Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-20 すばらしきてつどう(リメイク)

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 よく晴れたある朝の事、トーマスはアニーとクララベルを牽いて支線を走っていた。

最初の停車駅では、バスのバーティーが彼を待っていた。話をしたくてウズウズしているようだ。

「おはよう、トーマス。ねえ、聞いたかい。それがさ…」

「やあ、トーマス」

口を挟んだのは、ヘリコプターのハロルドだった。飛行場で点検をしてもらっていた。

「特別な お客さんたちが 島に来られているそうだよ。午後には僕が、空の旅へ お連れするんだ」

「へえ。僕の列車にも 乗ってくれるといいなぁ」

と、トーマスが言った。

「僕が教えるはずだったのに」

と、バーティーが、むっとして言った。

 

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 暫くして、トーマスは、別の停車駅に停まった。

駅のすぐそばで、トップハム・ハット卿とノランビー伯爵が、何人かの人たちと、何やら話をしていた。

「ねえ。あの人たちは、誰かな」

トーマスがパーシーに尋ねた。

「わからないよ。でも きっと 偉い人さ。彼らと 話が出来るんだもん」

パーシーがこう答えると、トーマスは先ほどハロルドが言っていたことを思い出した。

「あの人たちが、特別な お客さんかな」

でも、トーマスには、それがただの一般人にしか見えなかった。

 

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 その後で、トップハム・ハット卿の命令で、機関車たちの大多数がティッドマス機関庫に集められた。こういう時は、決まって重要な知らせがあるのだ。

機関車達はワクワクしながら、トップハム・ハット卿が付き人に支えられながら、ダックの上に乗るのを待った。

「何が始まるんだろう」

と、エドワードが言った。

「きっと昨日の事だね」

「それ、何の話だい」

パーシーがトビーに返事をする間もなく、トップハム・ハット卿が口を開いた。

「機関車と客車の諸君に 良い知らせだ。今朝、外国のテレビ関係者が、遥々、私の鉄道を訪ねてきた。私は この鉄道の素晴らしさを、もっと 世界中に 知ってもらいたいと 思っているんだ。そこでだ。明後日、ドキュメント番組の撮影が 行われることになったのだ」

「やった!」「いいぞー!」

機関車達は、嬉しさのあまり、一斉に汽笛と歓声を上げた。

トップハム・ハット卿が大きな声を上げて彼らを落ち着かせた。

「静かに! 私が選んだ機関車から 順番に 支線の撮影をしてもらうが、全員、明日の夕方までに、ピカピカに 磨いてもらうように。だが、決して 調子に乗るんじゃないぞ」

 

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 この嬉しい知らせは、島のあちこちで話題になった。

「この島に、また テレビ局が 来られるそうですよ」

ドナルドが、登山鉄道の機関車達に言った。

「僕たちの事も、紹介してくれるかな」

「念のため 僕らも ピカピカに磨いてもらおう!」

と、カルディーとアラリックが、興奮気味に言った。

 

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ミスティアイランドにまで、この話題が広がった。スタフォードが持ち込んだのだ。

「聞いたかい。ソドー島で ドキュメンタリー番組が 撮影されるんだって」

ところが、木を運ぶ機関車たちは、浮かない顔だ。

「そりゃよかったね。だけど、どうせ、おいら達を見に来ないよ」

「恐がって、誰も近寄ろうとしないんだ」

「その通り。全然 お客さんが来ないぞ」

と、バッシュとダッシュ、そしてファーディナンドが、悲しげに言った。

「あらら。でも、それなら レスキューセンターに 来ればいいよ。きっと 君達も紹介してもらえるって」

 

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 一方で、ディーゼルは、特に大はりきりだった。

彼は仲間を機関庫に集めて作戦会議を開いた。

「今こそ 俺たちが 役に立つ機関車ってことを テレビ局に 見せつける時だぜ」

ハリーとバートは大いに賛成したが、シドニーは心配だった。

「面白そうだね。でも、大丈夫かな」

 

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 次の日、仕事を終えた機関車たちは、操車場や洗車場でボディを洗ってもらった。

トーマス達はソドー整備工場でペンキを塗り直してもらっているところだった。

トップハム・ハット卿の指示で、それぞれに役割が決まったので、その話題で持ちきりだ。

「ねえ、トーマス。明日の仕事は 何だと思う?」

ジェームスが嬉々として尋ねると、トーマスはわざとらしく答えた。

「わっからないなー。ああ、急行を引っ張るのかい」

「ブッブー! なんと テレビ局の人を乗せて 本線を走るんだよ。きっと、僕の素敵な赤いボディの おかげだろうねぇ」

「失敗しなきゃいいがな」

と、ゴードンが鼻で笑ったが、ジェームスは無視した。

「僕も、明日の午前中に 彼らを乗せるんだ。自慢の支線を 世界中の人に紹介できるぞ。エドワードは 明日何するの」

トーマスが訊ねると、エドワードは、

「僕は ヴィカーズタウンで サムソンを手伝うんだ」

と、小恥ずかしそうに答えた。

「ふうん、残念だね。自分の支線も 紹介させてもらえないなんて。俺は かっこいいところを 撮ってもらう予定だけどね」

フレデリックの素気ない言葉にエドワードは悲しくなったが、ビクターが励ました。

「気にするな。友達を助ける事の方が 立派な仕事だ。それに私の整備工場も 取材に来ないそうだ」

トーマスとジェームスも彼らに同情した。

 

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 翌朝、機関車たちはティッドマス駅に集合した。トップハム・ハット卿とノランビー伯爵のスピーチと一緒に、集合映像を撮るためだった。

みんなカメラに映りたくてウズウズしている。でも、急行列車の出発を待つゴードンがブツブツ文句を言っていた。

「どうして 俺様の急行列車じゃなく、トーマスとジェームスなんだ」

「きっと 君じゃあ 速すぎて、カメラが追いつかないんだよ」

ヘンリーがゴードンをからかった。

「トップハム・ハット卿が 言ってたでしょう。撮影の順番が あるのよ。明日は 私が乗せて、登山鉄道を案内するの。その次は スタフォード。そしてダックよ」

と、エミリーが指摘した。すると、遠くから聞き慣れた汽笛が聞こえた。

「あ、来たぞ」

フレデリックが言った。

テレビ局の人々を乗せたヒロの列車が颯爽と駅に滑り込むと、みんなは一斉に汽笛と警笛を鳴らした。

あまりに突然だったので、トップハム・ハット卿は慌てた。

「うるさいぞ。静かにしたまえ!」

「いいんですよ。元気な機関車たちが観られて嬉しいです」

と、リポーターが笑顔で言った。

 

一通りスピーチが終わると、テレビ局の人達はアニーとクララベルに乗り込んだ。

トーマスは元気に「ピッピー!」と、汽笛を鳴らして自分の支線へ向かった。

 

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 その頃、ヴィカーズタウンの操車場では、ディーゼルが計画を進めていた。

彼の命令で、シドニー、ハリーとバートが、操車場の貨車を集めて回っている。

サムソンが運ぶ予定だった貨車までも。

「僕の貨車を どうする気だ、ディーゼル!」

「一緒に運んでってやるから 安心しろよ」

と、ハリーが、サムソンに言った。

だが、シドニーはまだ心配そうだった。

「でも、本当に 大丈夫かなぁ。こんなに いっぱい繋いで」

「いいか、俺たち ディーゼル機関車は 力持ちなんだ。どんなに沢山でも 牽けるってことを見せてやる 絶好の機会だぜ。わかったら、ありったけの貨車を 持ってこい」

 

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 一方、トーマスは意気揚々と自分の支線を走っていた。

だが、嬉しいひと時も束の間、トンネル前の駅で、ジェームスが彼を待っていた。

「交代の時間だよ。さあ、赤いボディが美しい、この僕の列車に お乗りくださ~い!」

「そんな、不公平だよ。まだ 僕の駅を 紹介してないのに」

ぶつぶつ文句を言うトーマスの前で、テレビ局の人々はアニーとクララベルから、ジェームスの牽く特別な客車に乗り込んだ。

 

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 ゴードンの丘では、ディーゼルが長~い列車を牽いて登っているところだった。

「へっへっへ、もうすぐテレビ局の列車が通過する頃だ。この俺の力強さを見せつける時が…」

そうは言うものの、50両の重みに、ディーゼルは苦戦していた。

彼のエンジンからゼェゼェと酷い音を立てている。

その想定をして、後ろからシドニーとハリーとバートに押してもらっていたのだが、列車はあまりに長いので、彼らからは先頭の状況がよく見えない。

下り坂に差し掛かった時、ディーゼルが叫んだ。

「お前たち、ブレーキをかけてくれ」

だが、シドニー達にその言葉は聞こえず、ディーゼルは下り坂で貨車に押された。

 

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「お、おい。やめろってば」

ディーゼルはこの時初めて、無謀な挑戦をしたことに気が付いた。しかしもう遅い。ふいに連結器が壊れて、重い貨車たちが、ディーゼルの緩衝器にガツンガツンと、ぶつかった。

そして、真ん中の貨車が突然脱線して、何台かが隣の線路を転がり始めたのだ。その先には操車場に向かう途中のフレデリックが居た。

「危ないぞ!」

ディーゼルが叫んだが、フレデリックが速度を上げる前に、貨車が衝突して脱線してしまった。

「うわあ、そんなー!」

ディーゼルも、後続の貨車に押され、カーブでフレデリックと並んで横倒しになった。

ガッシャーン!! ガラガラガラ…

 

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幸い、けが人は出なかったが、大惨事になってしまった。後ろで押していたシドニーとハリーとバートは、衝突音を聞くや否や、ヴィカーズタウンへと逃げて行った。

「助けてくれ」

2台の機関車が悲鳴を上げた。

そこへ、ヴィカーズタウンの操車場に向かうエドワードが通りかかった。

彼は中腹の惨状を見て仰天した。

「たいへんだ。もうすぐ テレビ局が来る。このままだと 悪い結果になるぞ」

エドワードには仕事があったが、この状況を放っておくわけにはいかない。

「こんな時、トーマスなら…」

彼は何をすべきか一瞬で考えると、自分の駅に戻って行った。

 

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麓の駅では、すでにジェームスの列車が止まっているところだった。どうやら水を補給しているようだ。

エドワードはバックで操車場に駆け込むと、作業員に向かってこう叫んだ。

「急いで! 丘で 列車が脱線しているんです。緊急事態だ!」

「全車両停止!」

信号手が電話で他の信号所に連絡した。

作業員がクレーン車に乗り込む間、何も知らないジェームスは、「ポッポー!」と、汽笛を鳴らして駅を出て行った。

「準備万端! 完璧な番組に なるよう、がんばるぞ」

 

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陽気に鼻歌を歌っていたジェームスは、徐行を示す黄色い旗を目にした。

間もなく現場を前にすると、彼の顔はゴードンのボディのように一瞬にして青ざめた。

「なんだい、こりゃ! こんなところ、とても見せられないよ」

と、その時だ。隣の線路を、何かが全速力でジェームスの傍を通り抜けて行った。

それは、クレーン車を運ぶエドワードの姿だった。

彼が無我夢中で走る姿を、テレビ局のカメラがしっかり捉えていた。

脱線現場の前にやってくると、エドワードはぴたりと止まり、クレーン車の操縦席から作業員がわらわらと出てきて、復旧作業を始めた。

幸い、貨車の壁に隠れて、ディーゼルフレデリックの姿はカメラに映らなかったが、彼らはとても惨めだった。

 

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ジェームスはそんな光景を見て安心して、ゆっくり進んだ。

ところが、今度は別の問題が起きた。ジェームスの列車が突然動かなくなった。

レールに飛び散ったディーゼル油で、車輪が滑って前に進めないのだ。

「どうしよう、砂を詰めるのを忘れてた!」

「僕が助けるよ」

ジェームスの後ろで、エドワードが言った。彼はジェームスの線路に入ると、そっと近づいて列車を押し始めた。滑り止めの砂を撒きながら進む。

「がんばれ、いけるぞ、もう ちょっとだ」

この様子も、カメラマンが窓から顔を出して納めていたが、エドワードもジェームスも気が付かなかった。それほど必死だったからだ。

鉄道に悪いイメージを持たせてはいけない、そんな気持ちでいっぱいだった。

そしてついに、ジェームスが頂上に上る事が出来た。

「ふう、助かった。あ、ありがとう、エドワード」

ジェームスは申し訳なさそうにお礼を言うと、顔を真っ赤にして丘を下って行った。

エドワードも、ほっと一安心だ。

 

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 翌日、エドワードが操車場で休んでいると、エミリーが客車を牽いてやってきた。

なんと、例のテレビ局の人達と、トップハム・ハット卿を連れてきたのだ。

驚いた顔のエドワードを前に、カメラマンがお礼を言った。

「こんにちは。君が 昨日の ヒーローだね。おかげで いい番組が 作れそうだ。感謝するよ」

「感謝だなんて、とんでもない。僕は ただ、仲間の手助けをしただけですから」

「どんな時も助け合う、まさに素晴らしき鉄道ですね」

と、リポーターが言った。それから彼女は、トップハム・ハット卿の許可を得て、レスキューセンターとダックの支線の撮影をする前に、エドワードの支線を紹介すると約束した。

自分の頑張りと鉄道が評価されて、エドワードは、幸せな気持ちでいっぱいだった。

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

エドワード

●ヘンリー

●ゴードン

●ジェームス

●パーシー

●トビー

●ドナルド

●エミリー

●ビクター

●バッシュとダッシュ

ファーディナンド

●サムソン

フレデリック

ディーゼル

●ハリー

シドニー

●スタフォード

●カルディー

●アラリック

●バーティー

●ハロルド

●トップハム・ハット卿

●信号手

○リポーター

○カメラマン

●ダック(not speak)

●ヒロ(not speak)

●バート(not speak)

●アニーとクララベル(not speak)

●ノランビー伯爵(not speak)

●ダグラス(cameo)

●ロージー(cameo)

●ボコ(cameo)

●デニス(cameo)

●ノーマン(cameo)

●パクストン(cameo)

●ヘクター(cameo)

●ブッチ(cameo)

●ケビン(cameo)

 

 

【あとがき】

 リメイク第20弾は2016年頃投稿のP&TI S13 E28『素晴らしき鉄道』でした。

オリジナル版では、テレビ局が嫌いなオリキャラがクレーン車を運ぶ予定でしたが、オリキャラが島のヒーローと称えられるのは如何な物かと思い、急きょエドワードに変更して、何ヵ月か後に投稿しました。なので、内容はオリジナル版とほとんど変えていません。その代わり、様々なキャラクターに喋る機会を与えました。楽しんで頂ければ嬉しいです。

 せっかくなので、原作出版から75周年を迎える今年の5月12日に投稿しようかと考えていましたが、その直前に、心身ともに調子をを崩してしまいました。でも、まだ5月なのでセーフ。な、セーフと言え。

 

 そうそう、過去作リメイクは20回で終わるとかつて言いましたが、実はあと6話追加しました。次回からはリメイクではなく、元々オリキャラが中心に展開していた物語に、大幅に手を加えた「アレンジ」の扱いとなります。お楽しみに。