞬間、オリバーはやにわに前進した。

 

砂利がバラバラと線路の上に降り注いだ。

ハリーとバートは驚いて目を丸く見開きながら、線路の上の砂利山に突っ込んだ。

ガッシャーン!!

双子は砂利に乗り上げて線路を外れた。

「ざまあみろ。悪戯しようとするから こうなるんだ」

彼はいい気味だと思った。だが、それは自分の思った以上に大きな事故だった。

 

「ちょっと、今すぐ この汚い砂利と鉄骨を退かしてちょうだい」

彼らの後ろで、郵便車を牽くデイジーが言った。

「昨日 せっかく 砂利を片付けたのに」

と、パワーショベルのオリバーもぷんぷん怒っている。

双子を懲らしめるだけのつもりが、双子を脱線させて複線を塞いでしまったのだった。

 

 間もなく、ライアンがジュディとジェロームを運んできて、事故の後片付けが行われた。

オリバー達が戻る頃、操車場ではトップハム・ハット卿が呆れて待っていた。

「おふざけには 可愛いものもあるが、これは 笑い事では済まされないぞ」

「ごめんなさい。僕が 浅はかでした。でも双子が僕やライアンを 砂利の上に押し出そうとしたんです」

「お前らが ぼさっとしてるからだ。俺たちは悪くない」

「いい加減にしないか。たとえ相手がどうだろうと、危害を加えていいことにはならない。それから過剰な仕返しもだ。オリバーも わかっているはずだ。ハリーとバートは、修理が済んだら、罰として砂利運びを手伝うように」

 

幸い、ハリーとバートは軽症だった。

ディーゼル整備工場で修理されてすぐにハーウィックの支線にやってきた。ライアンとオリバーを手伝うために。

「これが昨日の砂利だよ」

と、ライアンが側線から余分な貨車を双子に繋いだ。

双子とオリバーは互いに口を利かなかった。なかなか素直に謝れなかったのだ。

彼らはただ黙って砂利の貨車を運び始めた。

ハリーとバートが去っていった後、ライアンは空の貨車を取ってくるために操車場に戻っていった。

 

 ところが、その数分後、穏やかな空気が一変した。

「うわー、助けてー! ぶつかるー!」

オリバーは遠くの方から叫び声を耳にした。

なんと、ライアンが、砂利の貨車達に追いかけられているではないか。

いたずら貨車達は、丘の上で、バートの連結器を壊したのだ。

かわいそうに、ライアンは後退しながらパニックになっている。

 

『このままじゃ大事故になる。何かいい方法はないか』

オリバーがそう思った時、彼はそばのポイントと、砂利を持ってきたマックスが目に入った。

「ポイントを切り替えて、急いで!」

彼は作業員に向かって叫んだ。機関助士も、運転台を飛び降りて、側線のレバーに向かう。

ライアンが自分の方へ走ってくる。ちょうどマックスのベッセルが傾いたところで、オリバーは、再び、わざと後退した。

「ええい、ままよ!」

砂利が線路の上に降り注がれる。ライアンは、その砂利の山に乗り上げて止まった。

一方、砂利を積んだいたずら貨車達は、側線に入って、車止めに激突した。

衝撃で、昨日よりもたくさんの砂利が線路の上に降り注いだ。

 

「"二度あることは三度ある"とは、よく言ったものだな」

騒ぎを聞きつけて、トップハム・ハット卿が土手の前に訪れた。

「本当に ごめんなさい。ライアンと暴走列車を見た時、こうするしかないと思って、それで…」

「わかっているとも。キミの素早い判断のおかげで、大変なことになるのを防ぐことができたんだ。昨日の行いは とても褒められたものではなかったが、私は今日のキミを誇りに思うよ」

トップハム・ハット卿に褒められて、オリバーは照れくさそうに顔を赤らめた。

ライアンは砂利の上からオリバーに礼を言った。

ハリーとバートさえ、感心していた。

「お前らに意地悪して すまなかった。助かったぜ」

「どんくさいのは 俺たちの方だったよ」

「びっくり。あのハリーとバートが 自分から謝るなんて!」

と、ジャック。

 

その後、オリバーは工場に運ばれていく双子とライアンを見送り、事故の後片付けを申し訳なさそうに手伝った。

「何回も ごめんよ。僕が 君みたいなショベルを持ってたら、責任もって片づけるのに」

と、オリバーが、パワーショベルのオリバーに言った。

「これくらい朝飯前さ。僕は むしろ、君が砂利散布機だったら良いと思うな」

「どうしてだい」

「だって、砂利はレールの間に撒く物だろ? 上じゃなくってね」

2台のオリバーは大笑いした。

 

 あれから色々あったものの、地面は綺麗に整われ、セメントも十分集まった。

既に何軒かコテージが建っていて、クレーン車のケリーやミキサー車のパトリックたちが建設作業を手伝っていた。

「うわあ、すごい」

「きっと 素敵な集落になること 間違いなしだよ」

土手の向こう側からケリーが誇らしげに声をかけた。

ライアンは、この前の一件から、オリバーをヒーローだと思っている。いつか自分も素早い判断ができるヒーローになれたらいいなと、願うのだった。

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●オリバー

●ライアン

●デイジー

●ハリーとバート

●ジャック

●オリバー

●ケリー

●トップハム・ハット卿

アルフィー(not speak)

●マックスとモンティ(not speak)

●ウィンストン(cameo)

●スクラフィー(cameo)

●ジョージ(cameo)

バイロン(cameo)

●砂利散布機(mentioned)

●ジュディとジェローム(mentioned)

●パトリック(mentioned)

 

【あとがき】

 おおよそ4〜5年前、トラックマスターのマックス、ケリー、ハリーを購入した後、砂利を積んで適当に遊んでいた時に思いついたのが今回の物語です。ちょっと内容は薄いけど。写真は全て2017年7月20日に撮り溜めしておいたもので、おおよその文章も出来上がっていたため想定より早く投稿することができました。

P&TI Extraシリーズの17回目で「見栄っ張りなオリバー」をリメイクした理由が主にこの回をするためでした。ライアンがヒーローを目指すのはそう遠くないうちにやるんじゃないかなぁと思います。