Z-KEN's P&TI Studio

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-10 ジェームスとでんせつのきかんしゃ(リメイク)

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 「君たちは、伝説の消えた機関車を 知っているかい」

ある晩、ティッドマス機関庫で、ヘンリーがみんなに港で聞いた噂話をしていた。

「なんだい、それは」

ダックが目を薄く見開いて訊いた。

「ある筈の無い線路を走る、魔法の機関車さ。前にトーマスが迷った あの鉱山で、真夜中に 石炭の貨車を牽いて 姿を現しては、キラキラ輝きながら消えるんだって」

「馬鹿げた話だ。そんな非科学的な噂、僕は 信じないよ」

ダックがきっぱり言うと、ゴードンとエミリーも「ウンウン」と頷いた。ジェームスも例外ではない。

「果たして 本当に そうでしょうか」

と、次に口を開いたのはドナルドだった。彼は冗談交じりにこう言った。

「この島では、何かと 不思議な事が 起こります。たとえば、機関車を追いかける岩に、動く木、それから 鉱山を沈める いたずらノームに…」

「全部 偶然だろう。おふざけは それぐらいにして、もう 寝ろよ」

鬱陶しそうなゴードンの一声を最後に、みんな眠りにつき、誰もその続きを話さなくなった。

 

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 翌朝、ジェームスはとても不機嫌だった。

ゆうべのヘンリーに同情しているわけではない。その日も、自分の大好きな客車を牽く仕事を、させてもらえなかったのだ。

タンク機関車がみんな出かけているので、代わりにゴードンの為に急行客車を用意しなくてはならない。

「今日だけじゃない。昨日も、一昨日も、その前も、ずーっと 貨物と入換えの仕事。あーあ。たまには 僕も、昔みたいに 急行列車を 引っ張りたいな」

「また 牽けるさ。ゴードンにも 休憩が必要なときも ある。そうだろう?」

文句を言うジェームスに、エドワードが優しく声をかけた。ジェームスは彼に微笑んだが、内心そうは思えなかった。

「(トップハム・ハット卿は もう 二度と 急行を やらせてくれないんだろうなぁ)」

彼は心の中でそう呟いた。

 

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彼がそう思うのは、ここ最近自分より大きな機関車がたくさん増えたからだった。このおかげで負担は減ったけれど、時々、他の機関車が自分の好きな仕事を奪っていると感じる事があった。

ジェームスの次の仕事は、埃っぽいタール運搬車を港へ運ぶ事だ。タンクの挿入口の周りは、黒いタールでベタベタしている。この汚い貨車たちを嫌々牽きながら、大型機関車とすれ違ったり、他の仲間たちが客車を牽いているのを目の当たりにするたびに、「やんなっちゃうなぁ」と、彼は呟くのだった。

 

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ブレンダムの港に着くと、ディーゼル機関車ソルティーと出逢った。彼は噂好きだ。

すっかり憂鬱なジェームスの顔と、愚痴を聞くと、彼はこう提案した。 

「それなら、魔法の機関車に お願い事をして ごらん。鉱山に 時々現れる その機関車は、観た者の願いを、一つだけ叶えてくれるんだ」

「ハッ。今のは ソルティー史上 最大の ほら話だな」

その矢先にクレーンのクランキーが鼻で笑う。

ジェームスは、ソルティーの話に耳を傾けて一度でも期待を持ったことを後悔した。そこで彼は気にしないことにした。

 

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 今度は港からグレート・ウォータートンへ色んな荷物が積まれた貨物列車を運ぶよう頼まれた。それから午後はスタンリーの入換え作業を手伝うのだ。

途中、小型ディーゼル機関車のラスティーが、彼に声をかけた。

「やあ、ジェームス。ひょっとして、伝説の機関車を 捜しに来たのかい」

「まさか」 

 

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  ジェームスとスタンリーが入換え作業を終えたのは、すっかり辺りが暗くなってからの事だった。入換えても、どんどん貨物列車が入るわ、ポイントが故障するわで、完了までにかなり時間を要した。

スタンリーは「お疲れ様。おやすみなさい」と、彼に気さくに一声かけてから機関庫に入って、疲れた体を休めた。

ジェームスもくたくた疲れていて休みたかったが、少し気になることがあった。周りに誰もいない今がチャンスだと思って、機関士にモーガンの鉱山の方へこっそり行くように言った。

「ちょっと 覗いてみるだけですって」

 

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ジェームスはヘンリーやソルティーの話をに信じようとは思わなかったが、もし願いを叶えてくれる存在が居るのなら、会ってみたいと思った。でも、口には出さない。機関士たちに、ソドー島で一番馬鹿げた機関車だと思われたくなかったからだ。

でも、鉱山に入って間もなく、線路が途切れていた。脆くなっていた古い線路がいつしか壊れて落ちていたのだ。下は奈落の底。真っ暗で何も見えない。

ジェームスは身震いと共に、大きなため息を一つ。

「やっぱり、クランキーの 言うとおり、ほら話だったんだ。機関車どころか 線路すら無いじゃないか」

「気は済んだか。さあ、もう 帰ろう。こんな 危なっかしいところ、もう ごめんだ」

機関士が言った。彼はジェームスの重量が心配だった。特に何年も使われていないこの古い鉱山では、十分に走ることがままならない。

ところが、ジェームスが後ろへバックしようとした時、機関士の予感が正に的中した。

 

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 突然、その線路がぐらりと揺れ、崖が崩れ落ちた。その影響でレールが下へと傾いてしまい、ジェームスの先輪と第一動輪が線路からはみ出したのだ。彼は慌てふためいた。

「うわあ、助けて!」

ジェームスはピストンを動かして後退しようとしたが、機関士が止めた。

「動くな。体を揺らすと、落っこちるぞ」

彼らは鉱山に入った事をとても後悔した。

いよいよ終わりかと目を瞑った思ったその時、後ろの方から「シュッシュッ」という機関車の走る蒸気の音が聞こえてきた。

「もしかして、魔法の機関車? お願い、助けて!」

 

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しかし、それはスタンリーだった。ジェームスが機関庫へ戻らないので、心配して鉱山を見に来たのだ。彼はこの危機的な状況を素早く察知して、慎重にジェームスに近づいて連結した。

「もう大丈夫だよ。僕が 線路に 戻してあげるから」

残念ながら期待していた機関車ではなかったが、ジェームスは救いの手が差し伸べられて、心の底から嬉しくて、その瞬間は魔法の機関車の事など記憶から消えていた。

線路に戻してもらった後、スタンリーがジェームスを牽いてゆっくりと鉱山を出ようとすると、また別の機関車の走る音が彼の耳に入った。 

音のした方に目をやると、鉱山の壁に幾つか穴が開いてある事が確認できた。でも、ジェームスの目に映ったものは、それだけではなかった。

 

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 なんと、穴の向こう側に、今まで観た事も無い機関車がいるではないか。金色の煙室とドームが光り輝いている。蒸気と一緒に周囲が明るく見えるほどのキラキラした粉をまき散らしている。目を見張る美しさだ。

「なんて素敵な機関車だろう…!」

ジェームスは思わず見惚れていたが、機関士も助士も、スタンリーも、それに気づいていないようだった。

 その時、彼は、はっとしてソルティーの言ったことを思い出した。

「また 急行列車を 牽けますように…」

彼は機関士たちに気付かれないように、目を瞑って、そっと願い事を唱えた。

すると、穴の向こうの機関車はキラキラの輝きながら、車止めの前から石炭の貨車共々消えていった。

これと同時に、ジェームスはとうとう疲れ果てたのか、突然眠くなってウトウトし始め、機関車が消えるのが見えるか見えないかあやふやなところで目を完全に閉じてしまい、そのまま眠りについたのだった。 

 

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 「―起きてくださいませ。スタンリーが 機関庫から 出られません」

 朝日が昇り、小鳥がさえずる頃、ジェームスが目を覚ました時には、もう機関庫の前に居た。

目の前にはスタンリーの後姿があり、路面機関車のフローラがジェームスを起こそうと、「チリンチリン」と、心地の良い音で鐘を鳴らしながら何度か声をかけている。

「あ、ごめんよ」

ちょうど機関助士が罐の火を温めていたので、彼は起きて間もなく線路を開けてスタンリーを通してあげた。

するとフローラがジェームスに言った。

「トップハム・ハット卿が お話が あると、駅で 待っていましたわ」

 

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 ジェームスは駅へ急いだ。彼は無断で鉱山に立ち入った事を怒られるのではないかと思い、冷や汗を垂らしたが、トップハム・ハット卿はにこやかな笑みを浮かべていた。

「聞いたぞ。今週、君は 自分の嫌いな仕事を 頑張って熟したそうだな。その ご褒美として、君に グレート・ウォータートン特急を 任せよう」

ハット卿がこういうと、スタンリーが急行客車を持ってきてジェームスに繋がせた。

この事にジェームスは、とびっきりの笑顔になって、ハット卿にお礼を言った。

「やったあ! 噂は 本当だったんだ、僕の願いが 叶ったぞ!」

こうして大はしゃぎする彼の姿を、待避線から港のディーゼル機関車が温かく見守りながら、町を後にしたのだった。

 

 

 おしまい

 

 

 

【物語の出演者】

エドワード

●ヘンリー

●ゴードン

●ジェームス

●ダック

●ドナルド

●エミリー

●スタンリー

●フローラ

ソルティー

●ラスティー

●クランキー

●トップハム・ハット卿

●ジェームスの機関士

●レディー(not speak)

●ビリー(cameo)

●ハンク(cameo)

●ヘクター(cameo)

●トーマス(mentioned)

●ボルダー(mentioned)

 

 

【あとがき】

 リメイク第10弾は2011年5月10日投稿のPToS S10 E09より『ジェームスと魔法の機関車』でした。この当時仲が良かった人物に、レディーが登場する話を創ってくれと頼まれた事で2011年にこのお話を創りました。

私は子供の頃から劇場版『魔法の線路』の設定と内容、そしてレディーという非現実的の象徴なキャラクターそのものが好きではありませんでしたので、現実か幻かあやふやな演出(の、つもり)で彼女を登場させました。*1なお、彼女の登場のさせ方は当時と全く変わりません。このリメイクでは殆ど中身の無いオリジナル版に物語を加えた感じです。

 

 レディーに関してはソドー島で働き、誰かと日常的な会話を繰り広げる展開を、公式で何か動きが無い限りは、絶対に創らないつもりでいますが、もしご要望があれば今後も出番を与えようと思っています

また、昔ボツにした、今回のお話の「別パターン」もP&TI S15で用意する予定です。

*1:一応、『魔法の線路』をパラレルとした上で、PToS、P&TIは共通して『みんなあつまれ しゅっぱつしんこう』の世界軸で描いています。