Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-07 ジェームスとフリンのきょうそう(リメイク)

f:id:zeluigi_k:20190329213922j:plain

  それは、特殊消防車のフリンが島に来て間もない日の事だ。その朝、ティッドマス機関庫にフリンがやってきた。隣の車庫で発生した火を消し止めるためだ。

だが、車庫の前には貨車が乱雑に置かれているせいでフリンは直接その線路に行くことが出来なかった。そこで彼は、機関庫の側線で待機すると、威勢よく飛び出した消防士たちが、放水銃を絶妙な角度で傾け、勢いよく水を噴き出した。

水は華麗な線を描いて見事に燃え盛る炎に命中。こうしてあっという間に鎮火したのだった。機関庫で彼の活躍を見ていた機関車たちは、歓声を上げた。

「こんな 離れた場所からでも 届くなんて、すごいや。君は本当に役に立つ消防車だね」

「ありがとう、パーシー。島の安全を守るのが 僕らの 仕事だからな。火は、ちょっとしたことでも 起こりうる。だから、僕らが居るんだ」

「その 真っ赤なボディも、島で 一番 きれいだね」

フリンの車体は水しぶきを浴びてキラキラと輝いていた。感銘を受けたヘンリーが言うと、ジェームスがムッとして口を挟んだ。

「ちょっと待ってよ、島で一番真っ赤なのは 僕だよ。得意げに見せびらかしちゃって、気に入らない!」

「僕は そんなつもり、無いけど」

「どっちが一番 赤いかなんて わからないよ。同じくらい きれいだもの」

エドワードが言うと、パーシーが閃いた。

「ジェームスとフリンで 競争するのは どう? 先に ゴールに着いた方が 島で一番赤い機関車だよ」

「それだ。フリン、勝負しようじゃないか」

ジェームスはやる気満々だった。フリンにその気は無かったが、話を合わせることにした。

「レスキューセンターに 戻るついでだ。いいだろう」

 

f:id:zeluigi_k:20190329170108j:plain

  ジェームスには、マロン駅へ石切り場の作業員を運ぶ仕事があった。

貨車を牽く必要のないフリンは線路用の水槽車を繋いだまま、スタート地点の操車場で待っていると、ジェームスが水槽車の後ろにブレーキ車を1台繋がせた。

「ちょっと待ってくれ。僕は、貨車なんて 牽いたこと、一度も 無いぞ」

「僕だけ ブレーキ車2台じゃ、平等じゃないよね」

フリン一台では連結する事は出来ないが、水槽車には連結器とバッファーが付いており、何かを連結できる。ジェームスはそれを見て繋いだのだ。

「軽いから牽けるさ。先にマロン駅に着いた方が 勝ちだ。でも道路を走っちゃ だめだよ。まあ、きっと 僕が勝つけどね」

「はいはい」と、フリンがたしなめるように言った。

間もなく2台の準備が整い、ジェームスのブレーキ車から一人の作業員が顔を出して、

「よーい、ドン!」と、声を上げる。

掛け声とともに、2台は一斉に走り出した。

ジェームスの出だしは遅かったが、余裕の表情だ。フリンは今まで余分に貨車を牽いた経験が無いので、若干重みを感じながらも、懸命に走った。

 

f:id:zeluigi_k:20190329173926j:plain

 他の機関車や線路の状況に気を配りながら、2台は本線を横断する。

最初はフリンがリードしていたが、だんだんとジェームスが加速していく。

徐々に差が縮まり、遂に彼を追い抜いた。

2台に繋がれたブレーキ車からは作業員たちの歓声や応援が巻き起こる。

「ハッハ~、余裕だね」

ジェームスの一言に、その気じゃなかったフリンも思わず本気になる。線路用の小さな車輪を一生懸命チェーンで回して負けじと走っていく。

 

f:id:zeluigi_k:20190330211820j:plain

 海辺の線路を走る頃には、フリンの姿が見えなくなっていた。

ジェームスが落ち着き払った様子で余裕の表情を浮かべながら、ウェルズワース駅に近づくと、後ろから物凄い音を立てて、何かが急接近した。

なんと、フリンが後ろの車輪だけを中に閉まって、道路用の車輪を使って走ってくるではないか。前だけは線路用の車輪を出したまま、器用に線路から外れず追い上げていく。

「ずるいじゃないか。道路用の車輪を使うなんて!」 

「車輪の大きさが違うなんて、平等じゃないよね」

駅ではほぼ同着になった。背後のブレーキ車から作業員たちが顔と腕を外に出して「がんばれー!」「いいぞー!」と、応援し、駅の人々も歓声を上げた。その様子を写真に収めようとする人もいた。

事前にパーシーから話を聞いていたウィンストンも、競争に興味津々だ。

 

f:id:zeluigi_k:20190329201759j:plain

2台とも一歩も譲らず激しい戦いを繰り広げていたが、間もなくジェームスの前方に、貨物列車の後押しを手伝うパクストンの姿があった。

「こりゃあ まずいぞ。早く、どいて!」

 幸いにも、信号手がパクストンの列車を側線に引き込んだので衝突は免れたが、ジェームスは彼らが本線から完全に退くまで、のろのろ走らなくてはいけなかった。

「お先に失礼、ジェームス!」

イライラしながら待っているジェームスの横を、フリンが線路用の車輪を戻して走り抜けていった。パクストンは、なるべく早く側線に入ろうとしたが、それでも時間がかかってしまった。

 

f:id:zeluigi_k:20190415151244j:plain

 やっと、ジェームスは調子を取り戻した。しかし、もう遅い。

既にフリンはマロン駅に到着していたのだった。ジェームスが全速力で巻き返そうとしても無駄だった。彼が火花を散らしながら、急ブレーキをかけて止まると、

「プップ~! やったぞ、僕が勝った! 楽しかったな」

と、隣でフリンが喜びの警笛を上げた。ジェームスは、とても悔しそうだ。

「こんなの平等じゃないよ。もう一回やろう」 

「だけど、そろそろ戻って水を補給しないと。火事に備えなければ…」

フリンがそう言いかけると、どこからか、細くて黒い煙と共に、焦げくさい匂いが漂ってきた。そして次の瞬間、『ボォッ』と音を立ててジェームスの隣から熱気がこもり始める。

2台はその正体が何なのか、すぐにわかった。

「「火事だ!!」」

 

f:id:zeluigi_k:20190415152255j:plain

先ほどジェームスが急ブレーキをかけた時に飛び散った火花が、線路の近くに生えていた草と木に引火したのだ。木は、ジェームス目掛けて、今にも倒れそうだ。

あわや、と思ったとき、作業員にブレーキ車から切り離されたフリンは、線路を変えてジェームスを安全な場所まで押し出した。危機一髪で、彼らは助かった。

だが、炎は収まらない。火の手は周りの草木や、駅をも包み込む勢いだ。フリンに乗っていた消防士たちが再びホースを繋ぎ、放水銃を傾け、放水し始める。作業員たちは駅に居たお客を安置へ誘導し、駅備え付けの水道を使ってバケツリレーを始めた。 

「まずい。タンク車の水が 残り少ししかない!」

消防士の一人が叫んだ。

「このまま もつか?」

フリンは不安だった。ベルはソドー整備工場で修理中だし、今は自分だけが頼りだ。

一方、ジェームスは、この事故を自分の撒いた種だという事をわかっていた。いても経っても居られず、彼はフリンに声をかけた。

「僕に何か、できる事は あるかい」

その一声に、フリンは一瞬笑みを浮かべた。

「レスキューセンターに 水が入った予備のタンク車が ある筈だ。君は それを持ってきてくれ! それから ノーマンは 貨車を安全なところまで 移動させるんだ」

「了解。急ぎの仕事なら僕に任せて!」

 

f:id:zeluigi_k:20190415184705j:plain

 ジェームスは全速力でレスキューセンターへ向かった。いつもなら「ジェームス参上!」と駆け込むところだが、今はそれどころではない。彼は顔とボディを真っ黒にさせながら、必死で仲間に尋ねた。

「ロッキー、水が入った予備のタンク車は、どこかな。緊急事態だ」

クレーン車のロッキーにはわからなかったが、レッカー車のブッチが彼に教えてくれた。

「それなら、車庫の入り口だ」 

 

f:id:zeluigi_k:20190415185149j:plain

ジェームスはすぐに裏方へとバックした。車庫の前には水色のタンク車と、フリン専用の道路用水槽車が並べられていた。

彼にはどっちを指すのかわからなかったが、水槽車はフリンじゃないと運べない。そこで水色のタンク車に水が入っていることを確認すると、連結して、急いでマロン駅へと戻って行った。 

 

f:id:zeluigi_k:20190415174250j:plain

 フリンのタンクの水はすっかり空になっていた。水槽車の方も残りわずかだ。

「もうちょっとなのに…!」

そこへ、タンク車を牽いたジェームスが駆け付けた。急いでいたが、今度は急ブレーキをかけずに止まった。

「ヒーローの お出ましだ!」と、フリン。

早速ホースがタンク車の方へと移し替えられ、勢いよく水を噴き出して炎を消し止めた。

 

f:id:zeluigi_k:20190415154628j:plain

 消火活動を終えた頃には、フリンも、そしてジェームスもくたくたに疲れていた。

ウィンストンに乗ってやってきたトップハム・ハット卿は大喜びだ。

「よくやったぞフリン。そしてジェームス、君の不注意には 苦労させられたが、その後は頑張ったそうだな。君たちは 本当に優秀で真っ赤な消防車だ」 

彼らは誇らしかった。だが、先ほどの競争や全速力で走ったおかげで、ジェームスは水と石炭を使い果たして動けなくなっていた。

ハット卿はノーマンに入換えを頼もうとしたが、フリンが止めた。

「僕がジェームスを給水塔まで運びますよ」

「では頼むぞ、フリン。石炭はヘクターから分けてもらうといい」

 

f:id:zeluigi_k:20190415180959j:plain

  水槽車は空っぽで、ジェームスは燃料が残っていなかったので、フリン一台で給水塔まで運ぶことが出来た。だが、ジェームスは浮かない顔をしている。フリンはそんな彼を見かねて、明るく声をかけた。

「君は とても速くて勇敢な赤い機関車だね。君が 素早く行動したおかげで 助かったんだ。レスキューチームの一員に したいぐらいだよ。本当に ありがとう」

「ああ。でも、競争には負けちゃった。君ほど赤くも速くもないさ。今日から、君が 島で一番赤い機関車だ」

「だけど、僕は消防車で、機関車じゃない。この島で 一番真っ赤な機関車は 君だよ、ジェームス」

それを聞いて、ジェームスはとびっきりの笑顔になった。

その日、ジェームスには新しい友達が出来た。それは自分と同じくらい速くて真っ赤な消防車、フリンだった。

 

 

おしまい

 

 

 

【物語の出演者】

エドワード

●ヘンリー

●ジェームス

●パーシー

●ブッチ

●フリン

●トップハム・ハット卿

●作業員

●消防隊員

●ノーマン(not speak)

●パクストン(not speak)

●ウィンストン(not speak)

●ロッキー(not speak)

●ヘクター(not speak)

●エミリー(cameo)

●スタンリー(cameo)

●ベル(mentioned)

 

 

【あとがき】

 大変お待たせしました。リメイク第7弾は2014年1月8日投稿のPToS S12 E23『ジェームスとフリンの競争』でした。アーカイブ、というより、過去の自分によれば地味にやりたかった話だそうです。初めてフリンのCGプロモを見た時、真っ赤なボディ同士でジェームスと競ったり協力する光景を妄想した事は今でも覚えています。でも、フリンが登場してから8年経ちましたが未だに公式でやる気配はありませんね。代わりに赤くなったロージーが競争相手となったので、この展開はあと5年経っても無さげ。

 オリジナルと変えたところは出火の原因とフリンの走り方です。リメイク版は公式の7分~10分のアニメーション尺を想定した展開で微妙に台詞などを省略しています。

あと、フリンの線路用車輪ってそう速く走れない気がするんですよね。フリンが鉄輪を上下させる仕組みは判りませんが、鉄輪とゴムタイヤを同時に地面に接触させられる方式ならもっと速く走れそう。チェーンで鉄輪回してるってことは歯車か何かで動かしてるんですかね。