Z-KEN's P&TI Studio

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-16 たんすいしゃをつかまえろ(リメイク)

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 スティーブンは、ソドー島で最も古い、小さなテンダー式蒸気機関車だ。

いつもはウルフステッド城で観光客の案内をしているが、そうでない時はアフタヌーンティーの材料を酪農場から運ぶなどの雑用にもいそしんでいる。

ある日、彼はグリンの代わりにお城で出たゴミを、ゴミの集積場へ運ぶ仕事を任された。ゴミの貨車は重いので、グリンは丘を下るときは用心するように言ったが、スティーブンは貨車に押されながら出るスピードを楽しんでいた。

「ロケットの お通りだぞー!」 

ティーブンは、自分の軽さなら横転する心配はないだろうと思っていた。

ところが、丘を下って間もなく、別の問題が発生した。ポイントを通過するとき、なにやら「ボキッ」と音を立てたかと思うと、急に背中がスースーしたのだ。

 

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機関助士が石炭を罐に入れようと後ろを振り向いた時、異変に気が付いた。なんと、スティーブンの炭水車とゴミの貨車が別の線路を走っているではないか。ポイントの故障と共に、炭水車が外れたのだ。

炭水車は貨車の重みと勾配で、隣の線路を走るスティーブンを追い抜いて行く。彼は慌てて炭水車を止めようと速度を上げようとしたが、そこで止まってしまった。

罐の火は燃えていたが、走るのに必要な水が送られてこないからだ。

機関士は仕方なく火を弱めた。

「どうしよう。これでは 集積場どころか、城にも 戻れない」

 

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そこへ、貨物列車を牽くトーマスが通りかかった。彼はスティーブンの変わり果てた姿を見て驚いた。

「ひょっとして、タンク機関車の 真似をしているの」

「からかっている場合じゃないんだよ。私の炭水車が、貨車と一緒に 暴走してしまったんだ。頼む、私の炭水車を捕まえて、持ってきてくれないか」

トーマスは事態を深刻に受け止め、勢いよく走りだした。

「僕に 任せて」 

 

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 トーマスは貨車を牽いたまま、風の鳴く森を進んでいった。

すると、スティーブンの炭水車が、ゴミの貨車たちに押されて走っているのが見えた。

炭水車たちはコロコロと線路を進み続ける。ブレーキ車には車掌が同乗していたが、揺られながら昼寝をしていて、状況に気付いていなかった。

「あれだな。よーし、止めてやるぞ」

 と、トーマス。彼は炭水車の前に回って列車を止めようと試みた。だが、線路はじきに単線になっていき、前へ出られない。

 

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ウルフステッドの支線を謎の列車が暴走していると、次から次へ連絡を受け取った、各地の信号手たちは、列車を側線へ引き込もうとしたが、どこも貨車か機関車が止まっていて引き込むことが出来ない。

とうとう炭水車は、本線へと出て行った。信号手の誤った判断によって、列車はスペンサーの前を横切って行く。慌てて急ブレーキをかけたスペンサーは、ぎょっとした。 

 

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2つの隣の線路を進む炭水列車を見送ったスペンサーが再出発しようとすると、今度はトーマスが大慌てで線路に割り込んできて、待機を余儀なくされた。

「ごめん、スペンサー。通るよ!」

「まったく、今日は 一体 どうなっているんだ」 

彼は文句を言った。

 

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炭水列車はゴードンの丘へと差し掛かった。丘の中腹まで駆け上がると、一旦暴走が止まった。でも、当然傾斜しているのだから、それだけでは済まなかった。

自動ブレーキの無い貨車たちは、今度は後ろ向きで走り出したのだ。丘を駆け下り、どんどん加速していく。それも、さっきより速く。

列車はガタゴトと揺れ動き、小さなゴミを散らかして、トーマスの隣を横切った。それでも車掌はまだ居眠りの真っ最中。 

 

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 その頃、本土から特急列車のコナーとケイトリンが、ウルフステッド城を目指して支線へ入り込んだところだった。

「今日こそは 僕が勝つぞ」

と、コナー。2台は競争で全速力で走っていた。と、その時、彼は線路に"異物"がある事を素早く察知して、急ブレーキをかけて止まった。隣の線路を走っていたケイトリンはそのまま進んだ。

「お先に失礼~」

と、ケイトリン。

異物とは、炭水車を失くして線路に座り込んでいたスティーブンだった。

「邪魔をして すまない。私を お城まで 運んでくれないか」

「うん、まあ、いいよ」

コナーは我慢強かった。彼はスカートが壊れないように、そっとスティーブンを押して快くお城へと運んであげたのだった。

 

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 一方で、炭水列車は尚も暴走を続けていた。トーマスはその後を必死で追いかけていく。列車はマロン駅を通過する際、信号手の判断で側線に引き込まれた。

「やった、この先の車止めで 止められるぞ」

 しかし、トーマスは、あることに気付いて目を見開いた。 

 

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なんと、操車場には重機で溢れているではないか。ブルドーザーのバイロンが、ゆっくりと線路を横断しようとしている。

重機達も、暴走列車が向かって来ることに気付いた。

「線路から離れろ!」と、クレーン車のケリーが叫ぶと、みんな慌てて退散した。ただ一台、バイロンを除いて。

「何してるんだい!」

イザベラがバイロンに言った。でも、バイロンは既に列車が走ってくることに気付いていた。彼は線路を渡りきろうとも戻ろうともせず、方向転換すると、列車の方を向いてこう言った。

「俺のブレードで止めてやらぁ!」

 

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バイロンはそのままブレーキ車と衝突した。貨車の重みで後退したが、思いっきりキャタピラーを回して抵抗すると、列車の圧はみるみる弱まっていき、建物とギリギリのところで暴走が止んだ。 

「ヒュウ。どんなもんだい!」

そこでようやく、車掌が目を覚ました。彼はきょろきょろと辺りを見回して首をかしげた。

「まったく、のんきな車掌さんだぜ」

みんな大笑いして歓声を上げたのだった。

 

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  間もなく、スティーブンの炭水車はゴミの貨車から切り離された。ゴミの貨車とトーマスの貨車は、別の機関車が代わりに運ぶことになった。

無茶をしたバイロンだったが、ジェニーさんは誇らしげだ。

「私が貴方のママなら自慢よ」

「本当に ありがとう、バイロン。君の おかげで 炭水車を捕まえられた」

「いいってことよ。もし また貨車が ふざけたら、俺に任せな」

 

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 こうして、トーマスは無事にスティーブンの元へ炭水車を届けたのだった。本人だけでなく、ノランビー伯爵も大喜びだ。

「ポイント故障とはいえ、一時は どうなる事かと 思ったよ。追いかけてくれて ありがとう」

「今度 重い貨車を運ぶ時は グリンに任せた方が 安全よ。だって タンク機関車は 炭水車を失くしても 走れるもの」

「それもそうだな、ミリー」

「まあ とにかく、みんな無事で 良かった。勇敢な騎士 バイロンの元へ、勲章を 贈らなくては!」 

めでたし、めでたし。

 

 

おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●スペンサー

●スティーブン

●コナー

●ケイトリン

●ミリー

●ケリー

バイロン

●イザベラ

●ジェニー・パッカード

●ノランビー伯爵

●車掌(not speak)

●ボコ(cameo)

●オリバー(cameo)

●ネルソン(cameo)

●ゴードン(mentioned)

●グリン(mentioned)

 

 

【あとがき】

 リメイク第16弾は、2014年頃投稿のP&TI S13 E06より『あのテンダーをつかまえろ!』でした。舞台と脇役、そして言い回しを少し変えた純粋なリメイクです。オリジナル版でもバイロンが脚光を浴びていました。当時思わぬ形で入手したのと同時に、ブレードで貨車を押すブルドーザーの動画を見てお話を創りました。

また、スティーブンの炭水車が外れる様子は、1923年の喜劇映画『Our Hospitality』(邦題: 荒武者キートン/キートンの激流危機一髪!)が元ネタです。この映画は白黒で音声もありませんが、この為に造られたロケット号のレプリカが出演し、場を盛り上げます。