Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S13 ボコときけんなしま


 ある朝、ディーゼル機関車のボコが機関庫で目を覚ましたところへ、駅にトップハム・ハット卿がやってきた。
「おうい、ボコ。ちょっと こっちへ 来てくれんか」
ハット卿が呼び掛けるとボコはすぐにエンジンを動かして機関庫を飛び出した。
「なんでしょうか」
ボコが尋ねる。
「君に やってもらいたい仕事があるんだ。私の叔父、ロウハム・ハット卿が ミスティアイランドを 活性化させる計画に必要な鉄骨を、レスキューセンターと ミスティアイランドまで それぞれ 運んでくれたまえ。島に到着したら、彼が 君に 指示を出してくれることだろう」
「わかりました。でも 本線の仕事は誰が」
「デリックが 代わりに 引き受けてくれる。さあ 出発の準備を してくれ。貨車は クロスビー駅に あるぞ」
ボコはミスティアイランドへ出張するのは初めてだった。
島の事は他の機関車たちから聞いてはいたが、どれも悪い噂ばかりだ。
とくにバッシュとダッシュファーディナンドは、とても変わっている。それは彼もよく知っていた。
彼は内心、心配で心配で仕方なかった。



 貨車を受け取りに隣の駅へ行ったボコは、転車台で方向転換していると、スクラフがやってきて給水塔の前で止まった。
スクラフも浮かない顔をしているボコに気が付いた。
「どうしたんだい。らしくないじゃないか」
スクラフが声をかける。
ミスティアイランドへ 行くことに なったんだ。だけど そこは"危険な島"って 聞くから ちょっと心配でね。君は あの島に 行ったことは あるかね」
「残念だけど 僕もないよ。でもヒロが 行ったことがあるって 言ってたな。美しい島だってね。そう 暗くなるなよ。バッシュ達は 変わってるけど 悪戯はしないだろう」
「そうか。行ってみないと わからないよね」
『なんとかなる。貨車を運ぶだけだ』
そう、自分に言い聞かせながら、沢山の貨車を牽いてミスティアイランドを目指した。



鉄骨を積んだ貨車が半分切り離され、隣の島へ繋がる長い長い海底トンネルをガタゴトと走った。
一面真っ暗闇の空洞をひたすら走り続けること40分。目の前に、とうとう明るい光が見えてきた。出口だ。
トンネルを出るとそこは一転して鬱蒼とした森の中だった。ソドー島の風景とは大違いで、家屋だけでなく平地もほとんど見当たらない。
凛として立つ木々は、太陽の光に照らされて輝いている。左には北大西洋が広がっていた。自然に囲まれている。
「スクラフの言う通りかも しれないな。ここは 空気が澄んでいて 美しい場所だ」



 ボコが最初の駅に到着すると、待っていたロウハム・ハット卿が明るく歓迎した。
ミスティアイランドへ ようこそ。今日は 何をして 遊ぼうか。かくれんぼか、それとも おにごっこか」
「え、あの…」
まるで老けた子供のような唐突な対応に、ボコは戸惑った。
「ハッハッハ、冗談だよ。スティーブンから 話は聞いているよ。長い貨車を ここまで牽いて、ご苦労だったね。もう一つ 君に やってもらいたいことが あるんだ。それはだな…」
と、そこへ、3台の機関車が陽気に「ポッポー、ポッポッポー!」と、けたたましく汽笛を鳴らして駅に滑り込んだ。
バッシュとダッシュ、それからファーディナンドだ。
「やあ、ボコ。久しぶり」
と、バッシュが、
「また会えて、とっても嬉しいよ」
と、ダッシュが、
「その通り!」
と、ファーディナンドが、元気よくあいさつをした。
ボコも気さくに警笛であいさつをする。



「実は おいらたち、君のために この島を案内しようって 思ってるんだけど…」
「どうだい。楽しいよ。きっと、気に入るって!」
「その通り」
3台が続いて陽気にに声をかける。だがボコは遠慮した。
「だけど 僕は これから 追加の仕事を やらなくては」
「まあまあ、いいじゃないか。少しくらいなら 遊んでもいいぞ。何しろ時間は たっぷりあるからな」
と、ロウハム・ハット卿。
それを聞いて3台は嬉しそうに万歳三唱した。
「それじゃあ、俺たちについてきて」
ファーディナンドが言った。
ボコは「やれやれ」と、溜息をついて彼らの後を追う。



 まず彼らは、ボコを材木の集積所へ案内した。交差点の多い大きな駅だ。ボコは物珍しそうにそわそわと辺りを見回す。
あちこちには木でできた建物が不安定に建っており、何年もほったらかしにされているかのように、ゴチャゴチャしていた。
「おいらたちは いつも ここで働いているんだ。木を受け取ったら あそこの製材所で 材木を作ったり、…」
「あそこのタンクで 燃料を 補給したりするんだ。奥には おいらたち専用の機関庫も あるんだぜ」
バッシュとダッシュが言った。



 次に彼らが案内したのは、伐採作業員の小屋の前。
そこには2体のクレーンが、ガタガタ揺れながら丸太を持ち上げていた。
「あれは オールド・ウィージーと ヒーホーだよ。木を積み上げるログ…ログ…」
ファーディナンドが言うと、
「ログ・ローダーマシンさ。ここで 伐採した木を おいらたちが運んで 集積所に 持っていくんだ」
ダッシュが口を挟んだ。
「その通り。それと 一つ忠告があるんだけど…」
と、その時、オールド・ウィージーがゼェゼェと息を切らしながら丸太を持ち上げると、貨車ごと適当に森の中へ投げ飛ばした。
貨車が落ちた衝撃で、放置されていた丸太が小屋へ降り注ぐ。
重い丸太に押しつぶされて小屋は木端微塵に砕けてしまった。
「今みたいに、彼らは 貨車を投げるから 注意が必要なんだ」
ボコは身震いした。



「気を取り直して、今度は あの橋を渡って 倒木トンネルに 行くよ」
ダッシュが言った方を見ると、そこにはグラグラ橋というとても古そうな橋があった。
木でできた柱は殆ど砕けており、橋は風に煽られゆらゆらと揺れている。
橋の下では濁流が丸太を押し流し橋の下に集めていく。ボコは震えあがった。
「でも、待つんだ。その橋は 危ないよ。今にも 壊れそうじゃないか」
彼は険しい表情で言った。すると3台の機関車は笑い出した。
「平気さ。もう 何十年も この状態だけど 壊れたことなんて 一度も ないよ」
と、ダッシュが意気揚々と橋を渡った。
「それが 問題だよ。だって…」
「大丈夫。見た目は 脆そうだけど 意外と 頑丈なんだよ」
と、バッシュがスピードを上げて乱暴に渡る。ボコは見ていられない。



「その通り! ほら、ボコも わたってごらん。すごく 楽しいよ」
ファーディナンドが後ろ向きで平然とグラグラ橋を渡りながら言った。
ところがボコは、怖くなってしまい、一目散に元来た道へ逃げ出してしまった。
「やっぱり 噂は 正しかったんだ。ここは とっても危険な島だ…」
彼はこの3台の機関車がだんだん怖くなってきた。それどころか一刻も早くロウハム・ハット卿の計画を中断させるべきだ、そう思いながら彼を探した。

 

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 ボコが戻ると、そこにはウィンストンに乗ったロウハム・ハット卿が、作業の準備をしているところだった。
「おや、もう お遊びは 済んだのかね」
「ロウハム・ハット卿、あなたに お聞きしたいことが あります」
「何でも 言ってみなさい」
「失礼ですが、僕には あなた方が ここを観光地として発展させようとする理由が わかりません。ここは あちこちが不安定で 危険です。とくに 客車を牽いて あのグラグラ橋を渡ったら、いつか 壊れてしまいますよ。この島のクレーンも 何を しでかすか わかりませんし…」
ボコは真剣な表情でいった。ロウハム・ハット卿も、珍しく真剣にそれを聞いていたが、ボコが話し終わると笑い声をあげた。
「ハッハッハ。心配には 及ばん。旅客列車が通る線路は 材木集積所では ないからね」
彼はウィンストンに乗り込むとボコにこう言った。
「ついてきなさい。そんな君に 路線を 案内しよう。きっと 気に入るぞ」



ロウハム・ハット卿は滑らかな運転を見せながら、島の外回りの線路を案内した。
そこはヒノキの森と北大西洋を一度に見渡せる穏やかな道のりだった。
彼の言ったとおりボコはその路線をとても気に入った。さっきまでの硬い表情はどこへやら、すっかり落ち着いて目を輝かせている。
「素敵な路線ですね。ここなら 静かで 空気も きれいだし、グラグラ揺れる心配も ない」
「君なら わかってくれると 思ったよ」
ロウハム・ハット卿も明るい笑顔を見せた。
こうしてボコは喜んで作業に取り掛かった。今では普及を心から望み仕事に取り組んでいる。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●バッシュとダッシュ

ファーディナンド

●スクラフ

●ボコ

●トップハム・ハット卿

●ロウハム・ハット卿

●ウィンストン(not speak)

●オールド・ウィージー(not speak)

エドワード(cameo)

●ジェームス(cameo)

●ネビル(cameo)

●ベル(cameo)

●デニス(cameo)

●ノーマン(cameo)

●ヒロ(mentioned)

●デリック(mentioned)

●ヒーホー(mentioned)

 

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2016年に投稿した記事を再編集した物です。