Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-19 ちいさなきゅうせいしゅ(リメイク)

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 ブレンダム港は、いつも活気にあふれている。

機関車や船が行き来するだけでなく、クレーンのクランキーが船から荷降ろししたり、ソルティーとポーターが貨物列車を牽く機関車たちのために、せかせかと入換え作業をしたりと、とても賑やかな場所だ。

でも時々、何も仕事がないときがある。

その日も港は静かで、彼らは暇を持て余していた。

だが、ティッドマスの港は忙しいようだった。

そこで、ポーターと、クレーン機関車のハーヴィーが、トップハム・ハット卿に呼び出された。彼らが協力して、そこで仕事をするのだ。

 

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ポーターは、トーマスよりも小さなタンク機関車だった。だけど、やることはよくわかっているので、仕事を覚えるのが早く、乱雑に散らばる貨車を、素早く集めて入換え作業に励んでいた。

ところが、作業員の手信号を確認しながら引き込んでいると、そこで邪魔が入った。

「おや、こんなところで "ちんまりラクダ"が、日向ぼっこしているぞ」

波止場へ出てきたヘンリーが、ポーターのドームを見て、からかった。

「そこを どけ、チビ。ご立派な 急行用 大型機関車様の お通りだ」

と、修復を終えたばかりのゴードンが、大威張りで言った。

ラクダは 砂漠に いるべきだね」

と、どさくさに紛れてジェームスも、からかう。

そんな彼らの威張りようを見て、ダックは怒った。

「やめろよ。ポーターは 立派な機関車だぞ。ラクダなんかじゃない」

「いいのさ ダック。ラクダって あだ名で呼ばれるのも 悪くないもの。今、どくから」

そう言って目配せをしたポーターは、速やかに線路を切り替えた。

ゴードン達は威張りちらして駅へ向かっていった。

 

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するとそこへ、後ろの方から、張りのない声が聞こえた。

ハーヴィーだ。彼は、大きな貨車に挟まれて、身動きが取れなくなっている。

「ピッピー! 誰か助けて。この貨車たち、すっごく重いんだ」

「今 行くよ」

ポーターは、すぐに線路を変えて、重い貨車と連結すると、あっという間に定位置まで移動させた。

戻ってきたポーターに、ハーヴィーが歓声を上げた。

「ありがとう。すごいじゃないか。君って 僕みたいに小さいけど、すごく力持ちだね」

「ふふ、それほどでもないさ」

ポーターは控えめに答えた。

 

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 その頃、駅ではトーマスが本線の列車の準備をしているところだった。

港からゴードンとヘンリーがホームへ入ってきた。

「俺様の急行客車は 何処だ」

「僕の隣だけど、自分で取りに行ったら、どう」

トーマスは、ゴードンが小回りが利かない事をわかっている上で、からかった。

「冗談じゃない。のろまな列車しか 牽けないくせに、生意気だぞ」

「どんなに小さくても、大きなことが やれるんだ。忘れちゃった?」

「へー、そいつは驚いた。じゃあ君は、20台の貨車を一台で運べるのかい」

と、ヘンリーが意地悪く口を挟んだ。

「ら、楽勝さ」

トーマスは、自信がなさそうに答えた。

 

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 トーマスは大きな機関車たちの威圧から逃げるように、貨車を傍の港へと運んだ。

そこでは巨大な機関車が、貨車が繋がれるのを待っていた。

「おはよう、マードック。なんだか 気分が悪そうだけど、大丈夫かい」

「ああ、この前の事故で、よろよろするんだよ」

「あとで ビクターとケビンに 診てもらいなよ」

トーマスが優しく目配せをした。彼はマードックが好きだった。マードックは静かだし、威張ったりしないからだ。

 

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マードックには、何台も連なった長く重い貨物列車を、本土へ運ぶ仕事があった。

彼が静けさの中をシュッシュッと、軽快に走っていると、突然、ガコガコン! という叩きつけるような異音が響いたかと思うと、彼の炭水車が傾いたのだった。

機関士はブレーキをかけて、線路の後方を見て叫んだ。

「車輪が取れてる!」

「うそだろう。走る事が 出来ないじゃないか」

 

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 間もなく、エドワードとヘンリーとロッキーが復旧作業にやってきた。

マードックは惨めだった。10個の動輪は無事なのに、炭水車の車輪が外れただけで走れなくなってしまったからだ。

「ソドー整備工場で、確かめてもらおう。頼めるかい、シドニー

「お任せください。すぐに 整備工場へ 向かいます」

炭水車が載せられた平台貨車に連結されたシドニーが陽気に言った。

「信用ならないのだが…」

平台貨車の後ろに繋がれたマードックが、心配そうにつぶやいた。

シドニーは彼の巨体を持ち運べるほど力持ちだったが、忘れっぽいからだ。

 

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 シドニーが出発した後で、ヘンリーがマードックの貨車を運ぶことになった。

ところが、彼もまた、調子が悪いようだった。ゴードンの丘を登って中腹まで来たところで、どうにも力が入らない。車輪は空回りし始めた。

「お腹が痛くなってきたなぁ」

そこへ、ゴードンが客車を牽いて隣の線路を走ってきた。

「ねえ、この急行列車を、運んでくれないかな」

「いくら急行でも 貨車は お断りだね」

ゴードンはヘンリーの列車を見て言った。

「やっぱり だめか」

 

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ヘンリーはやむを得ず、ウェルズワース駅まで戻ってきた。

彼の機関助士が電話を借りようとした時、あらかた作業を終えたポーターとハーヴィーが通りかかった。

「どうしたんだい」

しょげた顔のヘンリーに、ポーターが声をかけた。

マードックの列車を 引き継ぐことになったのに、調子が 出ないんだ。こんなんじゃあ、また トップハム・ハット卿を 困らせちゃうよ」

その時、ハーヴィーが何かを閃いた。

「それなら、ポーターが引っ張ってみたら、どうだろう」

「君が、この列車を? そんなの 火を見るより明らかじゃないか」

ポーターはヘンリーの云うとおりだと思った。

「手伝いたいけど、僕の仕事は、入換え作業だ。列車は務まるかな」

「できるとも。だって 君は 力持ちだ。重い貨車たちだって 素早く 移動させられるほどにね」

「そこまで言うなら…」

 

戸惑っていても仕方がない、そう思ったポーターは、動けないヘンリーを側線に移すと、貨物列車と連結した。

そしてドームから砂を出し、撒かれたレールをガッチリ踏みしめて、彼は力強くピストンを動かした。すると、列車はたちまちポーターと一緒に走り出したのだ。

「いいぞ、すごいや、すごいや!」

操車場から、ハーヴィーが歓声を上げた。

案外、楽そうに牽いて行くポーターに、ヘンリーも驚いて目を丸くした。

 

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 ポーターは、そのままゆっくりと長い列車を牽いて田園地帯を走る。

彼が海の歌を歌うので、貨車たちも楽しそうについていく。

だが、せっかくの調子も、すぐに台無しになった。ゴードンの丘に辿り着いた時には、彼の速度が遅くなっていき、列車は再び丘の中腹で止まってしまった。

砂をどんなに撒いても進まない。列車に比べて、小さなポーターが、あまりにも軽すぎるのだ。

「ありゃ。一人で出たのは 失敗だったかな。ハーヴィーに 押してもらえば 良かった」

車掌は危険を知らせるために、麓まで降りて行き、線路に信号雷管を仕掛けた。

 

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 間もなく、麓から破裂音が響き渡り、客車を牽いたジェームスが、のろのろやってきた。彼はブレーキ車の前で止まると、不機嫌そうに汽笛を鳴らした。

「何をしてるんだい。こんな 重い貨車、ラクダくんには 無理でしょ」

「ごめんよ。でも、前に進めないんだ。頂上まで押してくれないかい」

と、ポーターが中腹から汽笛で応えた。

ジェームスは何か言い返そうとしたが、前に線路の落ち葉で滑って立ち往生した事を思い出した。

「しょうがないなあ。わかったよ、もう」

彼は仕方なく後ろへ下がり、丘をゆっくりと下ってきたポーターの列車を押し始めた。

「ボッボー! 準備は いいよ」

「ポッポー! さあ、押すぞ。しっかりレールに しがみついていろよ」

2台は力を合わせて、レールに砂を撒いて登り始めた。

ゆっくり、ゆっくり。力強く。

「わあ、さすが ジェームス。ボッボー! ありがとう!」

頂上に辿り着くと、ポーターは彼にお礼を言って、再び慎重に丘を下って行った。

ジェームスは頂上から、ポーターを見送った。うららかにもうもうと蒸気を上げて、長い列車を牽く彼の姿に、最初は見下していたジェームスも、内心感心していた。

 

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隣の線路に移ったジェームスに追い越されたが、ポーターは、また歌いながら、石橋を渡り、途中の駅で水を飲み、谷を越えて、ようやく列車は整備工場の前までたどり着いたのだった。

駅では、トーマスとトップハム・ハット卿が彼を待っていた。

「やったね、ポーター! 小さくても大きなことが出来るって、みんなに証明したんだ」

と、トーマスが歓声を上げた。

駅の構内にいたピーター・サム、チャーリー、そしてビリーも、一緒に汽笛を鳴らして彼を祝福した。

「よく ここまで 頑張ったね。私は ジェームスの列車から 見ていたぞ。君は 本当に役に立つ機関車だよ」

「ありがとうございます。時間は かかってしまいましたけど、僕も 正直驚いてます」

「ここから先は、この ボコに 任せなさい。君は 港に戻って、疲れを 癒してきなさい。明日は ご褒美に ペンキを塗り替えてあげよう」

 

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 家路を急ぐさなか、空はもう夕暮れで真っ赤に染まっていた。

くたくたになっていたポーターは、途中、ウェルズワース駅で給水した。

すると、そこにはまだヘンリーの姿があった。停車位置も、疑わしげな彼の表情も、出発の時と変わっていない。

「もう 列車は 届けたのかい」

「ああ。ちょっと大変だったけど、長距離を走れて楽しかったよ。ところで、どうして君は、まだ そこにいるのかな」

「工場のディーゼルが来れないんだって。…えっと、その、君を疑って悪かったよ。もし よかったら、僕を 助けてくれないか?」

ヘンリーは恐る恐るポーターの目を見た。

でもポーターは朗らかな表情で、こう答えたのだった。

「もちろんさ」

 

こうして、水を補給し終わったポーターは、ヘンリーに連結して彼を引っ張って行った。ヘンリーは、自分が運べなかった列車を牽いた後で、懸命に自分を運ぶ小さなポーターの姿を見て、とても申し訳ない気持ちになった。

「今朝は、君を馬鹿にして ごめんね」

「気にしない、気にしない。助け合ったり、許し合うのが 友達ってもんでしょ」

ポーターが言うと、2台は微笑みあった。

それからは、ヘンリーもジェームスも、もうポーターをからかったりはしない。

この後でごーどんとも絡むことになるのだが、それはまた別の機会に話す事にしよう。

 

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 一方、シドニーは、自分の機関庫へ帰ってきた。マードックを連れて。

「よーし、任務完了! 整備工場に 到着です」

「やれやれ。シドニーに任せるんじゃなかったよ」

かわいそうなマードック

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ヘンリー

●ゴードン

●ジェームス

●ダック

●ハーヴィー

マードック

●ポーター

シドニー

●トップハム・ハット卿

マードックの機関士

エドワード(not speak)

●ビリー(not speak)

●チャーリー(not speak)

●ボコ(not speak)

ソルティー(not speak)

●ピーター・サム(not speak)

●ロッキー(not speak)

●クランキー(not speak)

●エミリー(cameo)

●デニス(cameo)

●デン(cameo)

●ノーマン(cameo)

●パクストン(cameo)

●ウィンストン(cameo)

●アニーとクララベル(cameo)

●ジャック(cameo)

アルフィー(cameo)

●ネルソン(cameo)

●ビクター(mentioned)

●ワークスディーゼル(mentioned)

●ケビン(mentioned)

 

 

【あとがき】

 リメイク第19弾は2016年4~5月頃に投稿したP&TI S13 E26『小さな救世主』でした。

2015年12月、プラレールマードックの車輪ゴムを取り換えようとした時に、炭水車の車輪を本気で失くしました。それをネタに出来上がったのが、本作のオリジナル版でした。車輪は2020年現在もまだ行方不明です。

 ポーターはキャラクター的に弱くて主人公に向かないと思っていたので、当時は主役回を頼まれても断っていましたが、その辺りでしたかね、機関車の性能を調べるようになったのは。2016年の時点で、一番牽引力が強いタンク機関車キャラクターがポーターと云う事に気づきました。それも僅差でヘンリーに勝っていました。そこで救世主をポーターに選択したわけです。(なお重量は軽い模様)。

機関車の牽引力一覧につきましては、後日Z-KEN's Waste Dumpの方で投稿しようと思いますので、そちらの方を参考にしてください。