Z-KEN's P&TI Studios

プラレールとトラックマスターを用いた某きかんしゃの二次創作置き場

P&TI Ex-02 ジェームスのゆうびんはいたつ(リメイク)

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 ソドー島の機関車たちには、それぞれ大好きな仕事がある。

パーシーは郵便配達をすること、トビーはヘンリエッタと一緒に作業員を石切り場へ運ぶこと、エドワードは貨物列車を牽くこと、そしてジェームスは自分のボディを見せびらかしながら客車を牽いて本線を優雅に走ることだ。

だが、みんながいつも好きな仕事ばかりできるとは限らなかった。

 

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 ある日の昼下がり、ジェームスが石炭と水を求めて操車場に入ってくると、石炭ホッパーの前でパーシーがヒロと話をしていた。

 「どうしたら 君のように 鉄道の達人って 呼ばれるようになれるの」

パーシーが尋ねると、ヒロは少し困った顔をしながら答えた。

「例え どんなに好きな仕事も、嫌な仕事も、何度も やって 覚えるのさ」

「どうしてだい。嫌なら、やらなければいいじゃないか」

と、ジェームスが不機嫌そうに口を挟んだ。

「仕事を決めるのは 我々じゃないだろう。それに、何をすべきか わかっていても、やってみないと その全ては身に付かないものだよ」

 

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  翌朝、ジェームスが操車場で客車が連結されるのを待っていると、エドワードが客車を牽いてやってきた。

「それは僕の客車かい」

「ううん、今日は 僕が牽くことになったんだ。君には 別の仕事が あるみたいだよ」

すると、客車からトップハム・ハット卿が出てきて、ジェームスの前の木箱の上に立った。彼の口が開くまでジェームスは特別な仕事を任されるのかとワクワクしたが、彼が任せたのは港の仕事で忙しいパーシーの代わりに郵便配達をするという物だった。

「郵便配達は 小さい機関車の仕事じゃないですか。僕は もっと 大役をやりたいです」

「いいや、郵便配達も 大事な仕事だぞ。さあ、ファークァー操車場へ 向かってくれ」

ハット卿の指示にがっくりと肩を落とすジェームスに、スタンリーが優しく声をかけた。

「わからないことがあったら パーシーに訊くんだよ」

「郵便配達の事なら わかってる。ちびのパーシーに 教わる事なんか 何もないね」

と、ジェームスは周りに当たり散らして操車場から出て行った。


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  ファークァー駅の操車場に辿り着くまでの間、彼は一度パーシーと話をする機会があったが、仕事を早く終わらせようと、口も利かず一直線に駅へたどり着いた。

郵便車は機関庫のそばの客車庫に置かれていた。

「ほらほら、急いで、急いで」

ジェームスは粗っぽい態度で「ガッシャーン!」と、大きな音を立てて列車を繋いだ。

すると、ちょうど採石場からヘンリエッタと一緒に戻ってきたトビーが、隣の機関庫の奥から出てきて、彼に厳しく言った。

「乱暴は よせよ。郵便車は、悪戯なんかしないよ」

「君が郵便車の何を知っているんだい」

 

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 ホームではファークァー担当の郵便屋のトムが待っていた。村のポストに入れられた手紙や小包みを郵便車に入れるためだ。郵便物は大きなオフィスのある町で仕分けられ、後に車や大型の機関車によって宛先の町や本土へ運ばれる。

そのことをジェームスと彼の機関士はわかっていたが、運び方まではきちんと把握していなかった。

トムが陽気に一声かけ、重くて開けづらい扉を開いて列車に積み込み始めた。ところが、早く仕事を終わらせたいジェームスは、突然走り出したのだ。機関士が慌てていたのだろうか。扉を開けたまま、しかも郵便物の半分を駅に置き去りにしたまま出て行く列車に、トムは慌てふためいた。

「おーい、待ってくれ!」

しかし、その声はジェームスの蒸気を噴き出す音でかき消されてしまった。

 

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すぐにトムは駅長に事情を説明し、列車を止めるように言うと、残りの郵便袋をバンに戻して列車を追いかけた。

駅長は次の信号所へ郵便列車を止めるように連絡を入れたが、信号手はその日ジェームスが担当とは知らず、また、ジェームスの機関士も通過標識灯の配置を変えるのを忘れていたので、信号手は「うん、あれは 貨物列車だな」と、誤ったランプの配置だけを読み取って列車を通してしまった。

 

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 一方、列車が軽いので、ジェームスは、いい気になってスピードを上げていた。

「これなら、仕事を 早く 終わらせられるぞ。ハット卿に 鉄道の達人だって褒めてもらって、すぐに 客車の仕事に戻るんだ」

だが、そう上手くは行かない。出発前に乱暴に連結したせいで、反対側の扉に取り付けられていた錠前が外れ、農場前の急カーブで小包みが幾つかポロポロ落ちてしまった。

「ジェームス、落し物だぞ」と、農夫のフィニーさんが声をかけるも、猛スピードでトンネルに駆け込むジェームスには聞こえなかった。

フィニーさんは「やれやれ」と、重い腰を上げて小包みと一緒にトラクターのテレンスに乗り込むと、彼を追いかけた。 

 

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こうしてテレンスは農場を抜け道路へ出たが、キャタピラーでは思うようにスピードが出ない。このままではジェームスに追いつく頃には日が暮れてしまうだろう。

そこへ、テレンスの後ろから乗用車のキャロラインが現れた。彼女は持ち主とドライブを楽しんでいる。

「待ってくれ、キャロライン。この郵便袋を、落としたジェームスに届けてくれないか。君は俺よりずっと速いだろう?」

キャロラインは最初は断ろうとしたが、後の言葉を聞いてすぐに考えが変わった。

「お安い御用よ。ふふ、困ったコ達ですこと」 

彼女は郵便袋を受け取ると、得意げに、のどかな田舎の道路を走り出した。

とはいえども、キャロラインは速度を上げて走ることが嫌いだった。が、真面目な運転手は早く届けようと急かすので、彼女はブツブツ文句を言いながら従うほかなかったのだった。

 

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トンネルを抜けたジェームスは、まるで赤い流星のように、なおも全速力でメイスウェイト駅を走り抜けていった。今度は手紙類がヒラヒラと宙を舞い、駅で止まろうとするトーマスの前へと落ちる。

トーマスは急ブレーキをかけて止まり、機関士と車掌がそれを拾い集めてクララベルの荷物室へ入れた。

 

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 郵便物を回収する為、ジェームスは途中3つの駅で停車した。単線の小さな駅ではバス停にバーティーが止まっていた。 

「おや、誰かと思えば ジェームスじゃないか。全身 真っ赤で 気が付かなかったよ」

その言葉にジェームスはショックを受けた。

「それって、僕の素敵なボディが 目立たないってことじゃないか」

彼は決まり悪そうになるべく速く走ろうと急いで出発したので、また受け取りを待たずに出て行ってしまった。

きょとんと彼の出発と混乱する駅の様子を見守るバーティーの後方から、今度はキャロラインがあくせくやってきた。今にもオーバーヒートを起こしそうな顔をしながら。

 

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 こうして、ジェームスは支線終点の駅に辿り着いた。隣のホームでは接続列車のヒロが待っていた。

「あれあれ、書類に書かれてるのとだいぶ量が違うぞ」 

駅長のケビンが小包や手紙類を確認ながら首をかしげていたその時、バーティーと、トーマスと、トムのバンが勢いよく駅に滑り込み、それぞれ同時にこう叫んだ。

「「ジェームス、落とし物だよ!!」」

駅長らからも状況を説明されて、やっと、ジェームスは郵便車の扉を開けっ放しで走っていたことに気付いたのだった。

 

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「あー、こいつ。だから 厄介な貨車は 嫌いなんだ」

と、ジェームスが郵便車に向かって言った。すると、どこからともなく聞き慣れた声がした。騒ぎを聞きつけてトップハム・ハット卿がやってきたのだ。

「混乱と遅れを招いたのは 全て 君の所為だと聞いたぞ、ジェームス。私は 正直 がっかりだよ」

トーマス達の真剣な表情と、不機嫌そうなハット卿の言葉を直に聞いたジェームスは、これまで自分がやってきたことを思い返して、きまり悪そうに顔を赤らめた。

「ごめんなさい。大好きな仕事を取られて、ついムシャクシャと…やってしまったみたいです…」

「パーシーだって 自分の大好きな仕事が 出来ないんだぞ」
と、話すトーマスに、ジェームスは夢から醒めたようにハッとした。そして、昨日耳にしたヒロの言葉も思い出した。これでは自分は鉄道の達人と呼ぶには程遠い。仲間から一生笑われてしまうだろうと彼は思った。

「トップハム・ハット卿、明日、僕に もう一度 チャンスをください。今度は パーシーの助言を ちゃんと聞いてから 行動します。だから、お願いです」

「君が そこまで言うとは 驚いたよ。宜しい。だが、もう 遅れるんじゃないぞ」

 

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  翌朝、ジェームスは再びファークァー駅へ行く前に、ドライオー駅でパーシーに会った。今度は彼の話をちゃんと聞こうと、意識をパーシーに集中させた。

「昨日は その、役に立てなくて ごめんな。だけど 今度は 役に立ちたいんだ。だから、僕に 郵便配達の仕方を 教えてくれないか」

すると、パーシーは快く応えてくれた。

彼は、郵便車を牽くときは客車のように丁寧に扱う事、標識灯は上と左に点ける事、トムや駅員が重い扉を閉めるまで走りださない事、そしてスピードを上げて乱暴に走らない事を丁寧に教えた。

「ありがとう、行ってくるよ」

「がんばってね!」

と、最後に声をかけた彼に、ジェームスも元気に「ポッポー!」と汽笛を鳴らした。

 

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 その後、ジェームスはパーシーに言われた通り順当に配達を行い、問題なくスムーズに仕事を終わらせることが出来たのだった。昨日とは大違いだ。

「顔つきが 随分違うな。これで 君も ”郵便配達の達人”だね」

そうヒロが言うと、ジェームスは笑顔になった。

 

 

 おしまい

 

【物語の出演者】

●トーマス

エドワード

●ジェームス

●パーシー

●トビー

●スタンリー

●ヒロ

●テレンス

●バーティー

●キャロライン

●トップハム・ハット卿

●信号手

●農夫のフィニー

●ケビン・ボレー

●トム・ティッパー

●クララベル(not speak)

ヘンリエッタ(not speak)

●ハンク(cameo)

●アニー(cameo)

●ボブ(mentioned)

●ファークァー駅長(mentioned)

●キャロラインの運転手(mentioned)

 

 

【あとがき】

 リメイク第二弾は、PToS S10 E06(2011年4月某日投稿)でした。S10やS11以前のシナリオを書いた頃の私(たち)は、TTTEファンとはいえども原作はほぼ未読で、どのような構成が正しくて、キャラクターや地理・歴史にどんな設定が組み込まれているのかを全く理解していないがゆえに、今ではあり得ないぐらいにいい加減でシナリオも薄っぺらく、今や残したいとはとても思えません。

ですので、舞台はパーシーの働くファークァー線で、より鉄道っぽさを活かしました。出来るだけスタンスは崩さず合理的なリメイクに仕上がったと手ごたえを感じています。

このように、S10-12のリメイクでは登場キャラクターも賑やかにしていますので、その辺も楽しみにしていただけたらと思います。