Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI S13 ベルのめいあん


 ソドー島の機関車たちは、みんないつも忙しそうに働いている。中でも蓄電池機関車のスタフォードは、特に忙しかった。
普段はトーマスの支線や操車場で働いているが、彼は静かに走るのでしばしば動物を運ぶ仕事を任せられる時もあれば、炭鉱で働くこともあれば、ディーゼル機関車達の手が離せないときは、ファーディナンド達が用意した材木や鉱石を受け取り、海底トンネルを往復して貨車を運ぶこともある。



スタフォードは文句一つこぼすことなく働いていたが、内心は少しうんざりしていた。
島に戻ってきたときには、大抵トンネルの前にハット卿がいるので、一息つく余裕もないからだ。



その日も、材木の運搬でスタフォードが海底トンネルを通ってソドー島に帰ってくると、トップハム・ハット卿がウィンストンに乗って待っていた。
「マッコールさんが 羊を運んでほしいそうだ。充電が終わったら 向かってくれ」
「はい。わかり…ました…」



 長旅から戻ってきたスタフォードは、レスキューセンターの操車場で充電した。
そこへ、ベルが貨車を取りにやってきた。彼女は、浮かない顔をしたスタフォードを見て心配した。
「どうしたの スタフォード。元気ないわよ」
「ああ…。こんなことは 言いたくないけど、ここ最近、働き過ぎだと思うんだ。皆の役には 立ててるし、信頼されてるのは いいんだけど、疲れて 元気を出そうにも 出ないんだ」
ベルはスタフォードを気の毒に思った。
レスキューセンターは海底トンネルの目の前にあるので、彼女はいつもスタフォードが忙しそうにしているのを見ている。ベルは彼の力になりたかった。



 次の日、ベルはレスキューセンターを訪れたトップハム・ハット卿に、スタフォードのことを相談した。
「―スタフォードは 働き過ぎです。ほんの 小さな蓄電池機関車なのに 皆よりも忙しなくて、彼の顔が みるみる やつれている気がして…」
「確かに 君の言うとおりかもしれん。彼のために 空きの機関車の手配を するとしよう」
「なるべく 早くお願いします。でないと…」
その時、非常警報が鳴り響き、ブッチが滑り込んできた。


「フリン、ベル! キルデイン駅の近くで 火災が発生したぞ」
「軌陸消防車フリン、出動だ! 行こう、ベル」
ベルはまだ話がしたかったので、少し後ろめたい気持ちだったが、今は緊急事態だ。それどころではない。
「また後で話を聞くよ、ベル。さあ、行ってきなさい」



 やがて、長時間にわたる消火活動を無事に終えたフリンとベルは、キルデイン駅前で帰りの支度をしていた。先ほどの消火活動で、ベルのタンクには水が半分もなく、給水しなくてはならなかった。
そこへ、一台の電気機関車がベルに挨拶をした。それはスタフォードに似た形をしている緑色の車両だった。
「火を消してくれて、ありがとう」
「あらスタフォード。あなたも 来てたのね」
「ちがうよ。僕は この支線で働く、電気機関車のクエンティンだ。君と会うのは 初めてだね」
「あら、ごめんなさい。あたしは ベル。よろしく。ところで、あなたの屋根の上にある ジャッキは何かしら」



「これかい。これは パンタグラフさ。集電装置と云って、僕ら電気機関車は、あの電線から 電気を受け取りながら走るんだ。燃料は必要ない。この装置を上げて、架線にセットすれば、いつでも走行できる」
「それは すごいわね」
「だろう。だけど僕らは、あの架線が ないと 走れない。だから 君たちのように 島中を走り回ったり できないんだ。僕もいつか、この支線から 抜け出して、自由に  走り回ってみたいよ。無理なことは わかってるけどね」
クエンティンは少し悲しそうな顔をした。ベルが返事をする間もなく、車掌が笛吹くと、彼は警笛を鳴らして出発した。
「おっと、もう行かないと。またね、ベル。会えてよかったよ」
クエンティンと別れた後、ベルは突然閃いた。
「そうだ。海底トンネルに、電気を通せばいいんだわ。早速 トップハム・ハット卿に 報告しなくっちゃ!」
彼女は給水することをすっかり忘れ、ハット卿を探すため走り出した。



 レスキューセンターでは、すでにフリンが帰還していた。
「やあ、ベル。ずいぶん 遅かったじゃないか」
「ねえフリン。トップハム・ハット卿を 見なかった」
「ううん。帰ってきてからは 見てないよ」
「君たちが 出動した後、呼出しが あって すぐに 行ってしまったからね」と、ブッチ。
「そう。じゃあ 探しに 行ってくるわ」
そう言うと、彼女は再び走り始めた。



 エドワードの支線へ続く線路を走っていると、ちょうどハット卿の車がサドリー駅の方へ向かって走ってるのが見えた。
「やったわ。こんなに 早く 見つかるなんて」
車は跨線橋を渡ると、今度は港の方へ向かって走り出した。



ベルはハット卿の車を追った。
しかし、道路は常に線路沿いに続いてるわけではない。ベルがトンネルをくぐった後、車は途中で見えなくなってしまった。
彼女は、この先にハット卿の車がいることを願いつつ、あてもなく走り続けた。
いつの間にかベルは、ブレンダムの港まで来ていた。



「やあ やあ、ずいぶん 慌ててるようだな。どうしたんだい」と、ソルティーが陽気に声をかけた。
「トップハム・ハット卿の車を 見なかった? 彼に 報告があって…」
「さあな。まだ ここには 来てないみたいだぜ 相棒。クランキーは見えたかい」
「いいや、俺が見える道路じゃ、ダンプカーが数台通っただけだぜ」
「そう。ありがとう」
その時、問題が起きた。
彼女はクランキーの前から走り出そうとしたが、動けなかった。とうとうタンクの水を使い果たしてしまったのだ。ベルは慌てふためいた。



 すぐに、ポーターがベルを給水塔の前まで運んであげた。
「せっかく いい案を 思い付いたのに、トップハム・ハット卿と 会えないだなんて…」
「まあ、そんな日も あるさ。今日は ゆっくり休んで、待っていれば そのうち来ると思うよ。僕の機関助士が 連絡してくれるから」



 翌朝、トップハム・ハット卿がベルを訪ねにレスキューセンターへやってきた。
「昨日は 私に用があると 探し回っていたようだが、何か あったのかね」
「スタフォード達に 負担をかけない、いい方法を 思い付いたんです。ここから 海底トンネルを抜けた先のミスティアイランドまでの区間を、電化させるのは どうでしょう。電気機関車なら 燃料の補給も いらないですし、効率も良くなると 思うんです。クエンティンも、あの支線から出たがっていました」
「うーむ。確かに それは 名案だ。だが、残念ながら 私には 長い海底トンネルを 電化させるほどの財力は ないんだよ、ベル。トンネルを塞いで 運搬を 船に任せることなら できるが…」
「お金なら たっぷり ありますぞ」
そこへロウハム・ハット卿がスタフォードに乗ってやってきた。



「叔父さ…いえ、ロウハム・ハット卿。何故 そう 断言できるのですか」
「忘れたかね? 先週 スタフォードが 金鉱を 見つけてくれたじゃないか。あの後 分け前を頂いたのだよ。だから、ベル達の望みを聞くには 十分な金があるぞ、スティーブン」
それを聞いた機関車たちは汽笛と歓声を上げた。トップハム・ハット卿は少し考えると、スタフォードに言った。
「わかった。君には無理をさせて すまなかった。工事が終わるまでは 大型のディーゼル機関車に この仕事を任せる。明日は 支線で ゆっくり休むと いい」
「ありがとうございます」
こうして、海底トンネルを電化する計画が実行されたのだった。

 


おしまい

 

 

【物語の出演者】

●ベル

●ポーター

ソルティー

●スタフォード

○クエンティン

●フリン

●クランキー

●トップハム・ハット卿

●ロウハム・ハット卿

エドワード(not speak)

ファーディナンド(not speak)

●ウィンストン(not speak)

●ロージー(cameo)

●スタンリー(cameo)

ダッシュ(cameo)

ディーゼル(cameo)

●ボコ(cameo)

●ロッキー(cameo)

●キャロライン(cameo)

●ブッチ(cameo)

●トーマス(mentioned)

 

脚本: ぜるけん

※このお話は、2015年に投稿した記事を再編集した物です。