Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-21 ふたごのバッシュとダッシュ(アレンジ)

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 バッシュとダッシュは、ソドー島から離れたミスティアイランドという小島で働く、双子のタンク機関車だ。

2台ともそっくりだが、よく見れば見分けが付けられるようになっている。2台はお互いの事をよく知っているので、お互いに何を言おうとしているか、よくわかっていた。

「おはよう、バッシュ。おはよう、ダッシュ

一緒に暮らす仲間のファーディナンドが、双子に挨拶をした。

「おはよう。おいらたち、今日から―」

「―ソドー島で 3日間 働くんだ」

と、バッシュの言葉にダッシュが続けて言った。

 

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 バッシュとダッシュミスティアイランドを発った頃、ソドー島のブレンダム港では、ビルとベンが悪戯をしていた。

彼らは自分たちがそっくりな事を活かして、ビリーとクランキーを困らせていた。

だが、ディーゼル機関車の警笛が聞こえたかと思うと、彼らは一目散に自分の職場へ戻って行った。

「悪いな、相棒。ビルとベンは いつも こうなんだ。水に流してやってくれ」

ソルティーが、ビリーに優しく声をかけた。

しかし、ビリーは機嫌を悪くした。

「双子ってのは 本当に 厄介なんだな」

 

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 暫くして、ブレンダム港の船着場から、バッシュとダッシュがやってきた。

「また双子か」

クランキーが呆れ交じりに鼻を鳴らすと、彼らは首をかしげた。

「おいらたち、なにか―」「―したかなぁ」 

「まあ その、少し揉め事が あったのさ。お前さん達は 何も気にするな」

と、ソルティー。

その隣では、トップハム・ハット卿が嬉しそうに待っていた。

「よく来たな。早速だが、キミ達には これから ファークァーの採石場に 行ってもらう。バッシュ、キミは トビーと一緒に 働きなさい」

ところが、彼はダッシュの方を指さして話していた。

「あの、おいらは ダッシュです。トップハム・ハット卿」

トップハム・ハット卿は「しまった」と言い、焦って指を引っ込めた。一旦咳払いすると、改めて言い直した。

「失敬。では、ダッシュは トビーと一緒に、貨車を 駅まで運ぶんだ。バッシュは メイビスの指示に 従ってくれたまえ。だが、くれぐれも 悪ふざけは するんじゃないぞ」

「はい、もちろんです」

「一生懸命 がんばります」

と、双子は意気込みを表した。

 

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 バッシュは前にも訪れた事があるので、道をよく知っていた。にこにこしながらダッシュを連れて採石場にやってきた。

そこではトビーとメイビスが彼らを待っていた。

「久しぶりだね、バッシュ。ダッシュ採石場へ ようこそ」

「来てくれて うれしいわ」

彼らは双子を歓迎したが、ビリーだけは違った。彼は不機嫌そうにバッシュとダッシュの両方をにらんでいる。

 

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仕事が始まると、トビーがダッシュを貨車の方へ案内した。

石の積まれた貨車を運べるだけ繋いだダッシュは、メイビスと一緒に楽しくおしゃべりをしながら、駅の方へと走って行った。

バッシュは、ビリーと一緒に貨車の入換えだ。

彼はうきうきしていたが、ビリーの背中は不機嫌そうに見えた。

 

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作業場に着いたビリーは、バッシュに嫌々やり方を教えた。彼はそれ以上話したく無さそうだったが、バッシュはお喋りをしたくて堪らなかった。

「アッシュ、空の貨車を こっちに持ってきて。おいらが 動かすから」

「おいらは バッシュだよ、ビリー。君は いつも ここで 働いているの」

「手伝いに来ただけ。いつもは 操車場で 貨車の入換えをしてる」

「そうなんだ。おいらは、ミスティアイランドで 樹を 集めてるんだ。面白いよ。ビリーも 今度 遊びに おいでよ」

「遊ぶだって。お断りだね。君も バッシュも、あの双子と 変わらないんだな」

「バッシュは おいら。車輪が灰色でしょ。オレンジ色の方が ダッシュだよ。わかりやすいでしょ」

彼は丁寧に教えたつもりだったが、ビリーは突然怒鳴りだした。

「どっちも同じだろう。ボディの色は あべこべで ややこしいし、君たちの お喋りにも うんざりだね。もう、おいらに 話しかけるな」

バッシュは恐くなって、すっかり黙り込んでしまった。そして仕事が終わるまで一度も声を掛けなかった。

 

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仕事が終わって双子が採石場を後にした後も、ビリーはまだ、ぷんぷんしていた。

「そんなに怒って、どうしたんだい」

トビーが尋ねると、ビリーがぶっきらぼうに言った。

「双子ってのは 本当に厄介だよ。あいつら、名札が 無いのを いいことに、おいらを 惑わしてくるんだ。きっと 悪戯好きなんだ。港に居たやつらも そうだったから、間違いないよ!」

「バッシュとダッシュは 悪戯なんかしないわ。ダッシュなんて 一生懸命 仕事に励んでいたもの。ビルとベンとは 大違いよ」

と、メイビスが言った。

「彼らの考える事は 変わってるけど、働き者さ。ビリー、もしかして 早とちりしたんじゃないのかい」

と、トビー。

彼らの話を聞いて、ビリーはバッシュとお喋りをしたときの事を思い返した。

「ああっ、たいへん。おいら、つい カッとなって…」

「もし 失礼な事を 言ったのなら、謝らなくちゃね」

 

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 一方、バッシュとダッシュはナップフォードの機関庫に行く途中、今日あった出来事を話し合っていた。

「―それで、ビリーに 怒られちゃったんだ。おいら達、ややこしいのかな」

「どうだろう。ビリーが 馬鹿なだけだと思うけど」

「でもさ、あの トップハム・ハット卿だって、今朝 間違えただろう?」

双子はどうしたらいいか考え込んだ。

すると、分岐点で聞き慣れた声がした。ジェームスが仲間に自分のボディを見せびらかしていた。

「見てくれ、パーシー。僕の立派な 赤いボディ、素敵だろう。ソドー整備工場は 本当に 素晴らしい仕事をしてくれるよ!」

その時、双子は、ある事を同時に閃いた。

「おいらが考えてる事、君にも わかるよね」

 

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 バッシュとダッシュは、ナップフォードへは行かず、ソドー整備工場にやってきた。

そこにはケビンが居た。

「こんにちは。バッシュとダッシュ。今日は どんな御用ですか」

「頼みが あるんだ」

「おいら達のボディを―」

 

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 次の日の朝、ファークァーの機関庫でトーマスたちが目覚めると、陽気な声が響いた。

「やあ、みんな。おはよう!」

「おはよう、バッシュにダッ… あれ! どうしたの、その恰好!」

なんと、双子はボディをそれぞれ別の色に塗り替えてもらっていたのだ。バッシュは全面的に灰色、ダッシュはオレンジ色で統一されている。

「どうだい、わかりやすいだろう」

「これなら誰も 間違えないよね」

「確かに わかりやすいね。ビリーと 話をしたのかい」

「してないよ、トビー」

 

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それから、彼らは再び採石場で働いた。

車体の色は、メイビスには好評だった。彼らは嬉しくて微笑んだ。

だが、その日や、次の日にはビリーが居なかった。昨日のうちにナップフォードの操車場へ戻っていたからだ。

 

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 3日間の仕事を終えたバッシュとダッシュは、満足そうにミスティアイランドへ帰って行った。そして友達のファーディナンドを驚かそうと、製材所の下から汽笛を鳴らして声をかけた。

「やあ、ただいま」

ダッシュが陽気に挨拶をした。ところが、ファーディナンドは返事をしなかった。

「聴こえなかったのかな。それとも―」

「―イメージチェンジに 驚いた?」

「その通り。だって それ、すごく地味だぞ」

ファーディナンドの答えに、バッシュとダッシュも思わず目を丸くした。

「何が あったの。俺は、前のボディの方が おしゃれだと思うけど」

「色が ややこしいって 怒られたんだよ。だったら―」

「―色を戻してもらって、おいらが バッシュと同じ色に…」

「もっと わかりにくいぞ。ほら、スタフォードみたいに 番号や 名札を 付けるとか」

「それだ!」

 

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 数日後、バッシュとダッシュはトップハム・ハット卿とロウハム・ハット卿に許可を貰って、再びソドー整備工場を訪れた。

ボディの色を元に戻してもらったうえ、金色に輝く名札と車体番号を付けてもらった。

ビクターも満足そうに微笑んだ。

「やっぱり君達は こうでなくては。私からも 言わせてくれ。似合っているとな」

「ありがとう、ビクター」

「それに ケビンと 作業員さんも」

 

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 それからというもの、もう誰もバッシュとダッシュを間違えなくなった。

あのうるさかったビリーも、彼らと和解をした。

判らなくなったときは、金色で目立つ名札と番号を見ればいいもんね。

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ジェームス

●トビー

●ビリー

●ビクター

●バッシュとダッシュ

ファーディナンド

●メイビス

ソルティー

●ケビン

●クランキー

●トップハム・ハット卿

●パーシー(not speak)

●ビルとベン(not speak)

●ダック(cameo)

●ポーター(cameo)

ヘンリエッタ(cameo)

●ジャック(cameo)

アルフィー(cameo)

●オリバー(cameo)

●マックス(cameo)

バイロン(cameo)

●ネッド(cameo)

●スタフォード(mentioned)

●ロウハム・ハット卿(mentioned)

 

 

【あとがき】

 Exエピソード第21回は、2014年4月頃に投稿したPToS S13 E01より『双子のバッシュとダッシュ』でした。

私は問題なく双子を顔と色で区別できるのですが、見分けがつかないという人が多く、説明を付けるため、2014年に物語を書きました。まあ、その頃には海外ファンからの厚い要望で本編に登場しなくなりましたけどね。

 ここから第26回までのExエピソードは、リメイクと云うよりも、キャラクターと物語に大幅に手を加えた、アレンジの扱いになります。案は良かったけどキャラの扱いが不十分、あるいはオリキャラが先導していた話を中心に改変していきます。主役がオリキャラとしての話が好きだった方には、申し訳ありませんが、「PToS」と区切った創作とは、別の世界線と考えて頂ければと思います。

今回のお話はアイディアが個人的に好きだったので、再び執筆いたしました。

 

念のため、読者の為に以下のコーナーを設けてみました。

~バッシュとダッシュの見分け方~

【バッシュ(Bash)】

・ボイラー、車輪、窓枠が灰色

・ドーム、運転台がオレンジ色

・眉毛は内側程太く、目との隙間がある

 

ダッシュ(Dash)】

・ボイラー、車輪、窓枠がオレンジ色

・ドーム、運転台が灰色

・眉毛は全体的に細く、目に近い

・頬にそばかすがある