Z-KEN's P&TI Studio

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S13 ゴードンのプライド


 ある日、トーマスは重要な仕事を任された。レスキューセンターの近くに新しい駅を建てるための建築資材を運ぶのだ。
現場には新しい線路が沢山敷かれていた。スタフォードは機関庫に使う資材を運んでいる。それを見たトーマスはとてもワクワクした。彼は駅で待っているハット卿に声をかけた。
「トップハム・ハット卿。新しい機関車を 手配したんですか」
トーマスが質問する。
「よくわかったな。実はな…」
ハット卿が質問に答えようとしたその瞬間、オフィスの方から管理人が駆けつけた。
「ロウハム様から、お電話です」
「今でる。また 後で話すよ、トーマス」
そう言い残すとハット卿は慌てて走って行った。
トーマスは今日一日中、彼の答えが気になって仕方なかった。



その頃、帰りの急行列車で、ゴードンはスムーズに終点に到着した。
「時間ぴったりだ。コンマ一秒も、逃さなかったぞ」
機関士が褒める。
「当たり前よ。俺様は 時間に正確な 世界一速い機関車だからな! 右に出る奴なんて いないさ」
そうは言うものの近頃調子が悪かったので彼は内心驚いていた。奇跡的な到着だったのだ。
と、そこへダグラスが水を差した。
「でも コナーとケイトリンには 負けてますでしょう。それから ピップとエマにも」
「流線型の奴らは ソドー島の機関車じゃない。それに ピップとエマは ディーゼル機関車だ。俺様は 間違いなく 島で一番速い蒸気機関車だ」
ゴードンが反論する。
「レベルが 下がっておりますよ」
「時代を 感じますなあ」
双子に軽くあしらわれたゴードンは、ぷいと決まり悪そうに走り去っていった。
「ふん、奴ら役立たずなんかに この俺様の凄さは 分かるものか」
強がってはいたが本当は今どきの機関車たちに対して劣等感を覚えていた。
ピップとエマは彼が追いつけないほど速く走れるし、あのディーゼルにも強さで負けているのだ。

ゴードンはそのまま操車場にやってきた。石炭を補充する為ホッパーの下で停車する。
「俺様の知名度なら だれにも 負けやしないさ」
ゆっくり溜息をついて彼はこうつぶやいた。
その時、給水塔の前でぺちゃくちゃおしゃべりをしているパーシーとスタンリーが目に入った。
彼らの会話は隣で停車しているゴードンにもよく届いた。
ゴードンはうんざりしたが、その時とても気になる言葉が耳に入った。
「聞いたかい スタンリー。来年 ソドー島に 最新式の電気機関車が やってくるんだって」と、パーシー。
「やれやれ。また電気機関車か。この島には そう何台も いらないだろう」
ゴードンが彼らの陰で小さく鼻を鳴らした。
「へえ、どんな機関車なんだい」
「すごく 大きくて 工場のディーゼルよりも ずっと 力持ちなんだってさ。なんでも、急行列車を 引っ張るみたいだよ」



それを聞いたゴードンはぎょっと目を丸くした。
「そろそろ お前さんも 引退だな。どうやら 局長は 本線を 電化させることが お望みらしい」
そばにやってきたディーゼルが囁く。
ゴードンは彼の言葉を信用しなかったが内心は心配で心配で仕方ない。



 その夜、機関庫では新しい機関車の話題で持ちきりになっていた。
「最新式の電気機関車だって」
と、ヘンリーが疑わしげに、
「急行列車を 引っ張るんだよ」
と、パーシーが自慢げに、
「どんな機関車か 楽しみですなあ」
と、ドナルドがワクワクしながら言った。
皆楽しそうにおしゃべりしていたがゴードンだけは違った。
彼はますます不安が募るばかりなのだ。
「いいから、口を閉じて、もう寝ろ。俺様は 朝が早いんだ」
彼は不機嫌そうに言うと、他の機関車たちは不満げに、ぷんぷんしながら黙り込んでしまった。



 翌朝もゴードンは不機嫌だった。
なまいきなトーマスが、バスとの競争に夢中で、客車の準備をしてくれなかったからではない。チャーリーが、くだらない冗談を聞かせてくるからでもない。とにかく新しい機関車の事が気がかりなのだ。
ゴードンは、お客が乗り降りする間、彼の兄弟、フライング・スコッツマンがソドー島へやってきたときのことを思い出した。
『もし、ディーゼルの言っていることが 本当だったら。いいや、そんなことはない。第一トップハム・ハット卿は…』
ふと彼はあることに気が付いた。今の局長は3代目、スティーブン・ハットだ。2代目の局長と同じ考えかどうかは定かではない。
『きっと、俺を引退させて、島を 電線で 張り巡らす気なのかもしれない。近頃 調子が 悪いからな…』
ゴードンは不安げに心の中で呟いた。



 間もなく、出発の時刻になった。
駅長が笛を吹き緑色の旗を大きく振る。
ゴードンは決心した。
「仮に それが 本当だとしても、その日が来るまでは 自分の仕事を きっちり行うまでだ。俺様は ゴードンだ。島で一番速い、有名な機関車だぞ」
彼はそう自分に言い聞かせ、汽笛を鳴らして、さっそうと駅を出て行った。



 ウェルズワースまでは順調な走りを見せたゴードンだがどうも調子が優れない。
駅に着くと、ちょうど隣の線路を直通列車のケイトリンがやってきた。彼女は元気のなさそうなゴードンを見るとその場で一旦停車した。
「あら、ゴードン。キルデイン駅まで 競争しない?」
ケイトリンが陽気に声をかける。
「そんな暇 あるもんか。俺様は とても忙しい機関車なんでな…」
と、その時ゴードンは思いとどまった。
もし彼女と競争で勝つことができたらトップハム・ハット卿は考え直してくれるかもしれない。
彼はそう思ったのだ。
「待った ケイトリン。やっぱり 競争しよう」
「やったあ!」



2台は駅長の合図で一斉に走り出した。
スタートからすぐケイトリンに追い抜かれたがゴードンも負けてはいられない。
彼は顔を真っ赤にさせてピストンを素早く、力いっぱい動かす。勝つ気満々だ。
「スピード最高記録を 出してやる」
「おいおい ゴードン。そんなに 張り切ると壊れてしまうぞ。サムも 落ち着くんだ」
機関士が彼らを宥める。
しかし助士が意図せずともゴードンはぐんぐんスピードを上げていく。
「あいつには 負けん、負けるわけには いかん」
安全弁からものすごい音が鳴り響いているとも知らずに。



ゴードンがケイトリンと互角のスピードに達したその時、トラブルが起きた。
彼らが走る線路の信号が赤に切り替わっている。
ケイトリンはスピードを緩めたが必死になったゴードンは気づかない。
「へへ、怖気づいたか」
「ゴードン、止まって。信号が赤よ!」
ケイトリンの注意もゴードンの耳には入らなかった。



ゴードンがカーブを過ぎた時、目の前の分岐点から、電気機関車のクエンティンが現れた。彼は燃料運搬車をたくさん牽いている。
このままでは、衝突事故だけでは済まない。
「そこを退け!!」
ゴードンが叫ぶ。機関士は即座にブレーキをかける。
クエンティンは彼に気付き思わず目をぎゅっとつむった。

ゴードンも思いきり力を振り絞ってレールにしがみつき、クエンティンの列車にぶつかりそうでぶつからない、すんでのところで急停車した。
「気を付けてくれよ。なにかあったら どうするんだい」
クエンティンが怒鳴った。
「ちょっと、大丈夫?」
と、ケイトリンが心配そうにゴードンらに駆け寄った。
幸いにもけが人はなく事故を起こすこともなかったが、ゴードンの車体から突然『シュー』と白い蒸気が唸り声を上げて飛び出した。
安全弁が壊れてしまったのだ。ゴードンの機関士は呆れて言葉も出なかった。


 間もなく、ゴードンはソドー整備工場へと運ばれた。彼は恥ずかしくて仕方なかった。そして、ゴードンの客車はケイトリンが引き受けることになった。
ケイトリンの乗客は彼の引き起こした大幅な遅れに対して口々に文句を言った。
これでは特急列車ではない。



整備工場には、トップハム・ハット卿がゴードンを待っていた。彼は怒っている。
「仕事中に競争は いかんということは 君も よく 知っているはずだろう」
「ごめんなさい。あのう、急行列車を もう一台増やすって 本当ですか」
「誰から 聞いたのかね」
「パーシーとディーゼルです。本線を電気機関車に任せたら 俺の出番が なくなるんじゃないかと」
ゴードンの哀しげな顔を見て、ハット卿は額に手を当てじっと考えてから答えた。
「ああ、確かに 急行列車を増やす予定だ。それも 電気機関車のな。だが 噂を鵜呑みにしては いかん。その電気機関車ミスティアイランドに繋がる トンネルを 走るんだよ。だから、まだ 君が引退することはない」
それを聞いてゴードンはほっと一安心したと同時にさっきまでの事が更に恥ずかしくなった。
「それから、調子が悪いときは いつでも言いなさい。私は君を 頼りにしているからな」
と、ハット卿が、ほほ笑んで言った。



 あれから数日が過ぎ、修理を終えたゴードンは、今まで通り誇りを持って急行列車として働いている。
もう自分の仕事を引退を心配することもない。
けれども、『いつかは 終わりが やってくるだろう』と、機関車たちを見つめながら、心のどこかではそう思っているのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●トーマス

●ヘンリー

●ゴードン

●パーシー

●ドナルドとダグラス

●スタンリー

●ケイトリン

ディーゼル

●スタフォード

○クエンティン

●トップハム・ハット卿

●チャーリー(not speak)

●バーティー(not speak)

エドワード(cameo)

●ジェームス(cameo)

●ダック(cameo)

●ウィフ(cameo)

●ビクター(cameo)

●ポーター(cameo)

●ウィンストン(cameo)

●アニーとクララベル(cameo)

●トード(cameo)

●キャロライン(cameo)

●ブッチ(cameo)

●ローリー1(cameo)

●ケビン(cameo)

●フライング・スコッツマン(mentioned)

●コナー(mentioned)

●ピップとエマ(mentioned)

●ロウハム・ハット卿(mentioned)

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2016年に投稿した記事を再編集したものです。